講演情報

[14-O-T002-02]介護施設における見守りカメラ活用による効果

*東 良憲1 (1. 大阪府 社会医療法人愛仁会介護老人保健施設しんあい)
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介護施設における見守りカメラの導入効果を検証するため、対象者12名に対し、カメラ映像を活用した見守りを実施した。その結果、職員33名のうち88%が負担軽減を実感し、転倒転落による骨折事故の予防にも効果を示した。ICTの活用により、職員の業務効率化による負担軽減と利用者の安全確保、そして、ケアの質向上が可能となり、人材不足に悩む介護業界の課題解決に寄与する可能性が示唆された。
【はじめに】
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少が懸念される中、介護業界では、職員の過重労働やストレスが深刻で、離職率が高いことが問題となっている。また、高齢者の転倒や転落による骨折事故はどの施設でも永続的な課題であり、施設の安全対策の強化が求められている。当施設では、職員の負担軽減および利用者の転倒転落による骨折事故を予防するため、見守りカメラを導入した。導入後、転倒転落事故の事実確認による検証が可能となり、また、訪室回数の減少による職員の負担軽減が図られたため、これまでの取り組みを報告する。

【目的】
見守りカメラを導入し、訪室回数減少による職員の負担軽減と、転倒転落による骨折事故の予防を図る。

【対象者】
・離床センサー等により訪室回数の多い利用者。
・転倒転落リスクの高い利用者。
・呼吸状態の確認や嚥下状態にリスクのある利用者 計12名。

【倫理的配慮】
見守りカメラはリアルモードとプライバシーモードがあり、当施設ではプライバシー保護の観点から当初はプライバシーモードを選択したが、視認性の問題からリアルモードに移行した。以降、特別な理由(居室で身体をご自身で拭かれるご利用者等)や意向がない限りはリアルモードで運用しており、家族には設置前に倫理的配慮について説明し、同意書を交わしている。今回の発表では、個人が特定されないように個人情報保護について配慮している。

【方法】
1.見守りカメラの異常検知、もしくは離床センサーが反応した際には映像を確認し、必要に応じて訪室した。訪室回数の減少効果については、職員33名を対象にアンケート調査を実施した。
2.施設独自の転倒転落アセスメントシートを活用し、危険度2が14点以上、危険度3が40点以上の利用者に見守りカメラを設置した。実際に転倒があった場合には見守りカメラの映像を確認し、原因を追究後に必要な対策を講じた。
3.ICT委員会を設置し、定例会議に業者担当者もオンラインで参加してもらい、使用状況や機器の使用用途について情報共有を行い、質問や課題に対して改善を図った。

【結果】
1.職員アンケート調査では、88%が、負担が軽減したと回答した。訪室回数の減少と映像による状況確認により、職員の心理的負担が軽減されたことが示された。
2.見守りカメラで映像を確認することで、原因追及や具体的な対策を立案することができ、転倒転落による骨折事故を予防することができた。
3.定期的に業者担当者と情報共有を行うことで、機器の使用用途や設置場所等において助言を受け、改善を図ることができた。

【考察】
見守りカメラの導入は、職員の負担軽減と転倒転落事故の予防に効果的であることが示された。職員33名のうち88%が負担軽減を実感し、身体的・心理的負担の軽減につながった。これは介護業界の人手不足や高い離職率の課題に対する一つの解決策となる可能性がある。また、転倒転落事故の予防においては、映像を活用することで原因追及や具体的な対策立案が可能となり、個々の利用者に適した予防策を講じることができた。これは利用者の安全を守る施設としての役割が果たされていることを示している。
導入直後は職員間で見守りカメラの使用に関して、定着を図ることが難しく、認識の差がみられたが、少しずつ効果を実感できたことで、職員間で見守りカメラ使用に関して定着が図れている。また、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)陽性者が増加した場合、居室隔離が必要な利用者に対して、居室内の見守りに見守りカメラを活用することができ、見守りカメラは様々な場面で活用することができると考えられる。
見守りカメラの導入は、単に技術的な改善に留まらず、介護サービスの質全般を向上させる手段として評価されるべきであり、今後もその効果の検証を行うことで、より安全で効率的な介護環境の構築を目指すことが求められている。

【おわりに】
今回の取り組みでは、見守りカメラの導入が介護現場における職員の負担軽減と利用者の転倒転落による骨折事故をどのように予防したのかを示したものである。介護業界では少子高齢化による人材不足に対し、生産性を向上するため、ICTを活用した効率的なケアの提供が求められている。他の介護施設におけるICT導入の一助となることを期待し、今後も高度なカメラシステムやAI技術の発展に注目しつつ、利用者の尊厳とプライバシーを守りながら質の高い介護サービスを提供していきたい。