講演情報
[SY1-2]災害時における精神科医療と薬剤師の役割 -DPATおよび能登半島地震の経験から-
藤江 直輝 (地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪精神医療センター 薬局 総括主査)

【はじめに・背景】
近年、精神科医療は入院主体から地域生活支援へと移行し、多くの精神疾患患者が地域で暮らしている。平時より、多剤併用の適正化や服薬アドヒアランス維持、クロザピンや統合失調症の持効性注射製剤(LAI)など、厳格な管理を要する専門的薬物治療の継続は重要視されている。大規模災害時は、環境変化による症状増悪や処方途絶に伴う離脱症状のリスクが極めて高くなるため、平時からの備えと発災時の迅速な専門的介入が不可欠となる。
【災害時におけるDPATと精神科薬剤師の関わり】
災害派遣精神医療チーム(DPAT)への薬剤師同行は必須ではないが、帯同することで被災地での活動の幅は大きく広がる。精神科薬剤師は、不安や不眠、精神症状の急性増悪が疑われる患者に対し、携行医薬品や現地で確保した限られた流通医薬品の中から、最適な代替薬の選定や処方提案を行う。さらに、避難所や施設における多様な精神科薬事ニーズへ的確に対応し、他科の医師等への相談対応を通じて、環境が変化した被災者の精神科薬物治療を安全かつ確実に支援する役割を担う。
【能登半島地震における経験と課題】
令和6年能登半島地震ではインフラ壊滅や道路寸断により、医薬品の供給が大きな課題となった。特に、重篤な副作用が問題となるクロザピンや、定期投与が不可欠なLAIの供給維持は患者の再発防止に直結する死活問題であり、DPATや医療機関、地域薬局が連携して服薬状況の把握や流通経路の確保に奔走した。
一方で、医療のみでは対応しきれない困難な事例も経験した。具体的には、避難所で激しい興奮状態に陥った対象者への対応など、医療の枠組みを越えた事案への直面であった。この経験は、災害時であっても精神保健福祉法に基づく適正な手続きと警察による保護の必要性を再認識させるものであり、支援に赴くDPATの職能の限界と、地元機関との緊密な連携の重要性を浮き彫りにした。
【結語】
災害時の精神科薬事活動には、DPATへの精神科薬剤師の参画と地域薬局の災害体制構築が不可欠である。本シンポジウムでは能登半島地震での具体的な薬事供給と現場での精神科医療の課題を共有し、今後の薬剤師の職能と課題解決策について議論したい。
【略歴】
2008年3月 神戸薬科大学 薬学部 卒業
2008年4月 大阪府立病院機構 大阪府立急性期・総合医療センター 薬局 入局
2018年4月 大阪府 健康医療部 薬務課 麻薬毒劇物グループ 出向
2020年4月 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター 薬局 異動
2022年4月 大阪府立病院機構 大阪精神医療センター 薬局 異動 現在に至る
近年、精神科医療は入院主体から地域生活支援へと移行し、多くの精神疾患患者が地域で暮らしている。平時より、多剤併用の適正化や服薬アドヒアランス維持、クロザピンや統合失調症の持効性注射製剤(LAI)など、厳格な管理を要する専門的薬物治療の継続は重要視されている。大規模災害時は、環境変化による症状増悪や処方途絶に伴う離脱症状のリスクが極めて高くなるため、平時からの備えと発災時の迅速な専門的介入が不可欠となる。
【災害時におけるDPATと精神科薬剤師の関わり】
災害派遣精神医療チーム(DPAT)への薬剤師同行は必須ではないが、帯同することで被災地での活動の幅は大きく広がる。精神科薬剤師は、不安や不眠、精神症状の急性増悪が疑われる患者に対し、携行医薬品や現地で確保した限られた流通医薬品の中から、最適な代替薬の選定や処方提案を行う。さらに、避難所や施設における多様な精神科薬事ニーズへ的確に対応し、他科の医師等への相談対応を通じて、環境が変化した被災者の精神科薬物治療を安全かつ確実に支援する役割を担う。
【能登半島地震における経験と課題】
令和6年能登半島地震ではインフラ壊滅や道路寸断により、医薬品の供給が大きな課題となった。特に、重篤な副作用が問題となるクロザピンや、定期投与が不可欠なLAIの供給維持は患者の再発防止に直結する死活問題であり、DPATや医療機関、地域薬局が連携して服薬状況の把握や流通経路の確保に奔走した。
一方で、医療のみでは対応しきれない困難な事例も経験した。具体的には、避難所で激しい興奮状態に陥った対象者への対応など、医療の枠組みを越えた事案への直面であった。この経験は、災害時であっても精神保健福祉法に基づく適正な手続きと警察による保護の必要性を再認識させるものであり、支援に赴くDPATの職能の限界と、地元機関との緊密な連携の重要性を浮き彫りにした。
【結語】
災害時の精神科薬事活動には、DPATへの精神科薬剤師の参画と地域薬局の災害体制構築が不可欠である。本シンポジウムでは能登半島地震での具体的な薬事供給と現場での精神科医療の課題を共有し、今後の薬剤師の職能と課題解決策について議論したい。
【略歴】
2008年3月 神戸薬科大学 薬学部 卒業
2008年4月 大阪府立病院機構 大阪府立急性期・総合医療センター 薬局 入局
2018年4月 大阪府 健康医療部 薬務課 麻薬毒劇物グループ 出向
2020年4月 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター 薬局 異動
2022年4月 大阪府立病院機構 大阪精神医療センター 薬局 異動 現在に至る
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