講演情報
[14-O-O002-06]服薬ミス“ゼロ”を目指した取り組み
*粂 みどり1、鈴木 尚美1、加島 聖子1 (1. 静岡県 坂の上ろうけん曳馬野)
業務において、常に注意していても利用者への服薬ミスが減少しないのが実情であった。そこで、「服薬ミス“ゼロ”を目指す」という目標を掲げ、服薬介助時の「声だし」の実践、「責任感」を意識させるなど方法を統一し、多忙な中でも確実にできることを全員で実践した結果、“ゼロ”には至ってはいないが、一定の効果が得られたのでここに報告する。
【はじめに】
「服薬介助」について今一度考え直し、「落薬ミス」や「服薬ミス」の事故件数を無くしていこうと考えた。服薬ミスは利用者の生命に関わる重大な事故である。1つ間違えれば、死にも直結する可能性もあり、場合によっては刑事責任を問われることも。
服薬事故の際、「確認不足」が多く、「次は気を付けましょう」「次は確認しましょう」という対策が多かった。しかし、これでは事故件数は減らない。
北海道庁の調べによると、事故区分は以下の通りであった。
平成27年:誤薬37%、骨折23%、打撲26%、誤嚥6%、無断外出3%、その他5%
令和元年 :誤薬35%、骨折30%、打撲21%、誤嚥7%、無断外出1%、その他6%
令和3年 :誤薬33%、骨折32%、打撲20%、誤嚥7%、無断外出2%、その他6%
どの年も骨折や打撲を上回り1番多い事故内容となっている。私たちの施設では、令和4年の8月から1年間で「服薬ミス」8件、「落薬ミス」10件、「その他」4件というように、決して少ないとは言えない状況である。
原因として挙げられる内容は「確認不足」によるものがほとんどを占めている状況であった。元々、個々で服薬用のケースがあり、その中に飲む薬と服薬カードといって、名前と顔写真、朝・昼・夕に飲む錠数・包数が書かれている。以前から活用していたが、業務の忙しさや流れ作業による確認の怠りにより、きちんと確認していなかった為に事故が発生していたと考えられる。
【目的】
服薬ミスを無くしていくうえで、服薬介助に要する時間を多くもち、ゆっくりと取り組んでいけば事故件数は減るかと思う。しかし、最初は意識して取り組んでいくとは思うが、時間が経つにつれて、また時間がない事を理由に取り組まなくなってしまうのではと思った。
今回の実践では「声出し」「責任感」を意識して、当たり前のことではあるが、現在の業務量でも支障なく取り組めるような内容を考え以下のように取り組んだ。
【実践方法】
1.服薬開始時には「服薬ミスのないように決められた手順でお願いします」と足を止めて声をかけるようにする。
一度足を止めて声掛けを行うことでの流れ作業の防止。
2.服薬介助職員2名、台車を2台用意して男女別に分けてきちんと役割を明確化。
職員に責任感を持って取り組んでもらう為。
3.ケースごと手に取り、服薬カードの氏名、顔が一致しているか声出し確認。
4.薬袋の日付・時間帯を声出し確認。
5.カードに記載している錠数・包数が合っているか声出し確認。
目で見るだけでなく、必ず声に出して確認するように。
6.内服方法を利用者ごとで決めて統一化。
統一したケアを行うために。
7.口の中に入っていないか確認し、飲み込むのを確認するまで観察。
口の中からこぼれ落ちてしまう事故を防ぐ為。
【実践結果】
令和5年9月1日~令和6年6月15日時点で、服薬ミス2件、落薬1件、その他1件であった。
実施期間中の服薬ミスの内容について、服薬ミスに関しては、口から出してしまう利用者だとは思っていなかったり、落薬に関しては、比較的しっかりされている利用者の薬であった為にきちんと最後まで確認しなかったという状況で発生してしまった。
実施期間が違う為、正確な対照ではないが、「声出し確認」や「責任感」を持って取り組むことにより、実施したことによる成果はあげられたと考える。
しかし、ミスを0にしていくためには、今回の実施期間中にも起こってしまったミスのように、「思い込み」であったり、しっかりされている方だから「大丈夫」といったような気のゆるみから事故が発生してしまっているので、利用者1人1人見方を変えることなく行う必要があると考える。
【まとめ】
難しい事や手間をかけすぎてしまうと、かえって取り組みにずれが生じたり、やらなくなってしまうことも考えられたため、「声出し確認」・「責任感」といった部分を主として取り組んできたが、少しの変化でこれだけ成果が出たことはとても良い事だと考えている。
