講演情報

[DS6]がん早期発見における検査技術の進歩と薬局・薬剤師の役割――大腸がんにおける、尿からみるリキッドバイオプシーの可能性

奥澤 淳司 (順天堂大学革新的医療技術開発研究センター 先任准教授 / 副センター長)
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大腸がんは、2025年の予測で日本人の罹患数第1位となった。特に女性ではがん死亡数がすでに首位であり、まさに国民病といえる状況にある。しかし大腸がんは、早期に発見により5年生存率が90%を超える「治せるがん」でもある。ステージ別の5年生存率では、早期に発見されたステージIが92%を超えるのに対し、遠隔転移を伴うステージIVでは約19%にまで低下する。早期発見が予後を大きく左右することは、データからも明確である。
 一方で、便潜血検査を主とする大腸がん検診の受診率は男性が約49%、女性が約43%にとどまり、国が目標とする60%にはいまだ届いていない。加えて精密検査への移行率も低く、「陽性であっても受診しない」などの課題も根強い。大腸がんは初期段階では自覚症状に乏しく、患者自身が異変に気づきにくいという特性があるからこそ、検診による発見が不可欠である。
 こうした現状を打開する技術の一つとして、近年急速に注目されているのがリキッドバイオプシー(血中循環腫瘍DNA検査:ctDNA)である。採血のみで大腸がんの感度・特異度を約80%検出できる可能性が示されており(JAMA 2025)、内視鏡検査への心理的・身体的ハードルが高い層への新たなスクリーニング手段として期待が高まっている。血液に限らず、尿中エクソソームのマイクロRNAを解析して大腸がんを含む7種のがんリスクを部位ごとに判定できる採尿型検査キット(bluedrop)も登場しており、自宅で完結する非侵襲的スクリーニングの選択肢は着実に広がっている。また国立がん研究センターを中心とした「CIRCULATE-Japan」プロジェクトでは、ctDNAによる術後再発の早期先制治療の可能性を検証するALTAIR試験の結果がNature Medicine(2026年6月)に掲載され、「画像で再発が見える前に治療を開始する」という個別化医療の新たなコンセプトが世界に先駆けて示された。
 温故知新という観点からも、大腸がん対策の本質は変わらない。「早く見つけ、早く治す」——この原則を実現するために、時代ごとに検査技術は進化してきた。便潜血検査から内視鏡、そしてctDNAへと続く診断技術の進歩は、より低侵襲・高精度な早期発見を可能にしつつある。
 地域における身近な医療の入口である、薬局・薬剤師が便通異常・血便・体重減少といった初期症状への「気づき」を促し、受診へとつなぐ役割は、これからの健康社会の実現に大きく貢献するものと考えられる。本講演を通じて、大腸がんの現状と最前線を共有し、リキッドバイオプシーを含めた最先端の診断技術と使用方法、早期発見の可能性について考えたい。


学歴及び職歴
平成 5年 順天堂大学 医学部 卒業
平成 5年 同 医学部附属順天堂医院 外科 臨床研修医
平成 7年 同 医学部 第一外科 助手
平成18年 同 医学部消化器外科学講座 下部消化管外科 准教授
平成19年 厚生労働省医政局研究開発振興課治験推進室 / 保健局医療課 課長補佐
平成21年 同 臨床研究センター / 医学部下部消化管外科 先任准教授
平成29年 革新的医療技術開発研究センター(名称変更) 先任准教授 / 副センター長
      同 医学部附属順天堂医院 臨床研究・治験センター 副センター長

資格・免許
日本外科学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 指導医
日本臨床試験学会 学術委員

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