講演情報
[14-O-D001-03]全員主役の運動会~私たちは今をとても大切に生きている~
*渡辺 朱菜1、福田 六花1、はまなす職員 一同1 (1. 山梨県 介護老人保健施設はまなす)
運動会というひとつの行事を通し、認知症利用者様と“本気”で向き合いながら、二か月間かけて準備を行った。その準備、練習の過程で得たものや感じたものがあり、利用者様と職員がひとつになり達成感や、笑顔溢れる時間を共有できたため、ここに報告する。
【はじめに】
当施設の認知症専門棟には、40名の利用者様が生活している。日々の生活を安心、安全に穏やかに過ごしていただくために、様々な行事やレクリエーションを提供してきた。その中で個々に合った対応の大切さ、難しさを痛感し、試行錯誤してきた中で、運動会というひとつの行事を通し、利用者様と“本気”で向き合いながら、準備、練習の過程で得たものや感じたものが様々あった。利用者様と職員がひとつになり達成感や、笑顔溢れる時間を共有できたため、ここに報告する。
【方法】
1)企画:2か月前より日程、競技内容、プログラムの作成。
2)必要物品の作成:小道具、フロア飾り、メダル、ポスターの作成。
3)競技・応援練習:パン食い競争、大玉転がし、ボール送りリレー、応援合戦をレクリエーションの時間を利用し、毎日実施。
4)職員出し物の練習:部署関係なく多職種で有志を募り、ソーラン節の踊りを2か月前より利用者様に見てもらいながら練習。
5)運動会当日:フロアの飾り付け、小道具の使用、ハチマキ、法被着用で雰囲気を出す。
6)振り返り、掲示物の作成:参加した職員から感想等を集め、今後に活用。当日撮影した写真を掲示
【結果】
「利用者様にやりがいを持っていただき、笑顔になっていただく」ことを目標に良いものを作りたいと様々な意見を出し合いながら行事担当者を中心に企画した。
準備期間では、小道具、フロアの飾りの作成を少人数から始め徐々に他の利用者様に声かけをしていき、最終的に多くの利用者様が積極的に関わってくれた。利用者様同士の会話が徐々に増え関係性は増していった。職員との会話の中では、その人の人生観や得意なこと、生活歴など気付けなかった利用者様の新しい一面を知ることもできた。一方で何をするのだと文句を言う方や他利用者の役割を奪ってしまう方などトラブルも見られた。さらに、話に夢中になって作業が止まってしまった方、逆に作業に夢中になり会話が減ってしまう方も見られた。準備が進み、フロアの飾り付けが増えていくと、興味を示し、楽しみにしてくれる声が多く聞かれ、利用者様の前向きな気持ちがみられた。
競技、応援合戦の練習では、普段活動量が減っていた利用者様が自主的に体を動かし、大きな声を出しながら、毎日一生懸命に取り組む姿が見られた。しかし必要以上に身体を動かし疲れてしまう方も見られたが、結果、ADLの向上、夜間の良眠につながった。
職員のソーラン節の練習では、曲が流れると何が始まるのかと興味を示し、自然と踊りだす利用者様や、掛け声に合わせ声を出す利用者様、職員の動きを見て、見様見真似で手足を動かす利用者様もいた。最初は乗り気ではない職員もいたが、熱心に取り組む行事担当者や利用者様の姿を見て意識が変化し、気付けば多くの職員が運動会の成功を目指し、一致団結することができた。
当日、40名すべての利用者様が集合し、馴染みの職員と一緒に“本気”で運動会に取り組んだ。最初から最後まで、誰ひとり途中で抜けることなく利用者様全員が参加し、夢中になれるほど楽しい時間を過ごせた。今までにない盛り上がりを見せ、利用者様と職員がひとつになる事が出来た。
その後、運動会の写真を施設内や玄関に掲示し、御家族や多くの方に見ていただき、喜んでいただくことができた。
【考察・まとめ】
認知症には様々な症状があり、対応が難しい。日々、苦悩の連続である。
今回、運動会というひとつの行事を通し、変化の少ない施設生活の中で、利用者様のやりがいや役割意識を見出すことができた。また、普段とは異なる側面から利用者様と関わることで、今まで気づくことができなかった意外な一面を発見し、職員の適宜な声掛け、作業の見極めなど様々な支援を行うことで認知症状の緩和につながると考えた。
私たち職員も、利用者様のたくさんの笑顔、穏やかな様子を見ることができ、とても嬉しく感じ、楽しく幸せな時間を利用者様からもらい、やりがいと達成感を得ることができた。
今後も様々な行事やレクリエーションを通し、利用者様の施設での生活が幸せなものになるよう、利用者様とともに歩み、寄り添っていきたい。私たち職員は家族の代わりにはなれないが、コロナ禍以降家族とのかかわりが減ってしまった分、利用者様に近い存在となり、“本気”で関わっていきたいと思う。そして、施設内だけでなく、利用者様が「はまなす」で明るく、楽しんでいる様子や活動内容を外へ広く家族や地域へ発信していきたい。
