講演情報
[14-O-T001-04]介護ロボットHugの日常的な活用を目指した取り組み
*酒井 朋子1、高崎 博靖1、清水 美峰子1 (1. 三重県 介護老人保健施設みえ川村老健)
介護ロボットHugの導入で、介護業務に対する支援と介護者の負担軽減が得られるよう日常的な活用を目指した取り組みについて報告する。介護ロボット推進委員会を発足し、委員と共に操作方法を習得できるよう実演で実施した。その結果、特に排泄介助での活用頻度と、対象者が徐々に増え日常的に使えるようにまでなる。継続的な活用で、職員の介護負担軽減と対象者の動作負担軽減、ADL・QOL向上へ繋がったと考えられた。
【はじめに】
近年、介護人材の不足や職員の腰痛等が喫緊の課題となっており、介護ロボットを活用することで介護現場の負担を軽減し、利用者の自立支援も促進されることが期待されている。当施設では、令和3年度の三重県介護従事者確保補助金(介護ロボット導入支援事業)の申請を実施し、介護ロボットHugを導入した。
Hugとは、高齢者の移乗動作をサポートするロボットである。ベッドから車椅子、車椅子からトイレの便座、といった座位間の移乗動作だけでなく、入浴や排泄時の立位保持にも役立つ。
当施設では、介護ロボット推進委員会を発足し、Hugを日常的に活用するための取り組みをここに報告する。
【目的】
Hugを日常的に活用し、職員の介護負担軽減と対象者の動作負担軽減、ADL・QOL向上へと繋げ、今後の当施設の介護現場での更なる普及を目指していく。
【経過と結果】
介護ロボット推進委員会では、まずは委員がHugの操作方法を学習し操作できるように努めた。介護ロボット推進委員は、介護長・各階フロアの介護職員・作業療法士で構成されており、それぞれの現場で職員がHugの機能を理解し、操作方法・利用方法を習得できるように実演で研修を実施した。特に当施設の認知症対応フロアでは、排泄介助時に積極的にHugを使用し、その結果、一ヶ月ほどで委員以外の職員の活用が増加した。活用が増加した背景は、立位保持が困難であり、重度の片麻痺がある人や介護抵抗が激しい人は、抱えての移乗動作時に職員の精神的・肉体的な負担が大きく、従来の介助方法では困難を極めた。認知症の対象者は、排泄誘導を口頭で理解できず介護抵抗によっての他害もみられるため、Hugを事前に設定し、対象者にその都度じっくり声掛けをしながら立位になり、便座に着座を誘導できることで、楽に排泄介助が実施できた。また、当施設は100床のベッドを有しているため、職員は、多くの対象者の排泄介助を実施している。そのためHug使用によって、「腰痛や肩痛が楽になった」という意見が多く聞けている。
一方で、「Hugの操作方法や利用方法を理解し覚えるのが煩わしい」、「Hugの操作方法の理解ができていないため、設置に時間がかかり、通常の介助方法のほうが楽である」という意見や「ロボット使用で家族が良い気はしないのでは」、「腕や足が痛いと言っているので使わないほうが良いのでは」等の理由によって使用しない職員が一定数みられた。これらの意見に対しては、操作方法の手順や方法を理解してもらえるように、現場で何度も委員が働きかけた。また、「ロボットの使用は家族が良い気はしない」という意見に対しては、各フロアや玄関に介護ロボット使用のポスターを掲示し、家族に介護ロボットの活用をアピールした。ポスターを掲示してからは、多くの家族から「介護ロボットはすごいですね」等と好意的な意見が多く、否定的な意見はなかった。また、「対象者がHug使用時に痛みを訴える」という意見に対しては、Hugの操作方法や利用方法を再度理解したうえで、痛みが出現した場合は対象から除外することにした。
現在は、カンファレンスにて多職種と連携し、実際に排泄動作時に、リハビリ職等の多職種と一緒にHugを使用し、検討してから生活の場で活用することにしている。
