講演情報

[14-O-T002-06]ICT機器を活用した業務改善に向けて~カメラ付見守りセンサーを導入による効果~

*嶋崎 隆志1 (1. 福岡県 あやめの里)
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介護現場において深刻な人手不足は全国的な課題となっており、介護分野においてもICT化の導入促進が図られている。今回、当施設においてカメラ付見守りシステムを導入したことで、転倒などの事故予防や事故後の検証、及びケアの質の向上や介護負担の軽減が図れるなど一定の効果が得られたため報告する。
【はじめに】現在、介護現場において深刻な人手不足は全国的にも喫緊の課題となっており、介護分野においてもICT化の導入促進が図られている。当施設においても人手不足が慢性化しており、限られた人数の中で介護職員の負担軽減を図りながらご利用者様の安全を確保し、より質の高い介護サービスを提供することは、大きな課題となっている。そこで今回、県のICT導入支援事業費補助金を活用し、カメラ付見守りシステムを導入した経過について報告する。
【現状の問題点】当施設の構造は5階建てで1階にデイケア併設、入所定員は100名で2階38名、3階36名、4階26名と3フロアーに分かれている。そのため、特に夜間帯において各フロアーを1名で対応する時間帯も多く、ご利用者様の安全確保において見守りが行き届かない場面も多く見られた。ナースコールと連動した離床センサーも設置していたが、台数も限られておりよりリスクの高いご利用者様に使用しているため、安全確保のため頻回に訪室を行っていた状況。職員が居室内でのご利用者様の様子が確認できないため、離床センサーの通知の度に訪室していたが、誤作動や寝返りなど少しの体動で反応していることも多く、空振りとなることも多かった。そのため、スタッフは特に夜勤帯において肉体的・精神的負担を抱えており、カメラ付見守りセンサーの導入を検討した。
【導入の経過】システムの導入に際しては、複数社のトライアルを実施した。システム選定にあたり基準としたのは、1)2010年4月から採用している、介護ソフトと連携していること。2)ナースコールも同時に入れ替えを行うため、ナースコール機器とも連携していること。3)トライアルを行った上で他社との比較によるメリット・デメリットの検証。以上の点を踏まえてシステムの検討を行った結果、2024年4月よりカメラ付見守りシステムを全100床に導入した。
【導入後の経過】導入したシステムは荷重センサーとなっており、ご利用者様の体重移動により、睡眠・臥床・動き出し・起き上がり・端座位・離床・ベッド戻りの7つの段階で、状態に応じて色分けされたアイコンで表示が可能となっている。通知のタイミングもご利用者様の状態に応じた設定が可能であり、通知の切り替えについてもスマートフォンからの操作で簡単に設定変更が可能となっている。アイコンも一覧で表示されるため、複数のご利用者様の状態をひとめで確認することが出来るようになった。訪室の優先順位の判断や起き上がりの予測なども立てやすく、必要時にカメラで居室での様子を目視で確認することで、無駄な訪室を減らすことができ、特に夜間帯においてスタッフの肉体的・精神的負担や不安が軽減された。また、以前は居室で転倒した時の詳しい状況が分からないことが多く、推測を踏まえた対応策となることも多かったが、転倒時の詳細な状況を映像で確認し検証できるため環境調整も含めた予防対策を具体的に立てることが出来るようになった。さらに、時間帯ごとの活動状況がグラフ表示されるため、生活リズムや睡眠状況の把握ができ、日中の活動の見直しを行うとともにデータをもとに主治医へ報告し内服調整を行うなどよりきめ細やかなケアの改善へとつなげることが出来るようになった。
【考察】今回、カメラ付見守りシステムを導入したことにより、導入当初は操作に慣れず混乱が生じた場面もあったが、困りごとや問題点を聴取しどのように運用していくべきかを検討し困りごとを解消していくことで徐々に適切に運用することができたと考える。その結果、ケアの見直しや職員の肉体的・精神的負担を軽減することができたと思われる。今後は生活リズムグラフや統計データを活用し、個別の状況を分析することで、ゆとりのある介護・ご利用者様の個別性を重視したきめ細かいケアの改善へとつなげていきたい。
【結語】今後、介護業界における人手不足はますます進行しICT機器も発展していくと思われる。どのようなICT機器もそれを扱うスタッフが機能を正しく理解し、適切に運用する必要がある。ICT機器はあくまでも補助的なツールとして捉え、機能を最大限に活用しながらケアの質の改善や介護負担の軽減へとつながっていきたい。