講演情報

[SY14-4]日本人の循環器病予防のこれまでと今後の薬局薬剤師への期待

磯 博康 (一般社団法人日本公衆衛生学会 理事長 国立健康危機管理研究機構 グローバルヘルス政策研究センター・センター長)
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日本人の循環器疾患の変遷に関して特記すべきことは、1970年代以降の国民の血圧値の低下とそれによる壮年・中年期の脳卒中死亡率の著明な減少である。このことが日本人の平均寿命の伸延に大きく寄与し、わが国を世界一の長寿国に導いた。血圧値低下の主要因は、健診による高血圧の早期発見と薬物治療の改善、経済発展や公衆衛生活動による減塩や新鮮な野菜・生鮮食品の摂取増加等の生活習慣改善が挙げられる。しかし、近年、壮年・中年期男性を中心に肥満度の上昇傾向が見られ(欧米のレベルとはいまだ大きな差があるが)、血圧値低下の鈍化と脳卒中の発症率・死亡率低下の鈍化につながりつつある。一方、中年期男性において肥満度上昇に伴い糖尿病の有病率の上昇傾向が見られ、長期間に亘る高コレステロール血症の影響も加わり、都市部の虚血性心疾患の発症率の増加が認められている。日本人全体としては循環器疾患発症の寄与度は、いまだ高血圧が約50%と大きく、糖尿病や脂質異常症の寄与度はそれぞれ10~15%、5~10%程度であるが、今後、壮年・中年期の肥満度の増加、脂質異常症の若年化が進めば、これらの循環器疾患への寄与度が増加する可能性がある。今後とも循環器疾患予防を進めるには、糖尿病、脂質異常症の予防・管理を強化と高血圧の予防・管理の継続を行っていく必要がある。すなわち、メタボ対策と共に非肥満者のハイリスク者への対策を平行して実施することが肝要となる。しかしながら、地域の健診で把握されて服薬開始が必要とされた高度のハイリスク者のうち、医療機関に受療するのは半数に満たない現状があることから、演者らは、国家プロジェクトである戦略研究(クラスターランダム化試験)を行い、計画化された保健指導(受療行動促進モデル)が対照と比較して、医療機関への受療率、高血圧、糖尿病の服薬率とコントロール率のより大きく増加することを立証した。今後は、医療機関への継続受診と服薬治療の管理を医師と薬剤師等が協働で行っていくことが重要である。以上、世代間での生活習慣、循環器疾患の危険因子や発症リスクの相違を念頭に置き、健診で把握され医療機関での服薬を開始した患者のフォローを行うことは、健康サポート薬局制度のもと、薬局薬剤師にまずます求められる業務と言え、その活動の充実に期待したい。


【略歴】
1982年 筑波大学医学専門学群卒業
1983年 Educational Commission for Foreign Medical Graduates (ECFMG)
1986年 筑波大学大学院医学研究科博士課程環境生態系専攻修了
1988年 米国ミネソタ大学大学院修士課程公衆衛生学疫学専攻修了
1988年 大阪府立成人病センター集団検診I部技術吏員
1990年 筑波大学講師 社会医学系
1993年 筑波大学助教授 社会医学系
1996年 ハーバード大学医学部客員准教授
2002年 筑波大学教授 社会医学系
2004年 筑波大学大学院教授 人間総合科学研究科 社会健康医学
2005年 大阪大学大学院教授 医学系研究科公衆衛生学
2022年 国立国際医療研究センター国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター
    センター長
2025年 国立健康管理研究機構国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センター
    センター長 理事長特任補佐

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