【考察】
介護ロボット推進委員会では、Hugを日常的に活用し、職員の介護負担軽減と対象者の動作負担軽減、ADL・QOL向上へと繋がる取り組みを実施してきた。当施設の認知症対応フロアでは、対象者をあらかじめ設定し、委員が毎日他職員と共に操作手順や利用方法を随時伝えながら対象者の介助を実施した。これらロボット推進委員会の継続的な取り組みによって、一部を除いて多くの職員がHugの使用方法を理解し、排泄介助を実施することができるようになった。そして導入から1年以上経過した現在では、職員が継続してHugを使用できており、これまでの取り組みが大きな成果を得たと考える。
衣食住に関わる日常生活動作の中でも排泄動作の介助は、対象者を抱きかかえ深い前傾姿勢をとること、体重支持等による身体的な負担が大きく腰痛を誘引する原因となっている。要介護度が高く重度障害のある対象者は、職員の肉体的な負担が大きいため、オムツでの排泄が多かった。また、尿意がある重度の対象者がトイレでの排泄動作を希望した場合は、複数人で排泄動作を実施する必要があった。これは多くのマンパワーと高い介助技術が必要であり、職員は精神的・肉体的に大きな負担を抱えていた。一方重度の対象者は、「トイレへ行きたいが、職員が忙しそうで言い出せない」、「大変な思いして介助をさせてしまう」等の職員に対する気遣いが大きな負担になっていたとも考えられる。その為、日常生活に欠かせない排泄動作が、職員・対象者双方にとって負担になることが、対象者のQOLを低下させてしまうことだけでなく、腰痛など介助者の疾病につながる可能性があると考えられる。
Hugを導入し日常的に生活の場で活用できたことは、介護技術を問わず一定の介護の質を担保できること、 対象者の希望や排泄リズムに合わせてオムツからトイレ誘導に切り替えることができ、ADL向上と共にQOL向上に繋がったと考えられる。
【おわりに】
Hugを日常的に活用していく取り組みは、一定の成果を得た。今後は排泄動作だけでなく、入浴介助にも積極的に活用し、当施設に合ったHugの日常的な活用を目指していく。新たな介護ロボットの導入にも柔軟に対応していき、さらなる発展に繋げていきたい。
近年、介護人材の不足や職員の腰痛等が喫緊の課題となっており、介護ロボットを活用することで介護現場の負担を軽減し、利用者の自立支援も促進されることが期待されている。当施設では、令和3年度の三重県介護従事者確保補助金(介護ロボット導入支援事業)の申請を実施し、介護ロボットHugを導入した。
Hugとは、高齢者の移乗動作をサポートするロボットである。ベッドから車椅子、車椅子からトイレの便座、といった座位間の移乗動作だけでなく、入浴や排泄時の立位保持にも役立つ。
当施設では、介護ロボット推進委員会を発足し、Hugを日常的に活用するための取り組みをここに報告する。
【目的】
Hugを日常的に活用し、職員の介護負担軽減と対象者の動作負担軽減、ADL・QOL向上へと繋げ、今後の当施設の介護現場での更なる普及を目指していく。
【経過と結果】
介護ロボット推進委員会では、まずは委員がHugの操作方法を学習し操作できるように努めた。介護ロボット推進委員は、介護長・各階フロアの介護職員・作業療法士で構成されており、それぞれの現場で職員がHugの機能を理解し、操作方法・利用方法を習得できるように実演で研修を実施した。特に当施設の認知症対応フロアでは、排泄介助時に積極的にHugを使用し、その結果、一ヶ月ほどで委員以外の職員の活用が増加した。活用が増加した背景は、立位保持が困難であり、重度の片麻痺がある人や介護抵抗が激しい人は、抱えての移乗動作時に職員の精神的・肉体的な負担が大きく、従来の介助方法では困難を極めた。認知症の対象者は、排泄誘導を口頭で理解できず介護抵抗によっての他害もみられるため、Hugを事前に設定し、対象者にその都度じっくり声掛けをしながら立位になり、便座に着座を誘導できることで、楽に排泄介助が実施できた。また、当施設は100床のベッドを有しているため、職員は、多くの対象者の排泄介助を実施している。そのためHug使用によって、「腰痛や肩痛が楽になった」という意見が多く聞けている。
