講演情報

[14-O-T002-03]見守りカメラの活用と今後の課題

*湯川 美耶子1、堀井 雄介1、川崎 翔太1、山本 美智子1 (1. 愛知県 老人保健施設サンタマリア)
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介護界にロボットやAIが普及し、介護の負担軽減が図られ、働き方が大きく変化しつつある。これまで、利用者のコール、離床センサーのコール等で起きている事態を頭の中で組み立て居室に駆けつけ対応する。これを何度も業務時間内に繰り返す。それでも転倒事故は防ぎきれず、介護スタッフの心身の負担は非常に大きい。当施設に導入された見守りカメラ設置により、利用者、職員双方に大きなメリットがあったという結果が得られた。
【はじめに】
介護業界にもロボットやAIが普及しはじめて働き方も大きく変わろうとしている。
それまでは一度に複数のセンサーマットが反応するが、どれも優先度は変わらない。わかっているのはセンサーマットを設置した居室で何かが起こっていること。起きているであろう事態を想定して瞬時に優先順位を頭の中で組み立てる、駆けつけ、対応し次へ向かう。これを業務時間内(特に夜勤)に何度も繰り返す。それでも防ぎきれない転倒。介護スタッフの心身の負担は非常に大きいものであった。当施設も令和4年、施設の大規模修繕に伴い、見守りカメラが導入された。導入後、職員へのアンケート調査を実施し、利用者にも職員にも大きなメリットがあったという結果が得られたのでここに報告する。
【当施設における見守りカメラの使用方法】
見守りカメラとは、居室内の利用者の様子を手持ちのiPhoneにて見ることができる。当施設では、見守りカメラの設定方法として3種類挙げられる。
1つ目は、センサーマットやベッドサイドセンサーと見守りカメラの両方を設置する方法である。立ち上がりが頻回な利用者や、転倒リスクの高い方に対し、センサーが反応した際に見守りカメラに様子が映し出される設定である。
2つ目は、見守りカメラ内の設定で、利用者が起き上がった際、ベッドからあらかじめ設定した特定線を利用者が横切る動作を行った際、利用者が身体を起こし特定線を横切った際の3種類の設定方法がある。
3つ目は、各居室にて利用者から職員に対して行なって欲しいことや、身体的異常が発生した時、緊急時以外でもナースコールを鳴らした際に見守りカメラが設置されていることで映像にて確認ができる設定である。
【アンケート結果】
業務の効率が上がったことや、事故が起きる前に防ぐことができた等の意見、感想が多く、導入してよかったという100%の回答を得た。
具体的な意見として、
・杖や歩行器を使用せずに居室から出ようとされているところを確認してすぐに対応したので転倒を防げた。
・おむつ交換中に遠くの居室でセンサーマットの反応があったがカメラで様子を確認して緊急性はないと判断して様子を見ながら交換を終えて居室に向かうことができた。カメラのなかった時にはとにかく中断して駆けつけなくてはならなかったので、効率よく動けると思う。
・ポータブルトイレの使用動作は安定しているので訪室の必要はないがそのまま歩き出して座り込むなどのリスクの高い時だけ駆けつけることができる。
・転倒リスクの高い利用者がベッドで端座位になっておられると側を離れることができなかったがカメラの映像を見ながら近くで他の仕事をすることができる。
・緊急性の優先順位をつけることができ、最も必要なところに駆けつけることで転倒を回避することが可能になった。
・転倒歴のある新規の利用者の動きを把握することができた。
・新型コロナウイルスなど感染症発生時は、感染者の居室をカメラで見守ることで都度立ち入る必要がなく、必要最小限の入室で対応することができた。
・何度もセンサーマットが反応するため、その都度訪室することで段々と不穏になる利用者を、訪室せずに見守りカメラで見守ることで落ち着いていただくことができた。
しかし機械ならではの弱点に対する意見として、カメラが反応しない時がある、複数のカメラやセンサーマットが同時に反応すると画像が出ない事がある、1台のiPhoneで1つのコールしか対応できないため、複数のiPhoneを持ち歩かないといけない等があがった。
【考察】
見守りカメラは100%のスタッフが導入して良かったと答えていることからも、少人数のケアで多くの利用者の安全を確保するために非常に便利なツールであることは間違いない。転倒が起きてしまった際には、これまでの場合、原因が明確なケースと、なぜこうなったのかわからないケースがあったが、録画機能を使う事で原因を検証し、ベッド位置を変更する、利用者に合わせた動線を確保するなどの対策を講じ、同じ原因による転倒は回避できていることからも導入によるメリットは大きいと言える。しかし、過信すると思わぬところから新しいリスクが生じることがある。手軽に状況確認ができるということで、少しでも不安のある利用者に「とりあえず」設置した結果、多くの反応が一度に重なり所持していたiPhoneでは検知できず、結果として立ち上がりに気が付けず転倒事故に繋がってしまった事例もあった。この反省を踏まえ、設置台数が多いほどリスクは高まることを認識し、本当に必要かを職員ひとりひとりが考えることができるようにになった。実際に「この利用者にはもう不要ではないか」という意見が職員から積極的に出るようになり、随時カンファレンスで評価し、施行期間を設けたうえでカメラを取り外す事例も増加しつつある。設置台数をほぼ一定に保てるようにすることで、過剰なコールの防止にもつながった。機械の目、人の目の両方をバランスよく使い互いの弱点を補って仕事をする事で利用者にも介護スタッフにもより良い環境が作り出せるのではないかと考える。
【課題】
今回マニュアルを再読し、まだ活用できていない機能や一部の職員だけが知っている機能が存在することがわかった。カメラの設置や細かい設定など取り扱いの技量は職員によって差がある。せっかく導入した見守りカメラを全ての職員が必要な機能を熟知し、最大限に活用できるようにすることが今後の課題である。