講演情報

[14-O-O002-03]転倒予防のための原因考察と対策

*戸島 幸一1、林 弘毅1、仙石 麻衣1、寺町 育子1、吉田 美幸1、佐藤 志のぶ1 (1. 岐阜県 岐阜リハビリテーションホーム)
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入所2日目に転倒した入所者の、原因を探る為に、行動観察の経過及び、対策の実施を行い、入所者の安全確保を求めたことを報告する。入所者を1週間単位にて、行動の観察を行いました。そこから浮かび上がる行動の理由を特定し、介助内容に組み込みました。介助内容がスタッフの共通認識となり、実施することで対策の有効性が実証されました。
指定難病の方の入所がありました。事前アセスメントには転倒の記載はありませんでしたが、入所2日目の夕刻18:55に転倒がありました。以下、転倒予防の為の原因考察と対策について経過を記述いたします。  入所者名Aさん 男性 82歳 疾病名 進行性核上性麻痺 疾病内容 発症の詳しい原因は現医療において不明です。大脳、脳幹、小脳の神経細胞が、徐々に減少していく指定難病です。表層症状は、体幹が後傾しやすい。足元を見ることができなくなる。眼球の動きが鈍くなる。呂律が回りにくい。嚥下障害等がみられます。 本人の基本動作の事前アセスメントは以下となります。移動―車いす自走、寝返りー自立、起き上がりー何かにつかまれば可、座位保持―自立、立位―何かにつかまれば可、一部介助必要、移乗―何かにつかまれば可、一部介助必要、入浴―機械浴、排泄―尿意あり、便意あり、トイレ誘導、つかまり立ちにて立位可、ズボンの上げ下げ介助必要、尿失禁、便失禁あり、夜間帯オムツ使用、ベットにマット式センサー使用となります。    認知症HDS-R 7点 意思疎通やや困難。    次に転倒事故発生時状況を記述します。夜勤は介護職員1名にてひとつのフロアを対応いたします入所2日目の18:55に、他者のオムツ交換にて、居室に入っている際、名前を呼んでいる声がしました。居室を出てデイルームへ行くと、Aさんの車いすが横転しており、Aさんが立とうとしているところを発見しました。夜勤看護師へ外傷等確認を依頼し、確認したところ異変は見られませんでした。Aさんに転倒した理由を確認しましたが、明確な答えはありませんでした。 臨時対策として、他者対応を行なう場合は、事前に夜勤看護師に見守りを依頼することとしました。ですが夜勤看護師も緊急受診等により常時依頼できるとも限りません。そこで、なぜAさんは動いたのか?を究明しないことには根本の解決にならないと考えました。 まず、1週間単位にてAさんの行動特性を常時観察いたしました。そこで浮かび上がった事象は、以下の通りです。 Aさんは1時間内に1回は、車いすの自己駆動をし始めます。何をしたいのか。どこへ行きたいのか。を確認するも明確な返答はありません。ですがほぼほぼトイレ方向に向かいます。そのままトイレ誘導及び介助を行いました。その後は動く事がありませんでした。このことから、Aさんはトイレの訴えはない状態で、急に動き始める。ブレーキがかかった状態でも急に動き始める。1時間に1回は動き始める。食前、食後も動き始める。起床後から就寝の日中は15回前後の排尿をすることがわかってきました。これらの事象から、Aさんは排尿回数が多く、それにより動き始めることが伺えます。また、事前アセスメントの既往歴から、大腸ガンと便秘症の記載があり、それらも排尿回数に関連しているのではないか。と考えました。 以上から、行動特性の根本は排尿及び排便であると特定いたしました。 次に対策を明確にいたしました。以下のトイレ誘導を実施いたしました。起床後及び朝食前。朝食後。午前オムツ交換時。午前定時トイレ誘導時。昼食前。昼食後。午後オムツ交換時。午後定時トイレ誘導時。夕食前。夕食後。就寝前及び夜間オムツ装着前。上記トイレ誘導をケアプランに反映し、スタッフの共通認識としてケアにあたりました。 こちらを1週間単位にて実施及び検証を行ないました。 これによりAさんはトイレ誘導毎に、排尿もしくは排便がある。その後は動かれることがない。と確定されていきました。したがい入所2日目以降は転倒を予防することが継続できています。なお前回のトイレ誘導より1時間以上経過した場合は行動観察を行なうこと。を中途に付け加えました。これも行動特性より動きを統計的に予測し、先行してケアを行ない、転倒を予防することを継続する為となります。 入所間もない方は、事前アセスメントと異なる場合が多いと思われます。早急にその差異を埋めることが、ケアには必要とされます。現状においては困難かと思われますが、安全確保のために特性を早期にて掴み、検証および確定につなげ、日々のケアにつとめます。