今後も事故は発生してしまう可能性もあるが、その時にはきちんと話し合って原因を追究し、同じミスが起こらないようにしていきたい。今回の研究で事故がゼロになったわけでもないし、実施期間も短いので、これからも継続して取り組んでいけるよう気をゆるまず行っていきたい。
「服薬介助」について今一度考え直し、「落薬ミス」や「服薬ミス」の事故件数を無くしていこうと考えた。服薬ミスは利用者の生命に関わる重大な事故である。1つ間違えれば、死にも直結する可能性もあり、場合によっては刑事責任を問われることも。
服薬事故の際、「確認不足」が多く、「次は気を付けましょう」「次は確認しましょう」という対策が多かった。しかし、これでは事故件数は減らない。
北海道庁の調べによると、事故区分は以下の通りであった。
平成27年:誤薬37%、骨折23%、打撲26%、誤嚥6%、無断外出3%、その他5%
令和元年 :誤薬35%、骨折30%、打撲21%、誤嚥7%、無断外出1%、その他6%
令和3年 :誤薬33%、骨折32%、打撲20%、誤嚥7%、無断外出2%、その他6%
どの年も骨折や打撲を上回り1番多い事故内容となっている。私たちの施設では、令和4年の8月から1年間で「服薬ミス」8件、「落薬ミス」10件、「その他」4件というように、決して少ないとは言えない状況である。
原因として挙げられる内容は「確認不足」によるものがほとんどを占めている状況であった。元々、個々で服薬用のケースがあり、その中に飲む薬と服薬カードといって、名前と顔写真、朝・昼・夕に飲む錠数・包数が書かれている。以前から活用していたが、業務の忙しさや流れ作業による確認の怠りにより、きちんと確認していなかった為に事故が発生していたと考えられる。
【目的】
服薬ミスを無くしていくうえで、服薬介助に要する時間を多くもち、ゆっくりと取り組んでいけば事故件数は減るかと思う。しかし、最初は意識して取り組んでいくとは思うが、時間が経つにつれて、また時間がない事を理由に取り組まなくなってしまうのではと思った。
今回の実践では「声出し」「責任感」を意識して、当たり前のことではあるが、現在の業務量でも支障なく取り組めるような内容を考え以下のように取り組んだ。
【実践方法】
1.服薬開始時には「服薬ミスのないように決められた手順でお願いします」と足を止めて声をかけるようにする。
一度足を止めて声掛けを行うことでの流れ作業の防止。
2.服薬介助職員2名、台車を2台用意して男女別に分けてきちんと役割を明確化。
職員に責任感を持って取り組んでもらう為。
3.ケースごと手に取り、服薬カードの氏名、顔が一致しているか声出し確認。
4.薬袋の日付・時間帯を声出し確認。
5.カードに記載している錠数・包数が合っているか声出し確認。
目で見るだけでなく、必ず声に出して確認するように。
6.内服方法を利用者ごとで決めて統一化。
統一したケアを行うために。
7.口の中に入っていないか確認し、飲み込むのを確認するまで観察。
口の中からこぼれ落ちてしまう事故を防ぐ為。
【実践結果】
令和5年9月1日~令和6年6月15日時点で、服薬ミス2件、落薬1件、その他1件であった。
実施期間中の服薬ミスの内容について、服薬ミスに関しては、口から出してしまう利用者だとは思っていなかったり、落薬に関しては、比較的しっかりされている利用者の薬であった為にきちんと最後まで確認しなかったという状況で発生してしまった。
実施期間が違う為、正確な対照ではないが、「声出し確認」や「責任感」を持って取り組むことにより、実施したことによる成果はあげられたと考える。
しかし、ミスを0にしていくためには、今回の実施期間中にも起こってしまったミスのように、「思い込み」であったり、しっかりされている方だから「大丈夫」といったような気のゆるみから事故が発生してしまっているので、利用者1人1人見方を変えることなく行う必要があると考える。
【まとめ】
難しい事や手間をかけすぎてしまうと、かえって取り組みにずれが生じたり、やらなくなってしまうことも考えられたため、「声出し確認」・「責任感」といった部分を主として取り組んできたが、少しの変化でこれだけ成果が出たことはとても良い事だと考えている。
今後も事故は発生してしまう可能性もあるが、その時にはきちんと話し合って原因を追究し、同じミスが起こらないようにしていきたい。今回の研究で事故がゼロになったわけでもないし、実施期間も短いので、これからも継続して取り組んでいけるよう気をゆるまず行っていきたい。