講演情報
[14-O-O002-05]転倒・転落を減らしたい!~リスクマネジャー1年生の取り組み~
*小野 瑛梨香1、上野 妙子1 (1. 福岡県 介護老人保健施設済生会くれたけ荘)
リスクマネジャーを取得し、棟の事故内容を見直した。転倒・転落が事故の約7割を占めていた。防ぐことのできる事故があるのではと思い、職員間でのカンファレンスや検証を行い、共通認識をもつことで同一利用者の同様な事故を減らすことができた。リスクマネジャー1年生の取り組みを報告する。
【はじめに】 当施設は認知症専門棟20名、一般療養棟80名(2階療養棟38名、3階療養棟42名)通所リハビリ30名/日の施設です。所属する2階療養棟では令和2年度の事故件数が72件、令和3年度の事故件数が107件あり、そのうち転倒・転落が全体の約7割を占めていた。令和3年9月リスクマネジャーを取得したことにより、事故が多いのではないか?防げる事故もあったのでは?と疑問をもつようになった。事故内容を見直し、繰り返す事例や防げる事例に今回は着眼して取り組みを行ったので報告する。【取り組み期間・方法】 令和4年4月~令和6年3月 防げる事故を減らすためにリスクマネジャーを中心に勉強会やアンケート、検証、カンファレンスを行う1.職員が事故をどう捉えているかのアンケート2.転倒・転落、誤薬、記録、危険予知の勉強会3.事故後眠りスキャン・カメラによる検証4.カンファレンス【結果】1.夜勤明け時間帯に夜勤者が一人で離床介助をしている為、その時間帯に転倒や事故が発生しやすいのでは?という職員の意見もあり検証を行った結果が、時間帯に限らず事故は発生していた。2.危険予知訓練や知識の共有をすることで職員の認識や視野を広げることができ、新人職員の育成にもつながった。3.眠りスキャンやカメラ等で検証することにより視覚的に分かりやすく、気づきやすくなった。センサーコール設置位置の決定や、ピタッとストッパー車椅子の活用にも繋がった。4.利用者も変わっていく中、利用者個別のカンファレンスを重ねることで、若い職員や新人職員が発言しやすくなり他職員の気付きを理解、共有し、同一認識が持てるようになってきた。インカムを積極的に使用し、職員間で情報共有ができてきた。令和2年度 事故件数72件令和3年度 事故件数107件 ↓取り組み後令和4年度 事故件数 77件事故は減ったが同一利用者の同様な事故が多かった。↓取り組み後令和5年度 事故件数 66件【事例】 K氏 86歳 男性 要介護度250歳代で全盲。近距離杖歩行。長距離車椅子。令和4年11月入所。令和5年春ごろの在宅復帰が目標。入所情報により壁伝いにトイレへの導線を考えベッドを設置。入所当日本人の希望によりベッド位置、床頭台の位置、椅子の位置を変更し、ナースコールの位置を決定。ナースコールなく一人でトイレに行きたいという意思が強く、ベッド入り口にセンサーコール設置。同時に行動把握の為に眠りスキャン・カメラ使用。入所から 7日目 トイレでの転倒。本人の状態把握不足。入所 8日目以降 座り込み4件。その都度本人の訴えが変わる為、環境整備を行う。眠りスキャン・カメラにて行動を把握。眠りスキャンの検知を離床検知から覚醒検知に変更。転倒時の保護のためエアロビマット使用。入所から2か月後 床に座り込み。ベッドの手すりを掴むも滑ったと言われる。カメラで確認するとカーテンを開けようとしてバランスを崩し転倒。ベッドのフットボートが高く把持しやすいものへ変更。入所から4か月後 お茶を取ろうとした本氏が床頭台に体重を掛け床頭台が倒れかかる。座った状態で物が取れるように床頭台の位置の調整。入所から5か月後 ベッド足元のボードに掛けていたタオルを取ろうとして尻もち。タオルは必ず本人へ渡すよう徹底。入所から半年で退所 外傷のある転倒は最初の1件だけだった。本人の意思を尊重しながら眠りスキャン・カメラ使用によりその後の大きな事故やADL低下なく退所。【考察・まとめ】令和3年度の事故報告件数増加は2月10日から3月7日までコロナクラスターの発生の影響もあると思われる。利用者本人のADLや認知機能に応じた眠りスキャンの活用、繰り返さない為に事故後に行動の検証を行い、個別対応を行なえるようになった事で同一利用者の同一事故が減り事故件数が減ったのではないかと考える。利用者入所後よりリハビリに介入してもらい評価やカンファレンスを行い対応の助言をもらうような体制が出来て来た。 カンファレンス、勉強会を継続的に開催し、利用者の行動に注視し、職員が同一認識を持ち、事故が起こった際には迅速な対応と職員間の情報共有が重要だと改めて認識した。今後は転倒事故だけでなく、感染対策等にも視野を広げ活動していきたい。