講演情報

[P-6-01]大腿骨転子部骨折術後の荷重時痛に対する股関節外転筋トレーニングの効果
―疼痛軽減を認めた1症例―

*竹丸 大稀1、安藤 将孝1、川井 康平1 (1. 社会医療法人敬和会大分リハビリテーション病院 リハビリテーション部)
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キーワード:

大腿骨転子部骨折、股関節外転筋、荷重時痛

【倫理的な配慮、説明と同意】対象者、ご家族にはヘルシンキ宣言に基づき、あらかじめ口頭にて本報告の内容、個人情報の保護を十分に説明し同意を得た.

【はじめに・目的】
大腿近位部骨折術後患者(以下,HF患者)では,歩行時痛は経時的に軽減する一方,残存例もあると報告されている(坂本ら,2010).また,HF患者では動作時痛の程度が歩行自立度や歩行パフォーマンスに関連していると報告されている(片岡ら,2011.若井,2021.安井,2022).荷重時痛を呈した大腿骨転子部骨折術後患者1症例に対して股関節外転筋トレーニングの負荷量調節により疼痛軽減と歩行パフォーマンス改善を認めたため報告する.
【症例紹介】
症例は80歳女性.身長:150cm,体重:42kg,BMI:18.7kg/m².20XX年X月Y日,右大腿骨転子部骨折を受傷しY+1日に観血的骨接合術を施行.整復後アライメント:生田分類・N型.術後26日目に当院へリハビリテーション目的で転院.受傷前は独歩可能であったが,歩容不安定と聴取した.
【経過】
初期評価:入院1日(術後26日)目.疼痛:安静時・右股関節運動時痛,圧痛なし.荷重時痛NRS:5~6/10,右股関節内転位で増強.部位:右大腿近位前外側.最大下肢荷重量(R/L):30kg/42kg.ROM(R/L):股関節:外転:20°/40°,内転:10°/20°.右Oberテスト変法:陽性.MMT(R/L):股関節:外転:2/4,内転:3/4.FBS:27/56点.移動手段:前腕支持型歩行器歩行見守り.10m歩行テスト(m/s,歩数):快速:0.29m/s,34歩.最速:0.31m/s,32歩.歩容:荷重時痛の影響にて右立脚期短縮・右Trendelenburg徴候を認めた.初期評価では,疼痛部位,荷重時痛,可動域制限から,皮下組織と外側広筋間の伸長性・滑走性低下による疼痛(河西,2021)を疼痛発生の臨床推論とした.入院後3週間は,ROMex・歩行練習を中心に介入し,股関節外転筋トレーニングは背臥位で実施したが,荷重時痛は,NRS:5~6/10と改善は乏しかった. そこで,Trendelenburg徴候があること,荷重時の股関節内転位で疼痛が増強することから,骨折部への内反ストレス増大が疼痛に関与している可能性がある(Ceynowa M. et al., 2020)と,臨床推論を修正した.そのため,荷重位における前額面上の骨盤安定性向上を目的に,股関節外転筋トレーニングの方法を背臥位から側臥位・立位へ変更し,立位ではゴムバンドを用いて負荷量を増加させた.介入変更後, 荷重時痛は即時的に軽減し,その後も段階的に軽減した.最終評価:入院64日(術後90日)荷重時痛はNRS:1~2/10へ軽減,最大下肢荷重量(R):42kg.ROM(R/L):股関節:外転:30°/40°,内転:20°/20°.MMT(R/L):股関節:外転:3/4,内転:3/4.FBS:50/56点.移動手段:手掌支持型歩行車で終日自立,独歩は見守り下で約120m可能.10m歩行テスト(m/s,歩数):快速:0.71m/s,25歩.最速:0.90m/s,21歩へ改善.歩容:右Trendelenburg徴候は軽減した.
【考察】
本症例は股関節外転筋トレーニングの負荷量増加に伴う股関節機能改善により,荷重時疼痛の軽減と歩行能力の改善を認めた.大腿骨転子部骨折は関節包外骨折であり,骨折部のmicromotion(Ceynowa M. et al,2020)は骨膜由来疼痛に関与する可能性がある(Haruki N. et al,2025). 本症例では,股関節外転筋の機能改善に伴うTrendelenburg徴候軽減により,骨折部への内反ストレスおよびmicromotionが軽減し,疼痛軽減と歩行パフォーマンス改善につながった可能性が示唆された.

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