数分後には忘れてしまうかもしれない。だからこそ今の一瞬一瞬を楽しく、笑顔で過ごしてほしい。それが私たち職員としての願いだ。
当施設の認知症専門棟には、40名の利用者様が生活している。日々の生活を安心、安全に穏やかに過ごしていただくために、様々な行事やレクリエーションを提供してきた。その中で個々に合った対応の大切さ、難しさを痛感し、試行錯誤してきた中で、運動会というひとつの行事を通し、利用者様と“本気”で向き合いながら、準備、練習の過程で得たものや感じたものが様々あった。利用者様と職員がひとつになり達成感や、笑顔溢れる時間を共有できたため、ここに報告する。
【方法】
1)企画:2か月前より日程、競技内容、プログラムの作成。
2)必要物品の作成:小道具、フロア飾り、メダル、ポスターの作成。
3)競技・応援練習:パン食い競争、大玉転がし、ボール送りリレー、応援合戦をレクリエーションの時間を利用し、毎日実施。
4)職員出し物の練習:部署関係なく多職種で有志を募り、ソーラン節の踊りを2か月前より利用者様に見てもらいながら練習。
5)運動会当日:フロアの飾り付け、小道具の使用、ハチマキ、法被着用で雰囲気を出す。
6)振り返り、掲示物の作成:参加した職員から感想等を集め、今後に活用。当日撮影した写真を掲示
【結果】
「利用者様にやりがいを持っていただき、笑顔になっていただく」ことを目標に良いものを作りたいと様々な意見を出し合いながら行事担当者を中心に企画した。
準備期間では、小道具、フロアの飾りの作成を少人数から始め徐々に他の利用者様に声かけをしていき、最終的に多くの利用者様が積極的に関わってくれた。利用者様同士の会話が徐々に増え関係性は増していった。職員との会話の中では、その人の人生観や得意なこと、生活歴など気付けなかった利用者様の新しい一面を知ることもできた。一方で何をするのだと文句を言う方や他利用者の役割を奪ってしまう方などトラブルも見られた。さらに、話に夢中になって作業が止まってしまった方、逆に作業に夢中になり会話が減ってしまう方も見られた。準備が進み、フロアの飾り付けが増えていくと、興味を示し、楽しみにしてくれる声が多く聞かれ、利用者様の前向きな気持ちがみられた。
競技、応援合戦の練習では、普段活動量が減っていた利用者様が自主的に体を動かし、大きな声を出しながら、毎日一生懸命に取り組む姿が見られた。しかし必要以上に身体を動かし疲れてしまう方も見られたが、結果、ADLの向上、夜間の良眠につながった。
職員のソーラン節の練習では、曲が流れると何が始まるのかと興味を示し、自然と踊りだす利用者様や、掛け声に合わせ声を出す利用者様、職員の動きを見て、見様見真似で手足を動かす利用者様もいた。最初は乗り気ではない職員もいたが、熱心に取り組む行事担当者や利用者様の姿を見て意識が変化し、気付けば多くの職員が運動会の成功を目指し、一致団結することができた。
当日、40名すべての利用者様が集合し、馴染みの職員と一緒に“本気”で運動会に取り組んだ。最初から最後まで、誰ひとり途中で抜けることなく利用者様全員が参加し、夢中になれるほど楽しい時間を過ごせた。今までにない盛り上がりを見せ、利用者様と職員がひとつになる事が出来た。
その後、運動会の写真を施設内や玄関に掲示し、御家族や多くの方に見ていただき、喜んでいただくことができた。
【考察・まとめ】
認知症には様々な症状があり、対応が難しい。日々、苦悩の連続である。
今回、運動会というひとつの行事を通し、変化の少ない施設生活の中で、利用者様のやりがいや役割意識を見出すことができた。また、普段とは異なる側面から利用者様と関わることで、今まで気づくことができなかった意外な一面を発見し、職員の適宜な声掛け、作業の見極めなど様々な支援を行うことで認知症状の緩和につながると考えた。
私たち職員も、利用者様のたくさんの笑顔、穏やかな様子を見ることができ、とても嬉しく感じ、楽しく幸せな時間を利用者様からもらい、やりがいと達成感を得ることができた。
今後も様々な行事やレクリエーションを通し、利用者様の施設での生活が幸せなものになるよう、利用者様とともに歩み、寄り添っていきたい。私たち職員は家族の代わりにはなれないが、コロナ禍以降家族とのかかわりが減ってしまった分、利用者様に近い存在となり、“本気”で関わっていきたいと思う。そして、施設内だけでなく、利用者様が「はまなす」で明るく、楽しんでいる様子や活動内容を外へ広く家族や地域へ発信していきたい。
数分後には忘れてしまうかもしれない。だからこそ今の一瞬一瞬を楽しく、笑顔で過ごしてほしい。それが私たち職員としての願いだ。