講演情報

[WS-1]薬剤師が「もしバナゲーム」をする意義について考える~「選択の痛み」を知ることで変わる、患者への眼差しと対話の質~

金丸 達哉 (共和メディカル株式会社 関西薬局井高野店 店長・管理薬剤師)
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近年、調剤報酬においてもACP(アドバンス・ケア・プランニング)の言葉が明示され、薬剤師も患者の意思決定支援を強く意識するようになった。しかし、終活やエンディングノートといった「家族との話し合い」の領域は、どこか薬剤師の立場では専門外だと感じていた面も否めない。日々、処方箋という「決定事項」に至るまでに、患者がどのような葛藤を抱え、何を諦め、何を選択してきたかというプロセスにまで思いを馳せる機会は少なかったのではないだろうか。このように薬剤師に欠けていた「選択の重み」への想像力を補うことこそが、本ゲームを体験する第一の意義である。
私たち薬剤師は、麻薬の投与量や全身状態から「予後」をある程度イメージするかもしれない。しかし、もし今日、自分が余命を告げられたらどうだろうか。薬剤師として薬の副作用は予測できても、自分の心の揺らぎを止めることはできない。もしバナゲームを通じて「限られた選択肢から何かを捨て、何かを選び取る苦渋の決断」を疑似体験することは、患者の孤独な状況を理解する強力な助けとなる。「そんな時、どんな薬剤師にそばにいてほしいか?」という問いを自分に投げかけることで、単なる薬の指導者ではなく、人生の優先順位を整理する痛みの最中にいる患者へ、深い共感をもって接することができるようになる。本体験は客観的な「予後」から、主観的な「生き方」への視点転換をもたらすと考える。
ゲーム体験後のコミュニケーションは、正論での解決から、患者の価値観への「共感と伴走」へと変化する。答えを急がず、患者の「揺らぎ」を否定せずに共有できる関係性こそが、真の服薬アドヒアランスを生む土台になると考える。さらに、この思考法は多職種連携においても患者の「選択の背景」を薬剤師が言語化し、「家族との時間を優先するため、眠気の強い薬剤は避けたい」といった価値観に基づく処方提案を行うことで、チーム全体で「生活者としての患者」を支えることが可能となる。
薬剤師がもしバナゲームをする意義は、スキルの習得だけではない。患者を「薬を渡す対象」ではなく「悩みながら選択し続ける一人の人間」として見直す視点を得ることにある。患者の葛藤に寄り添い、その「選択の痛み」を分かち合おうとする姿勢こそが、これからの対人業務において信頼される薬剤師の資質になると考える。


【略歴】
2016年3月 京都薬科大学 卒業
2016年4月 パナソニック健康保険組合 松下記念病院 薬剤部 入職
2018年4月 共和メディカル株式会社 関西薬局住之江店 入職
2021年1月 共和メディカル株式会社 関西薬局布施店 店長・管理薬剤師
2022年9月 共和メディカル株式会社 関西薬局井高野店 店長
2023年9月 共和メディカル株式会社 関西薬局井高野店 店長・管理薬剤師(現職)

所属学会等  日本薬剤師会 日本薬局学会

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