講演情報
[P-9-04]ラクナ梗塞発症後,バランス不良と歩行困難を認めた症例の歩行再建を目指した理学療法~姿勢制御に着目~
*高山 湧杜1、笠江 省太1 (1. 医療法人社団 聖山会 川南病院 リハビリテーション室)
キーワード:
姿勢制御、皮質網様体脊髄路、小脳内部モデル
対象者及びご家族に対して,発表の目的と個人情報の取り扱い等について口頭及び文書にて説明し,対象者家族に同意を得た.
【目的】臨床において脳卒中患者は,感覚障害や運動麻痺等,多様な身体機能の変化により姿勢制御が破綻し,歩行困難となるケースがある.姿勢制御における身体機能の中で,錐体路に近い位置を走行する皮質網様体脊髄路が重要な役割を担っている.今回,ラクナ梗塞発症後にバランス不良を認め,歩行困難となった1症例の理学療法を経験し,姿勢制御に着目した治療を実施したので若干の考察を加え報告する.
【症例紹介】80代女性.右放線冠~基底核レベルのラクナ梗塞の診断で入院.発症翌日から理学療法を開始.Brunnstrom Recovery Stage(以下:BRS)は上肢Ⅲ~Ⅳ,手指Ⅴ,下肢Ⅳ.発症5日目に症状の進行と梗塞巣の拡大を認めた.6日目のBRSは上肢Ⅰ,手指Ⅰ,下肢Ⅳ.起居動作は中等度介助.座位保持,立位保持は体幹の前傾,麻痺側への傾きが強く中等度介助.7日目の位置覚検査では軽度鈍麻,立体認知覚は中等度鈍麻.9日目より平行棒内歩行を開始.手すりを引き込むことで重心をコントロールし,麻痺側への傾きを防ぐ歩容であった.腹部症状に伴う離床制限を経て,20日目に歩行練習を再開.21日目のサイドウォーカー歩行では,非麻痺側への重心移動が出来ず,麻痺側下肢の振出しが困難な為,重心移動の介助が必要であった.また,姿勢の崩れへの認識はあるが自己修正は困難.半側空間無視により左側への注意力は不十分であった.
【経過】本症例に対し麻痺側への積極的な荷重,歩行練習,バランス練習(リーチ,ステップ,跨ぎ動作)を実施.発症61日目のBRSは上肢Ⅳ,手指Ⅴ,下肢Ⅴ~Ⅵ,感覚検査では左右差なく,立位保持自立,1本杖歩行見守り,独歩見守り~軽介助となり,発症98日目に自宅退院となった.
【考察】本症例は下肢の運動麻痺の程度以上のバランス不良を認め,歩行困難であった.右放線冠の梗塞により皮質網様体路及び錐体路の障害,感覚を統合する能力が障害されたことで姿勢制御の破綻が生じたことが大きな要因であると考えた.姿勢制御獲得には運動学習が有効であると考えられている.そこで,小脳の内部モデルを利用し運動の再学習を図った.高草木は「運動を反復することにより,小脳への遠心性コピーとフィードバック情報(運動の結果)の誤差は減少すると考えられる。」と報告している.今回,歩行練習やバランス練習(リーチ,ステップ,跨ぎ動作)の反復練習を実施し失敗に対するフィードバックを繰り返し行った.感覚統合障害がある為,初めは視覚代償や声掛け等の外在的フィードバックで感覚情報の修正を図り,徐々に固有感覚を通して内在的フィードバックを促した.適切な難易度設定とフィードバックによる誤差学習を反復したことで姿勢制御の改善に向けた内部モデルの再構築に繋がったと考える.さらに,吉尾は「股関節への荷重と筋紡錘の伸長刺激は脊髄小脳神経回路を介して末梢の筋活動の賦活とともに,橋網様体脊髄路への賦活によって股関節・体幹を中心とした姿勢制御に貢献している。」と報告しており,麻痺側への積極的な荷重が下肢,体幹近位部の筋活動を賦活し,姿勢制御の改善に繋がったのではないかと考える.
【目的】臨床において脳卒中患者は,感覚障害や運動麻痺等,多様な身体機能の変化により姿勢制御が破綻し,歩行困難となるケースがある.姿勢制御における身体機能の中で,錐体路に近い位置を走行する皮質網様体脊髄路が重要な役割を担っている.今回,ラクナ梗塞発症後にバランス不良を認め,歩行困難となった1症例の理学療法を経験し,姿勢制御に着目した治療を実施したので若干の考察を加え報告する.
【症例紹介】80代女性.右放線冠~基底核レベルのラクナ梗塞の診断で入院.発症翌日から理学療法を開始.Brunnstrom Recovery Stage(以下:BRS)は上肢Ⅲ~Ⅳ,手指Ⅴ,下肢Ⅳ.発症5日目に症状の進行と梗塞巣の拡大を認めた.6日目のBRSは上肢Ⅰ,手指Ⅰ,下肢Ⅳ.起居動作は中等度介助.座位保持,立位保持は体幹の前傾,麻痺側への傾きが強く中等度介助.7日目の位置覚検査では軽度鈍麻,立体認知覚は中等度鈍麻.9日目より平行棒内歩行を開始.手すりを引き込むことで重心をコントロールし,麻痺側への傾きを防ぐ歩容であった.腹部症状に伴う離床制限を経て,20日目に歩行練習を再開.21日目のサイドウォーカー歩行では,非麻痺側への重心移動が出来ず,麻痺側下肢の振出しが困難な為,重心移動の介助が必要であった.また,姿勢の崩れへの認識はあるが自己修正は困難.半側空間無視により左側への注意力は不十分であった.
【経過】本症例に対し麻痺側への積極的な荷重,歩行練習,バランス練習(リーチ,ステップ,跨ぎ動作)を実施.発症61日目のBRSは上肢Ⅳ,手指Ⅴ,下肢Ⅴ~Ⅵ,感覚検査では左右差なく,立位保持自立,1本杖歩行見守り,独歩見守り~軽介助となり,発症98日目に自宅退院となった.
【考察】本症例は下肢の運動麻痺の程度以上のバランス不良を認め,歩行困難であった.右放線冠の梗塞により皮質網様体路及び錐体路の障害,感覚を統合する能力が障害されたことで姿勢制御の破綻が生じたことが大きな要因であると考えた.姿勢制御獲得には運動学習が有効であると考えられている.そこで,小脳の内部モデルを利用し運動の再学習を図った.高草木は「運動を反復することにより,小脳への遠心性コピーとフィードバック情報(運動の結果)の誤差は減少すると考えられる。」と報告している.今回,歩行練習やバランス練習(リーチ,ステップ,跨ぎ動作)の反復練習を実施し失敗に対するフィードバックを繰り返し行った.感覚統合障害がある為,初めは視覚代償や声掛け等の外在的フィードバックで感覚情報の修正を図り,徐々に固有感覚を通して内在的フィードバックを促した.適切な難易度設定とフィードバックによる誤差学習を反復したことで姿勢制御の改善に向けた内部モデルの再構築に繋がったと考える.さらに,吉尾は「股関節への荷重と筋紡錘の伸長刺激は脊髄小脳神経回路を介して末梢の筋活動の賦活とともに,橋網様体脊髄路への賦活によって股関節・体幹を中心とした姿勢制御に貢献している。」と報告しており,麻痺側への積極的な荷重が下肢,体幹近位部の筋活動を賦活し,姿勢制御の改善に繋がったのではないかと考える.
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