講演情報
[P-6-04]視覚障害及び上肢支持制限を伴う大腿骨転子部骨折術後患者に対する体重免荷式歩行器を用いた歩行導入の一例
*大竹 悠斗1、坂本 大和1、葉山 力斗1 (1. 社会医療法人大成会福岡記念病院)
キーワード:
体重免荷式歩行器、視覚障害、大腿骨転子部骨折
本発表を行うにあたりヘルシンキ宣言に基づき、対象患者に十分な説明を行い、同意を得た。
【はじめに】先行研究では視覚は歩行において、姿勢制御、速度制御、安全性確保など多様な役割を担うことが報告されている。視覚障害を有する下肢骨折術後患者では、荷重位置の把握や姿勢制御、重心移動の予測が難しく、術後理学療法では術側下肢荷重や歩行再学習において難渋することが推測される。さらに上肢骨折を併存した場合、歩行器使用による代償戦略も制限され、歩行導入は一層困難となる。今回、視覚障害及び上肢支持制限を伴う大腿骨転子部骨折術後患者に対する体重免荷式歩行器を用いた歩行導入を行い、歩行能力改善に至ったため報告する。【症例紹介】70代女性、既往に網膜色素変性症を有し、視覚機能は光覚をわずかに認めるのみで、色覚及び形態覚は消失していた。自宅内転倒により左橈骨遠位端骨折及び右大腿骨転子部骨折を受傷し、X日に骨接合術施行。術翌日より理学療法を開始し、疼痛に応じて荷重を許可された。X+4日より歩行器歩行を開始したが、X+9日より体重免荷式歩行器を用いた歩行訓練へ変更。X+18日に回復期病院へ転院となった。【評価と問題点】歩行器歩行開始時、術側下肢荷重率は30%で、立脚初期から立脚中期にかけて過度な体幹前傾を認めた。加えて、左橈骨遠位端骨折の併存により上肢支持が不十分で荷重調整が困難であった。10m歩行は30秒以上を要し、最大歩行距離は10m。患者は歩行器歩行時に「痛みは強くないが、体重をかける感覚がわからない」や「これ以上かけると転びそう」と訴えており、視覚障害及び上肢支持制限が適切な荷重入力を阻害している一因である可能性が推察された。【介入内容】視覚障害および上肢支持制限を考慮し、安全性を確保した段階的荷重学習を目的として、体重免荷式歩行器を選択した。免荷率は疼痛及び立脚期の安定性に応じて調整し、40%から開始した。【結果】訓練開始後、即時的に、股関節伸展角度の増大を認め、立脚初期に呈していた体幹前傾は軽減。歩行距離と速度は増大し、患者の荷重に対する不安感も軽減した。患者は「これ(体重免荷式歩行器)なら体重をかけやすい」や「体重が乗っている感じがする」といった発言が見られた。体重免荷式歩行器導入後は合計400m程度の練習量を確保でき、最終的に免荷率25%で180mの連続歩行が可能となった。X+17日の評価では、術側下肢荷重率75%、通常歩行器での跛行は軽減、10m歩行時間は21.07秒に改善した。【考察】本症例では視覚障害による荷重位置や重心移動の予測困難に加え、上肢骨折による支持制限が重複したことで、通常歩行器を用いた歩行練習では十分な荷重入力及び反復訓練が困難であったと考えられる。体重免荷式歩行器は、転倒リスクを低減し、安全性を確保した状態で、適切な荷重調整により段階的な荷重学習や反復的かつ律動的な歩行練習を可能にする。さらに免荷歩行に関する先行研究では、歩行速度や歩幅、歩行対称性の改善や歩きにくさや重だるさの軽減といった主観的効果が報告されており、本症例における歩行距離及び歩行速度の向上、跛行の軽減はこれらの知見と一致する結果であった。以上より体重免荷式歩行器は視覚障害や上肢支持制限を伴う下肢骨折術後患者において歩行導入及び荷重再学習の有効な選択肢となり得る可能性が示唆された。
【はじめに】先行研究では視覚は歩行において、姿勢制御、速度制御、安全性確保など多様な役割を担うことが報告されている。視覚障害を有する下肢骨折術後患者では、荷重位置の把握や姿勢制御、重心移動の予測が難しく、術後理学療法では術側下肢荷重や歩行再学習において難渋することが推測される。さらに上肢骨折を併存した場合、歩行器使用による代償戦略も制限され、歩行導入は一層困難となる。今回、視覚障害及び上肢支持制限を伴う大腿骨転子部骨折術後患者に対する体重免荷式歩行器を用いた歩行導入を行い、歩行能力改善に至ったため報告する。【症例紹介】70代女性、既往に網膜色素変性症を有し、視覚機能は光覚をわずかに認めるのみで、色覚及び形態覚は消失していた。自宅内転倒により左橈骨遠位端骨折及び右大腿骨転子部骨折を受傷し、X日に骨接合術施行。術翌日より理学療法を開始し、疼痛に応じて荷重を許可された。X+4日より歩行器歩行を開始したが、X+9日より体重免荷式歩行器を用いた歩行訓練へ変更。X+18日に回復期病院へ転院となった。【評価と問題点】歩行器歩行開始時、術側下肢荷重率は30%で、立脚初期から立脚中期にかけて過度な体幹前傾を認めた。加えて、左橈骨遠位端骨折の併存により上肢支持が不十分で荷重調整が困難であった。10m歩行は30秒以上を要し、最大歩行距離は10m。患者は歩行器歩行時に「痛みは強くないが、体重をかける感覚がわからない」や「これ以上かけると転びそう」と訴えており、視覚障害及び上肢支持制限が適切な荷重入力を阻害している一因である可能性が推察された。【介入内容】視覚障害および上肢支持制限を考慮し、安全性を確保した段階的荷重学習を目的として、体重免荷式歩行器を選択した。免荷率は疼痛及び立脚期の安定性に応じて調整し、40%から開始した。【結果】訓練開始後、即時的に、股関節伸展角度の増大を認め、立脚初期に呈していた体幹前傾は軽減。歩行距離と速度は増大し、患者の荷重に対する不安感も軽減した。患者は「これ(体重免荷式歩行器)なら体重をかけやすい」や「体重が乗っている感じがする」といった発言が見られた。体重免荷式歩行器導入後は合計400m程度の練習量を確保でき、最終的に免荷率25%で180mの連続歩行が可能となった。X+17日の評価では、術側下肢荷重率75%、通常歩行器での跛行は軽減、10m歩行時間は21.07秒に改善した。【考察】本症例では視覚障害による荷重位置や重心移動の予測困難に加え、上肢骨折による支持制限が重複したことで、通常歩行器を用いた歩行練習では十分な荷重入力及び反復訓練が困難であったと考えられる。体重免荷式歩行器は、転倒リスクを低減し、安全性を確保した状態で、適切な荷重調整により段階的な荷重学習や反復的かつ律動的な歩行練習を可能にする。さらに免荷歩行に関する先行研究では、歩行速度や歩幅、歩行対称性の改善や歩きにくさや重だるさの軽減といった主観的効果が報告されており、本症例における歩行距離及び歩行速度の向上、跛行の軽減はこれらの知見と一致する結果であった。以上より体重免荷式歩行器は視覚障害や上肢支持制限を伴う下肢骨折術後患者において歩行導入及び荷重再学習の有効な選択肢となり得る可能性が示唆された。
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