一方で、「Hugの操作方法や利用方法を理解し覚えるのが煩わしい」、「Hugの操作方法の理解ができていないため、設置に時間がかかり、通常の介助方法のほうが楽である」という意見や「ロボット使用で家族が良い気はしないのでは」、「腕や足が痛いと言っているので使わないほうが良いのでは」等の理由によって使用しない職員が一定数みられた。これらの意見に対しては、操作方法の手順や方法を理解してもらえるように、現場で何度も委員が働きかけた。また、「ロボットの使用は家族が良い気はしない」という意見に対しては、各フロアや玄関に介護ロボット使用のポスターを掲示し、家族に介護ロボットの活用をアピールした。ポスターを掲示してからは、多くの家族から「介護ロボットはすごいですね」等と好意的な意見が多く、否定的な意見はなかった。また、「対象者がHug使用時に痛みを訴える」という意見に対しては、Hugの操作方法や利用方法を再度理解したうえで、痛みが出現した場合は対象から除外することにした。
現在は、カンファレンスにて多職種と連携し、実際に排泄動作時に、リハビリ職等の多職種と一緒にHugを使用し、検討してから生活の場で活用することにしている。
【考察】
介護ロボット推進委員会では、Hugを日常的に活用し、職員の介護負担軽減と対象者の動作負担軽減、ADL・QOL向上へと繋がる取り組みを実施してきた。当施設の認知症対応フロアでは、対象者をあらかじめ設定し、委員が毎日他職員と共に操作手順や利用方法を随時伝えながら対象者の介助を実施した。これらロボット推進委員会の継続的な取り組みによって、一部を除いて多くの職員がHugの使用方法を理解し、排泄介助を実施することができるようになった。そして導入から1年以上経過した現在では、職員が継続してHugを使用できており、これまでの取り組みが大きな成果を得たと考える。
衣食住に関わる日常生活動作の中でも排泄動作の介助は、対象者を抱きかかえ深い前傾姿勢をとること、体重支持等による身体的な負担が大きく腰痛を誘引する原因となっている。要介護度が高く重度障害のある対象者は、職員の肉体的な負担が大きいため、オムツでの排泄が多かった。また、尿意がある重度の対象者がトイレでの排泄動作を希望した場合は、複数人で排泄動作を実施する必要があった。これは多くのマンパワーと高い介助技術が必要であり、職員は精神的・肉体的に大きな負担を抱えていた。一方重度の対象者は、「トイレへ行きたいが、職員が忙しそうで言い出せない」、「大変な思いして介助をさせてしまう」等の職員に対する気遣いが大きな負担になっていたとも考えられる。その為、日常生活に欠かせない排泄動作が、職員・対象者双方にとって負担になることが、対象者のQOLを低下させてしまうことだけでなく、腰痛など介助者の疾病につながる可能性があると考えられる。
Hugを導入し日常的に生活の場で活用できたことは、介護技術を問わず一定の介護の質を担保できること、 対象者の希望や排泄リズムに合わせてオムツからトイレ誘導に切り替えることができ、ADL向上と共にQOL向上に繋がったと考えられる。
【おわりに】
Hugを日常的に活用していく取り組みは、一定の成果を得た。今後は排泄動作だけでなく、入浴介助にも積極的に活用し、当施設に合ったHugの日常的な活用を目指していく。新たな介護ロボットの導入にも柔軟に対応していき、さらなる発展に繋げていきたい。