講演情報

[14-O-O001-02]入所者の転倒事故に対する分析と考察

*竹内 敏晴1、松岡 昌宏1、山田 達也1、渡邊 文朗1 (1. 愛媛県 介護老人保健施設長浜ひまわり)
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令和5年度の1年間に入所されていた全入所者を対象に年齢、BMI、介護度、障害高齢者の日常生活自立度、認知症高齢者の日常生活自立度、Vitality Indexのリハビリ・活動のデータを収集した。6つの項目ごとに転倒の割合を集計し、その結果を報告する。
【はじめに】
転倒は高齢者にとって軽視できない危険な事象であり、介護老人保健施設においてもそれは同様である。当施設では入所者の環境面の調整を行っていくことで、数年前に比べると骨折を伴うような重大な事故は減っている。更に転倒の事故件数を減らしていくため、入所者の年齢、BMI、介護度、障害高齢者の日常生活自立度、認知症高齢者の日常生活自立度、Vitality Indexのリハビリ・活動の6つの項目を分析・考察した結果を報告する。
【目的】
どのような入所者が転倒しているか調査し、今後施設で起こり得る転倒を予防することを目的とする。
【方法】
令和5年度の1年間に入所されていた全入所者を対象にデータを収集し、6つの項目ごとに転倒の割合を集計する。それをグラフ化して考察する。今回の調査での転倒者とは、当施設での転倒事故の定義である足底以外の身体部位が床に接地することとしている。
【結果】
(年齢) 当施設の入所者の年齢の中央値は89歳であったため、89歳未満と89歳以上の群に分けて分析した。転倒の割合は89歳未満で39.8%、89歳以上で25.9%となった。
(BMI) 22.8~24.9、20.7~22.7、18.5~20.6、18.5未満の順で転倒の割合が高く、25以上の転倒の割合は低くなった。
(介護度) 要介護1が最も転倒の割合が高く、順に要介護3、要介護2、要介護4、要介護5となった。
(障害高齢者の日常生活自立度) A2が最も転倒の割合が高く、順にB1、A1、C1、B2となった。J1、J2、C2は転倒の割合は0となった。
(認知症高齢者の日常生活自立度) 2aの割合が最も高く、順に3a、2b、1、4、3bとなった。
(Vitality Indexのリハビリ・活動) 1(促されて向かう)、2(自らリハビリに向かう・活動を求める)の順に転倒の割合が高く、0(拒否・無関心)の転倒の割合は低くなった。
【考察】
上記の結果を踏まえて各項目と転倒との関連性について述べていく。まず年齢に関して当施設の結果では高齢の入所者の転倒の割合は低くなった。理由として高齢になるほどベッド上での生活が中心で、1人で動作されることが少ないことが挙げられる。89歳未満の入所者は1人で動作可能な割合が上がるため、転倒の割合も高くなったと考える。次にBMIでは25以上の群では転倒割合が低く、18.5未満、18.5~20.6、20.7~22.7、22.8~24.9の4つの群では転倒の割合として大きな差はみられなかった。介護度では要介護1~3の入所者が要介護4~5の入所者に比べて起き上がりや立ち上がり、歩行が可能な入所者の割合が高いため、転倒の割合も高くなったと考える。障害高齢者の日常生活自立度でも同様の理由であると考える。認知症高齢者の日常生活自立度では2a、3a、2bの順に転倒の割合が高くなった。自立と1の入所者は記憶力や理解力、判断力が保たれているため転倒の割合が低くなったと考える。当施設の3bや4の入所者は転倒リスクの高い行動が多く、常に見守りや付き添いを必要とする入所者もしくは起き上がりや立ち上がりなどが不可能で転倒リスクは低い入所者に大別されていることで転倒の割合が低くなったと考える。Vitality Indexのリハビリ・活動の項目については1(促されて向かう)、2(自らリハビリに向かう・活動を求める)の順に転倒の割合が高くなった。リハビリや活動に対して拒否・無関心な入所者は自ら動作されることが少なく転倒の割合は低くなった。
当施設の中で年齢が比較的若い入所者、要介護1~3の入所者、障害高齢者の日常生活自立度A1~B1の入所者で起き上がりや立ち上がりなどの動作能力がある程度保たれている入所者は転倒が発生する割合が高くなっている。また、認知症高齢者の日常生活自立度が2a~3aの入所者で記憶力・理解力・判断力が低下している入所者や活動意欲のある入所者は転倒が発生する割合が高くなっている。今回調査した項目の転倒割合が高い群を複数備えているほど当施設で転倒する可能性も高くなると考えられるため、より注意していく必要がある。
【おわりに】
調査したBMI以外の年齢、介護度、障害高齢者の日常生活自立度、認知症高齢者の日常生活自立度、Vitality Indexのリハビリ・活動の5つの項目で当施設ではどの群の転倒割合が高くなっているか把握することができた。これらの情報を施設全体で共有しながら環境面の調整を行い、多職種共同で転倒予防に努めていきたい。今回は6つの項目を調査したが、項目ごとの転倒の関連性は希薄となってしまった。今後は転倒に対する各項目の関連性についても調査していき、更なる転倒予防に繋げていきたいと考えている。