講演情報
[14-O-T001-01]HitomeQケアサポート導入が施設にもたらしたもの転倒転落の再発生率低下を期待して
*大澤 宜央1 (1. 愛媛県 済生会今治老人保健施設希望の園)
R5年1月に当施設へHitomeQケアサポートが導入された。居室での転倒転落件数や、その再発生率がどのように変化したか確認するため、居室での転倒転落発生件数と再発生件数を導入前後2年間追跡したので報告する。転倒転落件数に大きな差は出なかったが、転倒転落カンファレンスでは事例検証時の見える化が図れたことにより、より利用者に合った予防対策がとれた。その結果、転倒転落の再発生件数が減少したので報告する。
【はじめに】
以前より当施設では転倒転落事故に対し、スタッフの勤務体制の見直しや、離床センサーベッド、座コール、あゆみちゃんの使用等で対応してきたが、転倒転落件数の減少は困難を極めていた。さらに昨今の認知症利用者の増加に伴い、転倒リスクの高い利用者も増加し、転倒転落予防に対して、スタッフからの負担の声も上がっていた。転倒転落事故には必ずカンファレンスの実施を行い、転倒転落予防策を立てて来たが、居室での転倒転落は食堂やトイレと違い、スタッフが実際に目撃することが少ないため、どのように転倒転落したか想像し、予防対策を立てているのが現状であった。
そこへ当施設含め愛媛県今治市の老人保健施設8施設、約600床が愛媛県のICTモデル事業所に選ばれ、令和5年1月よりコニカミノルタ社のHitomeQ(ヒトメク)ケアサポートが導入となった。そこで、行動分析センサーの機能を使い、転倒転落を認識すると、その前後1分間を自動で録画されることに着眼し、転倒転落カンファレンスで活用することで、転倒転落の再発生率を減少させることが出来るのではないか、さらに行動分析センサーの起床や離床もONに設定することで、離床時の転倒転落を早期察知できるのではないかと我々は考えた。このシステムの導入により、転倒転落事故の件数にどの程度変化があるか、また、転倒転落カンファレンスにて実際の映像を確認してからカンファレンスを行うことで、再発生件数にどのような変化があるか調査を行ったので報告する。
【方法】
当施設入所中の利用者のHitomeQケアサポート導入前後の居室での転倒転落件数と再発生件数を抽出し比較する。
1)行動分析センサーの設定について:
転倒転落のみON
・胃ろう造設者など基本床上で生活されている利用者
・歩行や移乗が見守りも不要で自立している利用者
上記に当てはまらない利用者は離床と転倒転落をONとした。また、重度の認知症などで転倒転落の危険性が高い利用者には起床もONとした。
2)対象者:
済生会今治老人保健施設希望の園、2階フロア50床、3階フロア50床、計100床に入所されている利用者(年間平均入所者数令和4年度94.5人、令和5年度95.1人)
3)時期:
導入前:令和4年4月1日から令和5年3月31日までの1年間
導入後:令和5年4月1日から令和6年3月31日までの1年間
なお、HitomeQケアサポートは令和5年1月より導入されたが、スタッフへのシステム定着のことも考慮し、令和5年1月から3月までの3か月間は導入前の件数抽出とした。
【結果】
導入前:令和4年4月1日から令和5年3月31日までの転倒転落事故52件の内訳
居室:28件(約54%) トイレ:9件(約17%) 食堂:13件(25%)
廊下:1件(約2%) 浴室:1件(約2%)
居室での転倒転落再発生件数:6件
導入後:令和5年4月1日から令和6年3月31日までの転倒転落事故51件の内訳
居室:32件(約64%) トイレ:4件(約8%) 食堂:11件(約22%)
廊下:2件(約4%) 浴室:1件(約2%) その他:1件(約2%)
居室での転倒転落再発生件数:4件
各内訳の結果から、居室での転倒転落事故の件数は、HitomeQケアサポート導入後やや増加(28件→32件)がみられた。また、導入前後ともに転倒場所で一番多い場所が居室であることもわかった。再発生件数は導入前後で6件→4件とやや減少を認めた。
【考察】
HitomeQケアサポートが転倒転落予防のみに特化したシステムではないことはスタッフ一同理解しての運用開始であったが、現場で一番苦慮していたのが転倒転落予防の対応であったため、居室での離床時などがモニターで確認できるのであれば、事故を未然に防ぐこともできるのではないかと考えて今回抽出・比較を行った。HitomeQケアサポート導入前はナースコールや、100床中20床の離床センサーベッドでの対応であったが、全床にシステムが導入された上に、既存の離床センサーベッドやナースコールも併用とした。そのため、コール対応は増えたが、映像を確認することで、不必要な訪室を減らすことができたため、スタッフの負担軽減にも効果があった。また、映像で確認しながら居室へ向かうことができるため、早急に対応が必要か否か判断しながら訪室することができるなどの利点もあったが、感知速度は既存の離床センサーベッドのほうが早いため、感知速度の向上には今後のコニカミノルタ社の企業努力を期待したい。今までの転倒転落カンファレンスでは、実際に転倒転落事故が起こっても、転倒転落した場面を目にすることは少なく、どうしても抽象的になりがちで、本当に本人に合った対策をとれているのかという不安があったが、このシステムを導入後は、事例検証の見える化が図れたことにより、カンファレンスにてより本人に合った予防策を考えることができるようになった。また、このシステムを利用した職員研修の実施や、スタッフの負担軽減による生産性向上にも今後期待ができると感じた。
【おわりに】
