講演情報
[14-O-O002-02]環境設定シートの可視化の効果安全な生活空間の提供を目指して
*村上 裕一1、児玉 絵里香1、伊藤 資子1、冨岡 純子1、平棟 敬子1、杉本 幸江1 (1. 広島県 公立みつぎ総合病院介護老人保健施設「みつぎの苑」)
当施設では以前の研究において居室内での転倒が70%以上を占めていることが判明したが、利用者個々の生活環境を把握できていない問題があった。そこで、どの職員でも統一した設定を行うことができ、利用者へ安全な生活空間を提供することを目的に、環境設定シートを掲示し可視化した。転倒件数の比較と職員アンケートを行い、転倒数の減少と職員意識の向上が見られたので報告する。
【はじめに】
介護老人保健施設「みつぎの苑」では、以前の研究発表により、居室内での転倒が70%以上を占めていることが判明しているが、利用者個々の生活環境設定を十分に把握しきれていない問題点があった。これは、職員によって環境設定が統一していないことや、環境設定を確認するのに時間がかかることが課題であった。
そこで、利用者の生活環境を的確に把握できるよう、環境設定シートを掲示して可視化し、その効果について報告する。
【目的】
環境設定を可視化することで職員への周知を図り、統一したケアを実践することで利用者にとって安心・安全な生活環境の提供に繋げる。
【方法】
研究期間:令和5年8月から令和6年1月まで
研究対象:介護老人保健施設「みつぎの苑」一般棟入所者
(1)環境設定シートをベッドサイドへ提示し、転倒事案発生時や利用者に状態の変化があった時見直し。
(2)研究期間内の転倒件数と、昨年の転倒件数を比較。
(3)環境設定シート掲示について職員アンケート調査も踏まえ、環境設定シートの効果について検証。
倫理的配慮:本研究において使用するデータは個人が特定されないよう匿名化して使用する。使用したデータは研究終了後には適切に処理し、また、院内倫理委員会の承認を受け、ホームページにてお知らせとして文章を出した。
【結果】
環境設定シートの項目には、低床、緩衝マット、センサーマット、Pバー、車いす、Pトイレが含まれる。低床、緩衝マット、センサーマット、Pバーを設置する場合は丸で囲み、車椅子、Pトイレの位置はシートに記載、滑り止めマットや細かい設定などはメモ欄に記載した。掲示はベッドサイドに行い、利用者の状態の変化に応じて対応した。
昨年の転倒数は15件で、内ベッド周辺の転倒は12件であった。研究期間内の転倒数は18件で、内ベッド周辺の転倒は8件であった。転倒数に対するベッド周辺の転倒割合を比較すると昨年80%、研究期間内44%で半減した。
ベッド周辺で転倒した利用者の状況は研究期間内では平均要介護度2.8、日常生活自立度はB1、B2のBレベルが85%、認知症高齢者の日常生活自立度はIIa、IIbのランクIIが55%であった。昨年度は平均要介護度2.6、日常生活自立度はBレベルが60%、認知症高齢者の日常生活自立度はランクIIが60%であった。
職員アンケートの結果、利用者毎のベッド周囲の環境設定を把握できていましたかの問いに、環境設定シート掲示前は、出来ていた7%、概ね出来ていた16%、あまり出来ていなかった74%、出来ていなかった3%で「入退所も頻繁にある中で把握が不十分だった」「はっきりした物がない中で、これでいいのかと考えながらおこなっていた」等の意見があった。
環境設定シートの掲示は転倒防止に役に立ちましたかの問いに、役に立った63%、概ね役に立った37%、「その場ですぐに確認でき環境設定を統一できる」「対応が明確に分かるので注意することが意識しやすい」「掲示することで再度確認ができ、統一したケアがしやすくなった」等の意見があった。
環境設定シートの掲示を行なったことで自身の転倒予防への意識の変化がありましたかの問いに、変化があった29%、概ね変化があった71%、「確認してベッドを離れるようになった」「ケア後の確認のために活用しており環境設定の意識が強まったように思う」などの意見があった。
【考察】
転倒リスクの高い利用者が多い中で、環境設定を可視化することは情報の把握や共有を容易にし、情報共有不足のヒューマンエラーを防ぐために効果的であると考える。
統一したケアを実施し、職員意識を高めることで、利用者に安全な生活環境を提供し安心した生活を送ることに繋がると考える。
住環境を整えることは転倒リスクを完全に排除するわけではないがが、要因を減少させることが出来る。住環境を整えることはQOLの維持・向上にも繋がり、心身ともに元気な生活を送るためには必要不可欠である。
