講演情報
[14-O-T002-04]ICT機器導入に向けた改善活動と成果【生産性向上に向けた取り組み】
*石原 輝己1 (1. 広島県 社会福祉法人新市福祉会介護老人保健施設ジョイトピアしんいち)
【目的】職員不足解消・身体・精神的負担軽減を行う為、ICT機器導入する事が決まったが、職員の導入への不安が強くなった。【方法】昨年、介護ロボットの開発・実証・普及のプラットホーム事業を活用した。【結果】業務改善プロセスを学び、ゆとりが生まれ、職員の改善意識が向上した。【考察】介護の価値を上げるには業務改善にて現場の余力を確保する事が必要であり、土台整備が出来てその向こうに介護の価値に繋がると考える。
【目的】ICT導入の経緯としては、早朝・夜間の職員体制が限られた中で65名の入所者様を介護している中で、目の行き届かない事があり、月間でヒヤリハットが何件も出ている現状や、突発業務が発生する事で、記録入力の時間がなく、定時での退社が難しい現状があった。現場の職員不足解消・身体的・精神的負担の軽減を行う為に、ICT機器導入(ナースコール・見守りセンサー)する事は決まっていたが、「使いこなせない・できない」といった声が現場から聞かれていた。そこで、令和5年度介護ロボットの開発・実証・普及のプラットホーム事業に応募し、伴走支援して頂く事が決定。そこから改善活動が始まった。【方法】業務アドバイザーとの濃密な連携を図り、業務改善・導入プロセスを学び、PDCAサイクルにのっとり改善活動を行う事となった。始めに、生産性向上の取組を推進するにあたって、プロジェクトチームを結成する。プロジェクトリーダー(以下リーダー)に任せるだけでなく、経営層(トップ層)も関与する構成にした。改善活動開始するにあたり、経営層(トップ層)から、取組開始のキックオフ宣言を行い、取組の意義・目的を職員へ周知した。当施設の課題として、センサーやタブレットを入れることは決定しているが、業務の課題がどこにあるかの見える化がまだできていない事、離床用センサーを多用した結果、コールが多くなっており、職員がすぐに対応できていない状態、誰がいくか役割が明確となっていない事や、記録量が多く、基本的に紙に書いて、紙で情報共有し、かなりの転記作業があると、複数のアンケート・職員と対話を行い課題分析を行った。実行計画では、多様な課題がある中で、優先順位をつけ、タブレットでの記録入力に的を絞った。今後ナースコール改修に伴い、職員がIT機器(スマートホン)を必ず使用していかなければならない。まずは、機器が使えるという実感をしてもらう為に食事摂取量の転記を廃止し、直接タブレットに打ち込めるようになる為の計画を作成した。成果が出たか見える化する為に、評価項目も作成。改善活動前のアンケート結果と改善活動後のアンケート結果をもとに評価を行う。改善活動で実施した事として、タブレットを活用するための食事摂取量記録の業務手順書作成、タブレットの操作手順書作成を行う。職員1人ひとりに手順書の周知を行い、職員から、分かりにくい部分等の声があがるたびに、手順書の修正を行い、誰もが使えるようになるよう、一緒に入力回数を重ねて覚えてもらった。また、対話の中で出た意見で、すぐに変えれる事については、同時進行で、業務改善を行った。内容としては、申し送りの簡略化・おむつ交換の順番変更・パットの見直しに伴う業務負担の軽減と排泄ケアの質向上・昼食介助者の増員とそれに伴う変更である。【結果】導入の成果1は、記録時の身体的・精神的しんどさについて、導入前と比べて減少した。また、情報共有についても、手順やツールが明確になり、転記作業が削減された。今まで行っていた、アナログの部分を改善したことにより、利用者と関わる機会が増えたという結果に繋がった。導入の成果2では、テクノロジーを導入し成果を出せているという実感が増加した。また、テクノロジーに対する期待が高まり、前提として業務整理が大切であるという実感も増加した。導入の成果3では、テクノロジーに対する不安が削減した。また、業務に追われていると感じる職員も減少した。ナースコール・見守りセンサー導入の流れについて、映像会話型ナースコールシステム・睡眠見守りセンサーの導入に伴い、事前に業者より取り扱い説明書を取り寄せ、プロジェクトメンバーで熟知した。そして、メーカーの取り扱い説明書をそのまま使うとわかりにくい職員がいたことから、取り扱い説明を独自で作り直した。その後、業者に独自で作成した取扱説明書を見てもらい、操作に落ち度がないか確認してもらった。職員へ周知する為、全体事前説明会を開催した。導入当日に業者からの取り扱い説明会を実施してもらい、稼働開始となった。導入の成果として、伴走支援を経験して、職員一人ひとりの『気づき』の大切さと『対話』を通じて業務へ反映していくプロセスの重要性を経験できたことで、導入段階で「私にはできない」といった消極的な意見が出なくなった。また、以前と比べて変化への抵抗感が削減し、前向きな声があがるようになった。ナースコールの呼び出しがスマートホンで確認でき、居室内での状況が映像として確認できる為、居室への訪室回数が削減した。【考察】今回行った改善活動は、現場のマネジメント構築とテクノロジーの活用によって、現場の余力・変化の実感・創造的な活動時間の確保である。業務改善や、ICT機器を導入すると、介護の価値が上がるとは、一概に言えない。まずは、土台を整備する事で現場の余力ができ、職員が働きがいを感じる事で、利用者へのより良いケアを提供する機会に繋がる。その準備段階を終えてから、介護の価値について考えていかなければならないと考察した。【まとめ】今回伴走支援を経験して、対話を重ね小さな成功体験を積むことが、変化への抵抗感を軽減することが分かった。小さな成功体験を積んだことで、職員から「早く〇〇な業務も変えていこう!」という前向きな声が出るようになる。また、現場に合わせた手順書を作成する事で、ICT機器を用いた入力を行うことにスムーズに移行できた。一人ひとりの『気づき』を集約し、『対話』を通じて、深堀をする事で、どの部分の棚卸が必要であるかが見えた。業務へ反映していくプロセスの重要性を経験するきっかけになり、「とりあえずやってみる」といった、トライ&エラーの気持ちを持ち続け、今後も業務改善に取り組んでいく。職員との対話を密に行い、組織の風土作りに繋げて、介護の価値を高めていきたい。