講演情報

[14-O-T001-03]見守りシステム(ライフレンズ)導入に伴う職員の意識

*山川 誠1、室谷 真里那1、太田 公昭2、土井 敏之1、武田 郁子1 (1. 大阪府 介護老人保健施設 八尾徳洲苑、2. パナソニック ホールディングス株式会社)
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A施設入所フロアでは2024年度に見守りシステム(以下、ライフレンズ)を導入した。それに伴う職員意識の変化と不安・疑問を明確にするため、ライフレンズを使用する職員にアンケートを実施した。結果として「操作に慣れていない」と回答した職員が半数いた。ライフレンズの機能を段階的に使用していた時期であり、職員全員に周知できていなかったこと、日勤帯の業務だと使用する機会が限られていることなどが要因だと考えられる。
1.背景
2024年3月にA施設は施設移転に伴い、見守りシステムのライフレンズ(パナソニックホールディングス株式会社製)を導入した。A施設では今まで転倒防止を目的にセンサーマットを使用していたが、センサーマットと映像センサーを併用した見守りシステムの使用は今回が初めてである。事前に説明会が実施されたが、参加した職員は限られており、多くの職員は資料を参考に見守りシステムを使用することとなった。そのため、不安や疑問を口にする職員も多く、活用に向けた組織的な取組みが必要な状況であった。
2.目的
介護における生産性向上はA施設においても課題であり、見守りシステムの活用は欠かせない。本年度が見守りシステムの導入初年度であり、実際の声や反応に基づいた職員意識の変化が一番把握しやすいタイミングと考えた。見守りシステムを使用して感じたことや疑問、不安についてアンケート調査を行い、職員の意識変化を明らかにすることを本研究の目的とした。本研究の結果から職員の疑問や不安などを共有し、解決に向けた取組みを行うことで、疑問や不安を少しでも取り除けるようにしたいと考えた。
3.方法
(1)対象と方法
1)対象
アンケート対象者:A老健入所フロア所属の看護・介護職員の34人
2)方法
パナソニックホールディングス株式会社の協力を得て、見守りシステム導入に関して職員にアンケート(選択式・自由記載)を実施した。アンケート結果は集計の上でカテゴリー化して分析し、
1.見守りシステムに対する職員の意識2.疑問や不安を解決するために、どのような取り組みが必要かの2点について検討した。
また、アンケートは見守りシステムの導入段階である2024年4月25日から5月5日に実施した。
4.倫理的配慮
本研究に先立ち、筆者の所属する施設の教育委員会に研究計画書をもって、本研究の目的、方法を文書で説明し、実施許可を得る。対象者に、本研究の主旨及び対象者の質を評価するものではない旨と、個人が特定されないことを文書で説明し、アンケートへの回答をもって同意を得たものとした。
5.結果
34名を対象にアンケートを実施したが、回答を得られたのは29名(アンケートの回収率は85.3%)であり、回答者の内訳は介護職17名、看護師11名、その他1名であった。
(1)『あなたは、見守りシステムを利用する機会がありますか?』という問いに対しては、「ある」20名・「ない」8名・「無回答」1名であった。
「ある」と回答した方の勤務形態は、「早番」10名・「遅番」12名・「日勤」11名・「夜勤」12名であった。「ない」と回答した方の勤務形態は、「早番」5名・「遅番」6名・「日勤」8名・「夜勤」4名であった。(勤務形態は重複回答あり)
(2)『あなたは、見守りシステムの操作について理解されましたか?』という問いに対しては、「理解した」0名・「だいたい理解した」16名・「あまり理解できていない」4名・「難しくて理解できそうにない」0名であった。
(3)『ライフレンズの使用にあたって、必要なサポートや要望などがあれば教えてください。』という問いに対しては、自由記述で「睡眠や覚醒した・起きた時間帯の平均値がみれたり、また数値化できたらいいと思った」・「アンケートがあるまでライフレンズの説明がなかった」・「体動でセンサーがならないようになってほしい」・「使いこなせていないのでなんともいえない」・「まだ利用できていない」という回答があった。
6.考察結果
(1)より、日勤帯の職員は見守りシステムを使用したことがない割合が夜勤者と比較して多いことが分かった。その理由として、日勤帯で業務する職員のうち、入浴介助に入る職員は見守りシステムに触れる機会が少ない。また普段からステーション内で業務をすることがない職員も、見守りシステムに触れる機会が少ない。日勤帯では利用者が離床して過ごされている時間が長く、居室に設置されている見守りシステムを使用する機会が少なくなり、使い方や操作に慣れていないという回答に至ったと考えられる。
結果の(2)と(3)より、見守りシステムには職員の要望に合う機能(睡眠状況やバイタルサインの確認)が備わっているが、操作についての理解が浸透していないため活用がなされていない。今後、操作についての理解が浸透し、各種機能が活用できるようになれば職員の不安や疑問を解決できるようになるのではないかと考えられる。
7.まとめ
本研究から、A施設では見守りシステムについての理解が浸透できておらず、職員は不安・疑問を抱えていることがわかった。また、不具合時の対応もできていないことが明らかになった。今回の結果を踏まえて、見守りシステムの操作や使い慣れていない職員に対しての勉強会、アンケート、マニュアル作成、新人職員に対するオリエンテーション等を今後実施していく予定である。それらの取組みを通じて、職員が見守りシステムを活用できるようにサポートしていき、不安や疑問を少しでも解決していきたい。