【おわりに】
転倒予防対策を継続することは、利用者の生活機能の保持や生命予後の観点から極めて重要である。定期的な見直しを行い、更新の遅延や記載不足を最小限に抑え、利用者の能力と環境の適性を判断するための取り組みを継続し、利用者の安心・安全な生活を支援していきたいと考える。
介護老人保健施設「みつぎの苑」では、以前の研究発表により、居室内での転倒が70%以上を占めていることが判明しているが、利用者個々の生活環境設定を十分に把握しきれていない問題点があった。これは、職員によって環境設定が統一していないことや、環境設定を確認するのに時間がかかることが課題であった。
そこで、利用者の生活環境を的確に把握できるよう、環境設定シートを掲示して可視化し、その効果について報告する。
【目的】
環境設定を可視化することで職員への周知を図り、統一したケアを実践することで利用者にとって安心・安全な生活環境の提供に繋げる。
【方法】
研究期間:令和5年8月から令和6年1月まで
研究対象:介護老人保健施設「みつぎの苑」一般棟入所者
(1)環境設定シートをベッドサイドへ提示し、転倒事案発生時や利用者に状態の変化があった時見直し。
(2)研究期間内の転倒件数と、昨年の転倒件数を比較。
(3)環境設定シート掲示について職員アンケート調査も踏まえ、環境設定シートの効果について検証。
倫理的配慮:本研究において使用するデータは個人が特定されないよう匿名化して使用する。使用したデータは研究終了後には適切に処理し、また、院内倫理委員会の承認を受け、ホームページにてお知らせとして文章を出した。
【結果】
環境設定シートの項目には、低床、緩衝マット、センサーマット、Pバー、車いす、Pトイレが含まれる。低床、緩衝マット、センサーマット、Pバーを設置する場合は丸で囲み、車椅子、Pトイレの位置はシートに記載、滑り止めマットや細かい設定などはメモ欄に記載した。掲示はベッドサイドに行い、利用者の状態の変化に応じて対応した。
昨年の転倒数は15件で、内ベッド周辺の転倒は12件であった。研究期間内の転倒数は18件で、内ベッド周辺の転倒は8件であった。転倒数に対するベッド周辺の転倒割合を比較すると昨年80%、研究期間内44%で半減した。
ベッド周辺で転倒した利用者の状況は研究期間内では平均要介護度2.8、日常生活自立度はB1、B2のBレベルが85%、認知症高齢者の日常生活自立度はIIa、IIbのランクIIが55%であった。昨年度は平均要介護度2.6、日常生活自立度はBレベルが60%、認知症高齢者の日常生活自立度はランクIIが60%であった。
職員アンケートの結果、利用者毎のベッド周囲の環境設定を把握できていましたかの問いに、環境設定シート掲示前は、出来ていた7%、概ね出来ていた16%、あまり出来ていなかった74%、出来ていなかった3%で「入退所も頻繁にある中で把握が不十分だった」「はっきりした物がない中で、これでいいのかと考えながらおこなっていた」等の意見があった。
環境設定シートの掲示は転倒防止に役に立ちましたかの問いに、役に立った63%、概ね役に立った37%、「その場ですぐに確認でき環境設定を統一できる」「対応が明確に分かるので注意することが意識しやすい」「掲示することで再度確認ができ、統一したケアがしやすくなった」等の意見があった。
環境設定シートの掲示を行なったことで自身の転倒予防への意識の変化がありましたかの問いに、変化があった29%、概ね変化があった71%、「確認してベッドを離れるようになった」「ケア後の確認のために活用しており環境設定の意識が強まったように思う」などの意見があった。
【考察】
転倒リスクの高い利用者が多い中で、環境設定を可視化することは情報の把握や共有を容易にし、情報共有不足のヒューマンエラーを防ぐために効果的であると考える。
統一したケアを実施し、職員意識を高めることで、利用者に安全な生活環境を提供し安心した生活を送ることに繋がると考える。
住環境を整えることは転倒リスクを完全に排除するわけではないがが、要因を減少させることが出来る。住環境を整えることはQOLの維持・向上にも繋がり、心身ともに元気な生活を送るためには必要不可欠である。
【おわりに】
転倒予防対策を継続することは、利用者の生活機能の保持や生命予後の観点から極めて重要である。定期的な見直しを行い、更新の遅延や記載不足を最小限に抑え、利用者の能力と環境の適性を判断するための取り組みを継続し、利用者の安心・安全な生活を支援していきたいと考える。