講演情報
[SY16-2]人医療と獣医療の違い、ならびに獣医療の医療文化や診療体制を踏まえた薬剤師介入のあり方
折戸 謙介 (麻布大学 附属動物病院 病院長・教授 / 獣医学部 生理学第二研究室)

獣医療において薬剤は、人医療と同様に、検査、診断、予防、治療のあらゆる場面で重要な役割を果たしている。一方で、獣医療には人医療とは異なる特徴があり、薬物療法を考えるうえでこれらを理解する必要がある。
第一に、診療対象となる動物種が多様である。犬、猫、馬、豚、鳥類、爬虫類、両生類などが対象となり、同じ犬でも3 kgに満たないチワワから100 kgを超えるマスティフまで体格差が大きい。そのため、投与量は体重または体表面積あたりで算出され、錠剤やカプセル剤を粉砕・分割、あるいは開封して1回量を調整することも多い。また、動物種や体格により投与経路、剤形、嗜好性、投薬のしやすさも大きく異なる。
第二に、食生活が人と大きく異なる。犬では同じフードを1日2~3回給与することが一般的であり、フード中の成分が薬物相互作用の要因となった場合、人医療では認められにくい副作用や薬効変化が生じる可能性がある。また、猫では一日を通して自由に採食する「自由採食」が多く、食事が吸収に影響する薬物の投与タイミングに関する情報は十分ではない。
第三に、薬物代謝や薬力学に関する情報が不足している。犬ではアセチル化能がほぼ欠如し、猫ではグルクロン酸抱合に関わる特定の酵素分子種が欠損している。豚では硫酸抱合能が低いとされ、鳥類では哺乳類との差や鳥種間差も大きい。さらに吸収過程や消化管機能の種差も考慮すると、人用医薬品を動物に投与する際の適切な用量・用法を予測することは容易ではない。
動物用医薬品であれば、対象動物に対する用量・用法を添付文書等で確認できる。しかし、利用可能な動物用医薬品は限られており、小動物臨床では多くの人用医薬品が使用されている。これらの薬物では、動物種ごとの安全性、薬物動態、薬力学に関する情報が十分に得られていないことが少なくない。また、人医療のような公的医療保険制度がないため、治療薬の選択は飼い主との相談や費用負担を踏まえて行われる。
以上のように、獣医療では人用医薬品を含む多様な薬剤を活用し、自由診療を基盤とした薬物療法が展開されている。今後、薬剤師が獣医療の医療文化や診療体制を理解したうえで関与することにより、薬物療法の安全性と有効性の向上、抗菌薬適正使用、さらには環境への影響を考慮した薬剤使用に貢献することが期待される。
【略歴】
1990年 麻布大学 獣医学部 獣医学科 卒業
1990年 日本ロシュ株式会社 研究所薬理部 研究員
1994年 株式会社大塚製薬 徳島新薬第二研究所 研究員
2000年 麻布大学 獣医学部 講師
2002年 株式会社ノベルテック (大学発ベンチャー) 取締役
2008年 東京農工大学 客員教授
2008年 麻布大学 獣医学部 准教授 (薬理学研究室)
2013年 麻布大学 獣医学部 教授 (生理学第二研究室)
2015年 北京農学院 客員教員
2016年 麻布大学 獣医学科長
2016年 農林水産省 獣医事審議会 臨時委員
2017年 厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 臨時委員
2020年 麻布獣医学園 理事
2022年 麻布大学 附属動物病院長
2024年 内閣府 食品衛生基準審議会 農薬・動物用医薬品部会 臨時委員
第一に、診療対象となる動物種が多様である。犬、猫、馬、豚、鳥類、爬虫類、両生類などが対象となり、同じ犬でも3 kgに満たないチワワから100 kgを超えるマスティフまで体格差が大きい。そのため、投与量は体重または体表面積あたりで算出され、錠剤やカプセル剤を粉砕・分割、あるいは開封して1回量を調整することも多い。また、動物種や体格により投与経路、剤形、嗜好性、投薬のしやすさも大きく異なる。
第二に、食生活が人と大きく異なる。犬では同じフードを1日2~3回給与することが一般的であり、フード中の成分が薬物相互作用の要因となった場合、人医療では認められにくい副作用や薬効変化が生じる可能性がある。また、猫では一日を通して自由に採食する「自由採食」が多く、食事が吸収に影響する薬物の投与タイミングに関する情報は十分ではない。
第三に、薬物代謝や薬力学に関する情報が不足している。犬ではアセチル化能がほぼ欠如し、猫ではグルクロン酸抱合に関わる特定の酵素分子種が欠損している。豚では硫酸抱合能が低いとされ、鳥類では哺乳類との差や鳥種間差も大きい。さらに吸収過程や消化管機能の種差も考慮すると、人用医薬品を動物に投与する際の適切な用量・用法を予測することは容易ではない。
動物用医薬品であれば、対象動物に対する用量・用法を添付文書等で確認できる。しかし、利用可能な動物用医薬品は限られており、小動物臨床では多くの人用医薬品が使用されている。これらの薬物では、動物種ごとの安全性、薬物動態、薬力学に関する情報が十分に得られていないことが少なくない。また、人医療のような公的医療保険制度がないため、治療薬の選択は飼い主との相談や費用負担を踏まえて行われる。
以上のように、獣医療では人用医薬品を含む多様な薬剤を活用し、自由診療を基盤とした薬物療法が展開されている。今後、薬剤師が獣医療の医療文化や診療体制を理解したうえで関与することにより、薬物療法の安全性と有効性の向上、抗菌薬適正使用、さらには環境への影響を考慮した薬剤使用に貢献することが期待される。
【略歴】
1990年 麻布大学 獣医学部 獣医学科 卒業
1990年 日本ロシュ株式会社 研究所薬理部 研究員
1994年 株式会社大塚製薬 徳島新薬第二研究所 研究員
2000年 麻布大学 獣医学部 講師
2002年 株式会社ノベルテック (大学発ベンチャー) 取締役
2008年 東京農工大学 客員教授
2008年 麻布大学 獣医学部 准教授 (薬理学研究室)
2013年 麻布大学 獣医学部 教授 (生理学第二研究室)
2015年 北京農学院 客員教員
2016年 麻布大学 獣医学科長
2016年 農林水産省 獣医事審議会 臨時委員
2017年 厚生労働省 薬事・食品衛生審議会 臨時委員
2020年 麻布獣医学園 理事
2022年 麻布大学 附属動物病院長
2024年 内閣府 食品衛生基準審議会 農薬・動物用医薬品部会 臨時委員
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