転倒転落は老年症候群の一つの症状であり、未然に防ぐのは本当に難しいことである。ただ、転倒転落によりレントゲン撮影など、本来不要な検査を行うことになる利用者の身体的・精神的負担を考えると、可能な限り転倒転落は起こさないほうがいいと考える。
HitomeQケアサポートのおかげで、転倒転落の再発生件数は減少傾向にある。引き続きカンファレンスなどでこのシステムを有効活用し、さらなるサービスの向上に努めてまいりたい。
以前より当施設では転倒転落事故に対し、スタッフの勤務体制の見直しや、離床センサーベッド、座コール、あゆみちゃんの使用等で対応してきたが、転倒転落件数の減少は困難を極めていた。さらに昨今の認知症利用者の増加に伴い、転倒リスクの高い利用者も増加し、転倒転落予防に対して、スタッフからの負担の声も上がっていた。転倒転落事故には必ずカンファレンスの実施を行い、転倒転落予防策を立てて来たが、居室での転倒転落は食堂やトイレと違い、スタッフが実際に目撃することが少ないため、どのように転倒転落したか想像し、予防対策を立てているのが現状であった。
そこへ当施設含め愛媛県今治市の老人保健施設8施設、約600床が愛媛県のICTモデル事業所に選ばれ、令和5年1月よりコニカミノルタ社のHitomeQ(ヒトメク)ケアサポートが導入となった。そこで、行動分析センサーの機能を使い、転倒転落を認識すると、その前後1分間を自動で録画されることに着眼し、転倒転落カンファレンスで活用することで、転倒転落の再発生率を減少させることが出来るのではないか、さらに行動分析センサーの起床や離床もONに設定することで、離床時の転倒転落を早期察知できるのではないかと我々は考えた。このシステムの導入により、転倒転落事故の件数にどの程度変化があるか、また、転倒転落カンファレンスにて実際の映像を確認してからカンファレンスを行うことで、再発生件数にどのような変化があるか調査を行ったので報告する。
【方法】
当施設入所中の利用者のHitomeQケアサポート導入前後の居室での転倒転落件数と再発生件数を抽出し比較する。
1)行動分析センサーの設定について:
転倒転落のみON
・胃ろう造設者など基本床上で生活されている利用者
・歩行や移乗が見守りも不要で自立している利用者
上記に当てはまらない利用者は離床と転倒転落をONとした。また、重度の認知症などで転倒転落の危険性が高い利用者には起床もONとした。
2)対象者:
済生会今治老人保健施設希望の園、2階フロア50床、3階フロア50床、計100床に入所されている利用者(年間平均入所者数令和4年度94.5人、令和5年度95.1人)
3)時期:
導入前:令和4年4月1日から令和5年3月31日までの1年間
導入後:令和5年4月1日から令和6年3月31日までの1年間
なお、HitomeQケアサポートは令和5年1月より導入されたが、スタッフへのシステム定着のことも考慮し、令和5年1月から3月までの3か月間は導入前の件数抽出とした。
【結果】
導入前:令和4年4月1日から令和5年3月31日までの転倒転落事故52件の内訳
居室:28件(約54%) トイレ:9件(約17%) 食堂:13件(25%)
廊下:1件(約2%) 浴室:1件(約2%)
居室での転倒転落再発生件数:6件
導入後:令和5年4月1日から令和6年3月31日までの転倒転落事故51件の内訳
居室:32件(約64%) トイレ:4件(約8%) 食堂:11件(約22%)
廊下:2件(約4%) 浴室:1件(約2%) その他:1件(約2%)
居室での転倒転落再発生件数:4件
各内訳の結果から、居室での転倒転落事故の件数は、HitomeQケアサポート導入後やや増加(28件→32件)がみられた。また、導入前後ともに転倒場所で一番多い場所が居室であることもわかった。再発生件数は導入前後で6件→4件とやや減少を認めた。
【考察】
HitomeQケアサポートが転倒転落予防のみに特化したシステムではないことはスタッフ一同理解しての運用開始であったが、現場で一番苦慮していたのが転倒転落予防の対応であったため、居室での離床時などがモニターで確認できるのであれば、事故を未然に防ぐこともできるのではないかと考えて今回抽出・比較を行った。HitomeQケアサポート導入前はナースコールや、100床中20床の離床センサーベッドでの対応であったが、全床にシステムが導入された上に、既存の離床センサーベッドやナースコールも併用とした。そのため、コール対応は増えたが、映像を確認することで、不必要な訪室を減らすことができたため、スタッフの負担軽減にも効果があった。また、映像で確認しながら居室へ向かうことができるため、早急に対応が必要か否か判断しながら訪室することができるなどの利点もあったが、感知速度は既存の離床センサーベッドのほうが早いため、感知速度の向上には今後のコニカミノルタ社の企業努力を期待したい。今までの転倒転落カンファレンスでは、実際に転倒転落事故が起こっても、転倒転落した場面を目にすることは少なく、どうしても抽象的になりがちで、本当に本人に合った対策をとれているのかという不安があったが、このシステムを導入後は、事例検証の見える化が図れたことにより、カンファレンスにてより本人に合った予防策を考えることができるようになった。また、このシステムを利用した職員研修の実施や、スタッフの負担軽減による生産性向上にも今後期待ができると感じた。
【おわりに】
転倒転落は老年症候群の一つの症状であり、未然に防ぐのは本当に難しいことである。ただ、転倒転落によりレントゲン撮影など、本来不要な検査を行うことになる利用者の身体的・精神的負担を考えると、可能な限り転倒転落は起こさないほうがいいと考える。
HitomeQケアサポートのおかげで、転倒転落の再発生件数は減少傾向にある。引き続きカンファレンスなどでこのシステムを有効活用し、さらなるサービスの向上に努めてまいりたい。