講演情報

[SY2-2]薬剤師キャリアにおける公衆衛生修士(MPH)課程における学び

石井 充章 (北海道科学大学 薬学部 講師/筑波大学 医学医療系)
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私が薬局に勤務していた2015年頃、薬局業界は大きな転換期にあった。「患者のための薬局ビジョン」が策定されたものの、現場では社会が真に必要とする薬剤師像が未だ明確化されず、どこか閉塞感が漂っていた。日々、目の前の患者対応に追われる中で、自らの職能価値を社会に対して客観的に提示できないもどかしさを感じ、既存の薬剤師業務の延長線上だけでは打破できない限界を痛感していた。
 そのような中で、ある日、臨床実践と研究の双方に挑戦している一人の薬剤師との出会いがあった。彼が語る視座は、それまでの私の視点であった「個々の患者への臨床」という枠組みを遥かに超え、医療を公衆衛生(Public Health)というマクロな構造から読み解くものであった。彼との対話を通じて、薬剤師の職能を社会的なエビデンスへと昇華させ、次世代を切り拓くための鍵は、公衆衛生という学問体系にあるのではないかと確信するに至った。この出会いが、私がMPH(公衆衛生修士)という道へ足を踏み入れる大きな契機となった。
 本セッションでは、私がMPH課程という「修行」を経て手に入れた、薬剤師の武器となるべき「フォース(力)」の体系を紹介する。MPHのプログラムで学ぶ15の領域は、単なる知識の蓄積ではない。それは現場の課題を「俯瞰」し、複雑な社会情勢を「構造化」し、そして新たな価値を「実装」するための視点である。当日は、まずMPHの具体的なカリキュラムをご紹介する。その上で、MPH課程でこの視点を手に入れた登壇者たちが、それぞれの実務や社会における視界をどのように変容させたのかを提示していく。
 現在、日本国内にはこのプログラムで学ぶことができる公衆衛生大学院が全国に存在する。その門を叩き、修行を開始する薬剤師は増えてきている。本シンポジウムが、現状の職能に疑問を持ち、自らのキャリアに新たな視点を求める薬剤師たちにとって、覚醒のきっかけとなれば幸いである。


【略歴】
1999年 東邦大学薬学部 卒業
2001年 東邦大学大学院薬学研究科修士課程 修了
     MR職、病院薬剤師、薬局薬剤師として従事
2020年 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 公衆衛生学修士課程 修了
2024年 筑波大学大学院 医学学位プログラム(博士課程) 修了
2024年 筑波大学医学医療系 博士研究員
2025年 北海道科学大学 薬学部 講師

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