講演情報

[14-O-D001-05]朝スッキリ!夜ぐっすり!~アロマで生活リズムを整える~

*後藤 有希1、中林 未央1、佐藤 知幸1 (1. 神奈川県 医療法人社団協友会 介護老人保健施設ハートケア左近山)
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認知症の症状により昼夜逆転などの睡眠障害が見られている利用者に対し、アロマセラピーを用いた取り組みを実施。日中は心身の活性化、夜間は安眠効果のあるアロマを生活の中に取り入れ、覚醒状況や入眠状況を測定した。半数が昼夜逆転の改善がされており、睡眠の質向上に繋がっていた。しかし、一部の利用者は夜間の睡眠状態に改善が見られず、その方の心身状況にあったアプローチが必要であるということが課題として残った。
[1]はじめに 認知症を発症すると神経系の変性や活動量の低下により覚醒と睡眠のバランスが崩れ、睡眠リズムが不規則になると言われている。当施設入居者様にも、認知症の症状により不眠や昼夜逆転などの睡眠障害が見られている。また、コロナ禍における外出や他者交流の機会の減少、レクリエーションの内容制限によって、活動量や日常生活における刺激が少なくなっており、睡眠障害の深刻化、また不眠に対する対応に困ってしまうといった場面も見られる。そこでコロナ感染症に対する制限が完全に緩和されていない状況下でも、リフレッシュ効果や睡眠の質の向上など心身への刺激が期待できるアロマセラピーに着目し、睡眠障害に対するアプローチを実施した。[2]研究目的平成28年度に同様の研究を実施、睡眠時間の増加効果を得たが、日中も傾眠傾向にあったことが課題として残った。今回、昼夜共にアロマセラピーを導入する事で、日中の覚醒時間、夜間の睡眠時間の増加を目的とした。[3]研究内容研究期間:2023年7月1日~9月30日対象者:夜間不眠傾向や日中傾眠している姿が見られる認知症利用者4名    倫理的配慮として、研究対象者及びご家族様に本取り組みを説明し、同意を得た。[4]研究方法1.日中のアプローチ9時と13時にロールオンタイプのアロマオイルを香りが自然と届く首筋や耳元に塗布。アロマオイルは、レモンやライムなど心身を活性化させる効果のある物を使用。2.夜間のアプローチ17時にスプレータイプのアロマオイルを枕の四隅に散布。アロマオイルは、オレンジやベルガモットなど、神経バランスを整え、安眠効果が期待できる物を使用。3.評価覚醒状況を観察し、10時・11時・13時・16時・夜間巡視時にチェック表に記載。[5]結果A様【実施前】日中は活動への意欲が低く、居室にて休まれていることが多かった。夜間帯も度々覚醒している様子が見られた。【実施後】取り組みがAさんのルーティンにもなり、日中の活気が増え、覚醒率が94%までアップした。しかし、夜間帯の入眠率には変化がなかった。B様【実施前】日中は車椅子上で休まれていることが多く、声かけしてもすぐに寝入ってしまう姿が見られていた。夜間帯は「おなかがすいた」「眠れないよ」等のNCが多くみられていた。【実施後】日中の覚醒率が95%までアップし、レクリエーションへの参加や他者交流等の活動量が増え、朝夕新聞を読むといった日課もでき、生活リズムの改善がみられた。しかし夜間帯の入眠・覚醒状況には変化見られなかった。C様【実施前】日中は傾眠傾向が強く、夜間帯は中途覚醒していることが多く、その際は独語も見られていた。【実施後】日中の覚醒率が86%までアップし、傾眠する事が少なくなった。傾眠が減少したことにより活動量が増え、夜間帯の睡眠率が98%までアップ。中途覚醒も少なくなり独語も聞かれなくなった。D様【実施前】昼夜逆転傾向がみられており、夜間は毎晩覚醒オムツいじりが見られていた。【実施後】日中の覚醒率が87%までアップ、ウトウトする様子はあるも入眠する事は無くなった。また、夜間の入眠率も85%までアップ。中途覚醒も少なくなり、オムツいじりも、週に2回未満まで減少した。【考察】 どの対象者様も共通して日中の覚醒に対して効果を得ることが出来た。それは、アロマオイルによるリフレッシュ効果で目覚めが良くなり、活動意欲や活動量の向上に繋がったと考えられる。また、取り組みを通し、職員との交流が増えた事も刺激となり活気ある日中を過ごせたと思われる。C様、D様に関しては日中の覚醒がアップしたと同時にアロマオイルが精神的作用に働きかけ、睡眠時のリラックス効果がつながったと考えられる。しかし、夜間帯への効果が薄かったA様、B様に関しては精神的な問題ではなく、意図があって起き出している事や、普段の睡眠が生活リズムとして確立されていたことが考えられる。また今回、夜間帯のアロマスプレーの散布が1度だった為、香りが時間の経過とともに薄れ、効果も徐々に減ってしまったものと思われる。しかし覚醒時間に変化はなかったものの熟睡度に効果が見られ、睡眠の質は向上したと考えられる。【結論】 今回アロマセラピーを導入したことで、睡眠障害に対して一定の効果を得ることができた。しかし、対象者によって結果に差が見られた。今回すべての方に同じアプローチのみを実施していたが、夜間の覚醒に対する理由まで理解しアプローチを行うことが出来ていなかった。そのため、アロマセラピーのみではなく、覚醒の意図を理解したうえで個別性に合わせた使用量や時間を設定する必要がある。今回は認知症を発症されている方を対象とし検証したが、今後はすべての方にも活用できるようこの研究を生かしていきたい。