講演情報

[14-O-O001-04]安全な生活環境の提供転倒転落発生予防を目指した環境設定シートの活用

*古川 雅大1、小林 敦志1 (1. 三重県 みえの郷)
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利用者の安全な生活環境を提供するために、申し送りノートで周知していたが対応する職員の情報共有不足で生活環境が要因となる転倒転落が生じていた。そこで、対策として、いつでもその人に合った安全な環境設定を誰が担当しても同様の環境を提供できるように環境設定シートを活用し自室に掲示した。自室にわかりやすく見やすい場所に提示する事で生活環境が要因となる転倒転落件数が減少する結果が得られたので報告した。
【はじめに】
  当施設の令和4年度は生活環境が要因となるインシデントは全体の60%あり、その中で転倒転落が85%占めている。転倒転落の発生要因は内的、外的要因の複雑な相互作用の結果で生じているが、介護者が転倒リスクをふまえその人に合った環境設定を把握していない、環境調整の確認不足で生活環境が要因となる転倒転落のインシデント発生が生じていた。今回いつでもその人に合った安全な環境設定を誰が担当しても同様の環境を提供できるように環境設定シート(自室ベッド環境を図、文字で表示した用紙)を活用したことで転倒転落発生件数に変化があったのでここに報告する。

【目的】
 予防できる転倒転落の範囲を広げるための対策として利用者の状況に合わせた環境設定シートを活用、更新し生活環境における転倒転落発生予防をする。

【方法】
(1)実践期間:令和5年7月1日~10月31日
   実践対象:みえの郷看護介護職員 32名
(2)環境設定シートを活用し利用者の生活環境の設定
(3)職員への説明、指導
(4)転倒転落件数、発生状況のデーター収集し評価

【実践課程】
 環境設定シートの存在を施設職員に伝達を行う。伝達方法は朝礼時、申し送りノートへ記載、確認した事を示す要捺印とした。新規入所利用者のシートは入所判定の時点で担当者が作成し、入所の際に自室へ掲示することを統一した。設定内容変更時は変更に立ち会った職員(リハビリ、看護師、介護士)が更新し再掲示した。継続入所利用者は多職種で生活環境を見直し作成し自室に掲示した。変更に関しては新規利用者と同様に随時変更、伝達を行った。

【結果】
 令和4年度と実践期間の入所者は変動し転倒リスクの大きさに違いはあるが、環境設定シート活用後の生活環境が要因となるインシデントが54%、その内転倒転落件数は57%と共に減少した。

【考察】
 自室にわかりやすく見やすい場所に掲示し環境設定を意識的に行うこと、また、対応する職員が意識して行動することで転倒転落発生予防につながった。発生した転倒原因には、認知機能の低下、不穏行動、加齢とともに本人が思っている動作と実際の動作に差が生まれことにあり、思ったように動けず転倒が起こっている。環境設定シートだけではなく利用者の精神状態が安定するような対応、身体状況の情報をタイムリー,かつ迅速に共有・ 統合し常に内的・外的側面より転倒・転落予防活動が重要であると考えられる。
令和6年度になり、環境設定シート作成、更新、活用が定着している。しかし、常に統一した介護が提供できているかが課題となっている。対応する職員によって環境設定シートに沿っての確認作業を怠ってしまうことがあり確認作業の習慣化が必要である。今後の課題として居室での環境の変化は随時更新し、対応策の検討結果を対応する職員が周知できるよう意識して行動することである。