講演情報

[14-O-T001-05]ライフレンズ導入前後の職員負担と入所者のQOLの変化

*金城 達樹1、齋藤 登紀子1、山中 道江1、太田 公昭2、草野 孝二郎1、浅田 章1 (1. 大阪府 介護老人保健施設 すこやか生野、2. パナソニックホールディングス株式会社)
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職員の負担の軽減と入所者のQOLの向上を目的にライフレンズの導入を行い、その成果について検討した。ライフレンズ導入前後の業務を比べ、夜間巡視の方法の変更による巡視時間の比較。スタッフへの心身の負担感についてのアンケート。入所者の睡眠改善度の比較。上記の3点を行った。その結果、スタッフの心身の負担の軽減、入所者の睡眠改善がデータ上で見られた。ライフレンズ導入により良い成果が出た為に報告した。
「はじめに」
 当施設は入所(短期入所含む)定員51名の施設である。施設構造として入所フロアが、3フロア各17床で分かれている。2023年の1月にライフレンズを全床導入し運用を始めた。
 ライフレンズとは、シート型センサーとビューカメラの組み合わせた見守りシステムであり、利用者の状況を、リアルタイムで遠隔から確認することができる。また、ベッド上の動きや拍動・呼吸による微細体動を検知し、安否確認やベッドからの離床、睡眠などの生活リズムを把握することができる。
「目的」
 職員の負担軽減と入所者のQOLの向上を目的にライフレンズの導入を行った。その成果について検討した。
「方法」
 1:ライフレンズ導入後、夜間巡視の方法を、訪室からライフレンズのビューカメラに変更した。3フロア、各17床の51床を、徒歩で訪室する場合とビューカメラにて行う場合の時間を測定し、それを比較した。
 2:ライフレンズ導入前から務めていた職員に対してスタッフの心身の負担の変化についてアンケートを通して調査した。アンケートの実施内容としては日中、夜間のライフレンズの使用頻度。導入前後での変化のイメージ。
 3:ライフレンズ導入前から入所されている利用者8名を対象とし、季節の影響も少なくする為に2023年の3月1日~3月31日か4月1日~4月30日と2024年の3月1~3月31日の夜間(20時~8時)の睡眠データから、その平均をとり1日の睡眠時間を比較した。なお巡視の方法を訪室からビューカメラへ変更したのは2023年の4月以降である。
「結果」
 1:徒歩で訪室する場合、51床で約7分。ビューカメラにて確認する場合、約1分30秒。巡視1回について約5分30秒の時間節約になっている。また、夜勤帯は2時間おきに巡視を行っており巡視回数は7回となる為、1回の夜勤で約38分30秒、時間節約できた。
 2:使用頻度のアンケートでは日勤、夜勤共に90%以上が良く利用する、たまに利用すると回答しており、使用率は高かった。残りの10%に関しても、ライフレンズを使う頻度が少ない職員のみであった。
 変化のイメージについては利用者の状況把握のしやすさや介助のタイミングの把握、見守り時間の変化については、90%の職員が改善された。他にも転倒・転落事故に対する不安感や急変に対する不安感でも、70~80%の職員が改善されたと回答している。またアンケートのコメントには「ごそごそと動き始める時点で居室に訪室できるために非常に役立っている」や「ライフレンズがなければかなり不安である」等の意見もあった。
 一方で、夜勤業務での肉体的負担や精神的なストレスが悪化したと回答した職員が80~90%だった。先ほどの回答と矛盾しているが、アンケートにて機器操作の作業が増え、負担が大きくなったと感じている職員が80%いたことを考えると、機器の操作や使い方に未だに問題があることがうかがえる。アンケートのコメントにも「スマートフォンでビューカメラを見る際に毎回パスワードを入力して画面を開くのが面倒」や「スマートフォンの画面が表示されている時間が短すぎる」等、操作方法等がわからない職員には負担になってしまっていたと考えられる。
 3:各利用者の夜間(20時~8時)の睡眠データの平均時間は
A様8’46”⇒9’22” B様7’57”⇒9’48” C様4’43”⇒6’35” 
D様7’17”⇒9’22” E様8’05”⇒9’35” F様8’34⇒10’12”
G様8’24”⇒8’33” H様8’54”⇒9’06” 平均7’50⇒9’22”となった。
 すべての利用者で睡眠時間が増えており、8名の平均でも1時間32分も増えている結果となった。睡眠時間があまり変化の無い利用者もいたが、最も変化の大きい利用者は2時間5分増えていた。
 時間毎の比較を行うと、2時間おきの巡視時に2023年のデータでは利用者が起きてしまっていたが、2024年のデータではしっかりと入眠されている利用者がいたことも確認できた。
 また、対象の利用者へのヒアリングを行うと、「どこかから見てくれていると思うと安心」や「夜間に人が来ると目が覚めてしまうので来る回数が減るのはいいこと」等の良い意見があった。一方で「しかたないこととしても、トイレをしているところを見られるのは嫌」や「自分のやっている事を見られていると思うと意識してしまう」等の否定的な意見もあった。
「考察」
 上記のデータより職員の心身の負担の軽減が行え、空いた時間で他の業務を行えるようになり、ゆとりをもった業務が行えるようになった。また、利用者の夜間の良眠を促せ、日中の覚醒や活動時間の向上にもつながったと考えられる。ライフレンズ導入目的の職員の負担の軽減とQOLの向上を達成でき、ライフレンズの有用性が示されたと考える。
 一方で導入によって操作方法や機器の使い方等に慣れるまでに時間がかかり、そのための時間の中で肉体的、精神的な負担が増えてしまったことも見られた。また、導入から1年半程たった今でも操作に慣れていない職員もいることに気づかされた。
「おわりに」
 人材不足が続いていくとされている介護業務の中で、ライフレンズのようなICTが有用であることが分かった。ライフレンズの機能をさらに理解して今後、より有効に活用したい。