講演情報
[P-029-B]糖尿病の自覚がない患者への禁忌薬剤処方に対する介入事例
木田 由加里1,2, 藤原 瑠美1,2, 澤森 聡1,2, 中野 和則2 (1.フラワー薬局久御山店, 2.(株)メディカル一光)
【目的】医療情報の40~80%は即座に忘却され、記憶の約半分も不正確とされる1)。認識のずれから病識が欠如した患者に対し薬剤師が介入することで疾患禁忌薬の処方を回避した事例を報告する。
【症例】70代女性。乳がんでA病院通院、抑うつと食欲低下に対しオランザピン新規処方。薬歴上過去にB医院でアログリプチン(他局利用)服用歴があると確認したが、「既往歴はなく糖尿病薬も飲んでいない」と記録とは異なる主張。お薬手帳、マイナンバーカード持参なし。B医院応需先薬局にアログリプチン服用事実確認し、再度患者に聞き取り。
【結果】具体的事実(薬品名・服用期間)を提示し対話を進めると、患者は宣告時の状況を想起。「糖尿病の気がある」と医師から伝えられたため「気があるだけでまだ糖尿病ではない」と誤解していたと判明。疑義照会の結果ミルタザピンに変更となった。
【考察】本症例では、患者が「病気ではない」という認知スキーマを保持していたため、医師の曖昧な表現を都合よく解釈し、重要な医療情報を誤解・忘却したと考えられる。また、高不安な病院から離れ、落ち着いた薬局で具体的事実を提示されたことが、記憶の想起の契機となった。これらはKessels(2003)の認知モデル1)で説明できる。すなわち、既存の認知に反する情報は誤解・忘却されやすいこと、また記憶の想起は学習時の心理状態との一致に依存する一方、不安とは逆U字の相関を示し中程度の不安で最も高まることと合致する。医療従事者と患者の間の認識のずれは、禁忌薬処方などの重大な医療安全上のリスクを招く。本症例のように薬局が医療機関間の仲介役となり、患者の認知を紐解いて認識のずれを調整することは地域の医療安全を担保する上で重要な貢献である。
参考文献
1)Kessels RP. Patients’ memory for medical information. J R Soc Med. 2003 May;96(5):219-222. doi:10.1177/014107680309600504. PMID:12724430; PMCID:PMC539473.
【症例】70代女性。乳がんでA病院通院、抑うつと食欲低下に対しオランザピン新規処方。薬歴上過去にB医院でアログリプチン(他局利用)服用歴があると確認したが、「既往歴はなく糖尿病薬も飲んでいない」と記録とは異なる主張。お薬手帳、マイナンバーカード持参なし。B医院応需先薬局にアログリプチン服用事実確認し、再度患者に聞き取り。
【結果】具体的事実(薬品名・服用期間)を提示し対話を進めると、患者は宣告時の状況を想起。「糖尿病の気がある」と医師から伝えられたため「気があるだけでまだ糖尿病ではない」と誤解していたと判明。疑義照会の結果ミルタザピンに変更となった。
【考察】本症例では、患者が「病気ではない」という認知スキーマを保持していたため、医師の曖昧な表現を都合よく解釈し、重要な医療情報を誤解・忘却したと考えられる。また、高不安な病院から離れ、落ち着いた薬局で具体的事実を提示されたことが、記憶の想起の契機となった。これらはKessels(2003)の認知モデル1)で説明できる。すなわち、既存の認知に反する情報は誤解・忘却されやすいこと、また記憶の想起は学習時の心理状態との一致に依存する一方、不安とは逆U字の相関を示し中程度の不安で最も高まることと合致する。医療従事者と患者の間の認識のずれは、禁忌薬処方などの重大な医療安全上のリスクを招く。本症例のように薬局が医療機関間の仲介役となり、患者の認知を紐解いて認識のずれを調整することは地域の医療安全を担保する上で重要な貢献である。
参考文献
1)Kessels RP. Patients’ memory for medical information. J R Soc Med. 2003 May;96(5):219-222. doi:10.1177/014107680309600504. PMID:12724430; PMCID:PMC539473.
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