講演情報

[ED2]在宅医療における薬剤師と医師の連携。その理想と現実

木積 一浩 (こづみおうちクリニック 院長)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的・背景】
急速な少子高齢化と多死社会の到来に伴い、医療の中心は「病気を治す」から「生活を支える」ことへの転換を迫られている。病床数不足や在宅看取りの需要増を背景に、地域包括ケアシステムの中核を担う在宅医療の重要性は高まる一方である。在宅医療の本質は、患者の日常生活の場を舞台に、QOLの維持と尊厳ある療養生活を支える点にある。しかし、実際の現場では、認知機能低下によるコンプライアンスの悪化、大量の残薬、複数診療科からの重複処方(ポリファーマシー)など、医師単独では解決困難な課題が山積している。24時間365日の対応を迫られる在宅医にとって、これらの服薬管理や処方適正化は大きな懸念点である。

【在宅医療における薬剤師への期待】
これらの課題を解決し、在宅医療の質を担保するキーパーソンこそが薬剤師であると考える。
医師が最も期待するのは、単なる薬の配達に留まらない、専門知識に基づく薬学的臨床判断の共有である。特に医師と薬剤師が同行・共同訪問を行うことの実務的メリットは大きい。患者の嚥下機能や実際のADLを目の前で評価し、最適な剤形変更や一包化の工夫、印字の改善などをその場で提案・合意できれば、疑義照会のタイムラグはゼロに近づくことになる。また、保険制度(医療保険・介護保険)上でも、多職種が共同して介入・カンファレンスを行うことで相互に各種加算の算定要件を満たす道が開け、残薬解消による患者の経済的負担軽減や国の医療費適正化にも直結する。さらに、終末期緩和ケアにおける麻薬管理やPCAポンプへの迅速な対応は、在宅医にとって強大な心理的支援となる。

【今後の展望と結語】
今後の在宅医療需要は、都市部を中心とした独居高齢者急増などを背景に、今後も確実に増加・高度化する。それに伴い、調剤薬局は、処方箋を用いて薬剤を提供する場所から、地域へ薬剤を供給する拠点へのパラダイムシフトが求められている。
在宅医は、薬剤師の力を借りることで、より効率的に、質の高い在宅医療を提供できる考えている。本講演では、制度上のメリットから現場での具体的な協働モデルまでを解説し、医師と薬剤師が強固なタッグを組むことで生まれる「在宅医療の新たな価値」について、薬剤師の皆様へ熱いエールを込めて提言したい。


【略歴】
2013年 大阪大学医学部医学科 卒業
2013年 大阪警察病院 初期研修医
2015年 大阪警察病院 内科 後期研修医
2018年 大阪大学医学部附属病院 消化器内科 医員
2019年 大阪大学大学院医学系研究科 入学
2023年 大阪大学大学院医学系研究科 博士課程 修了
2023年 大阪国際がんセンター 肝胆膵内科 診療主任
2025年 まつばら内科・消化器クリニック 医師
2026年 こづみおうちクリニック 院長

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン