講演情報

[14-O-O003-05]職員の腰痛対策について自己完結型ストレッチ・腰痛予防動作を経て

*中井 祐紀菜1、秋山 将希1 (1. 岡山県 医療法人福寿会介護老人保健施設倉敷藤戸荘)
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当施設における勤務者の腰痛軽減・予防を目的に、アンケート調査を実施し、腰痛予防の資料を配布した。配布資料に基づき実施してもらい、約3週間後に再アンケートを行った。結果、腰痛有訴者数の軽減がみられた。腰痛に対しての取り組みにより、勤務者の腰痛予防に対しての意識が高まっていると考えられる。一方、腰痛に著変がない対象者もいたことから、この対象者に対し今後の改善策を検討した件について報告する。
【はじめに】
全体の高齢化が進みゆく中で当荘でも職員の年齢層の平均が高くなっていることが一つの課題となっている。また、高齢化と直結しているのが、職業性の疾病の問題である。今回の研究にあたって理学療法士協会の「職場における腰痛予防宣言!」の取り組みで、金メダル施設に認定されたことがきっかけとなり、当荘で腰痛対策を考え、腰痛有訴者ゼロに向けて研究を開始した。厚生労働省が公表する「国民生活基礎調査」の中の「性別にみた有訴者率(人口千対)の症状」として、男性と女性共に1位に腰痛、2位に肩こりを訴えている方の割合が高い。その中でも腰痛発生件数が多い上位3業種は「保健衛生業」、「商業・金融・広告等」、「運輸交通業」であり全体の70%を占めているなか、「保健衛生業」は約35%と高い。さらに「保健衛生業」のなかでは「社会福祉施設」が約80%と大部分を占めているということが報告されている。以上のことから、介護施設での腰痛は切り離せない問題と考えられた。今回の報告では、当荘での腰痛のアンケート結果より腰痛予防の資料を配布し、再度アンケート調査後、「変化がなかった又はわからない」と返答した対象者に対し、今後の改善策を検討した件について報告する。
【実施内容】
当荘の勤務者に対し腰痛状況の把握もかねて、腰痛の有無、腰痛発生の原因と環境(姿勢・作業環境)のアンケート調査を実施した。その後、自己完結型のストレッチ・腰痛予防動作(中腰姿勢を避ける等)の資料を配布し、自宅や職場で約3週間取り組んでもらい、再度アンケート調査を実施した。
【結果】
アンケート調査にて、初回アンケート調査時の腰痛有訴者は勤務者全体の82%であった。再アンケート調査時の腰痛有訴者は52%へと減少していた。また、発生原因として「仕事中」との割合が全体の61%であり、多くの割合を占めていた。しかし、腰痛予防を実施した対象者の中で、ストレッチを実施した人の75%、腰痛予防動作を実施した人の98%の対象者が腰痛に「変化がなかった又はわからない」といった結果であった。
【総括】
調査により、仕事と腰痛との関連性が見られていることがわかった。最終アンケート調査の結果から、腰痛有訴者の割合は減少しており、腰痛予防に関しての意識向上に繋がったのではないかと考える。今回の研究では、腰痛に「変化がなかった又はわからない」という対象者にフォーカスをあてて、ストレッチ実施者をA群、予防動作実施者をB群とし、原因と改善策について検討した。
最初にA群の原因として、実施期間が3週間と短かったことや運動頻度の指定をしていなかったため、統一性がなくバラバラであったことが考えられる。改善策として、ストレッチ期間が8週以上(2か月)での実施で改善が見られた報告が多いことから、ストレッチ期間が最低でも8週間の実施が必要であったと考える。また、腰痛期間に関して急性腰痛では、「6週間以内に寛解するものが90%」といわれているため、急性か慢性腰痛であったのか不明な部分があったことも考えられた。さらに、腰痛のための運動療法ガイドより、「1回10~30分で1日1~3回の運動を勧めている。」と言われていることから、それに沿って実施していくことが効果的であったと考える。次に、B群の原因としては元々腰痛がなく、変化がわからないことが考えられた。改善策として、アンケート調査の時点で腰痛有訴者を対象とした集計をとるべきであった。最後に共通原因として実技での指導ではなく配布のみ(自己完結型)での実施のため指導不足であったことが考えられる。対象者にアンケート調査を行ったところ、A群では「業務内にストレッチをする時間を作ってほしい。」または「利用者と一緒に実施する時間を作ってほしい。」、B群では「腰痛予防に繋がる補助具を導入してほしい。」又は「荘内研修会を開いてほしい。」との意見が多かった。
今回の研究では、腰痛予防動作やストレッチに関して実施方法の統一性が不十分であった。そのため、実際に腰痛予防の実技指導や、定期的な研修会の開催、または啓発ポスターの掲示等を行っていきたい。そして、当荘の取り組みとして理学療法士主体の腰痛対策委員会があるため、現在の腰痛有訴者に対しては軽減、無症状者には腰痛発生の予防を目的に、荘内職員の腰痛発生者ゼロに向けて、継続して職員の働きやすい環境を整えていきたい。