講演情報

[14-O-D001-07]認知症ケア対策チームにおける10年間の運営報告

*久保 友也1 (1. 茨城県 介護老人保健施設 くるみ館)
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近年、益々増加していく認知症高齢者への対策に対し、介護老人保健施設くるみ館では、2013年7月より認知症ケア対策チームを発足した。認知症高齢者への在宅復帰支援及び、在宅で安心して暮らすためのサポートを目的に運営されている。今回、約10年間における認知症ケア対策チームについての活動報告及び、今後展望について述べていく。
【はじめに】
 現在、超高齢社会を迎え、2025年には65歳以上の高齢者が総人口の約25.1%となる。当施設では、益々増加していく認知症高齢者への対策に対し、2013年7月より、認知症ケア対策チームを発足した。今回、約10年間における認知症ケア対策チームについての活動報告及び、今後展望について述べていく。
【認知症ケア対策チーム】 
<活動目的>    
認知症高齢者への在宅復帰支援及び、在宅で安心して暮らすためのサポート  
<構成メンバー>   
医師、介護福祉士、看護師、介護支援専門員、言語聴覚士、作業療法士 
<活動内容>   
月1回のミーティングし、運営を実施。
(1)認知症家族支援
・認知症家族会(ひまわりの会)を2014年10月に発足。当施設にて3ヶ月に1回の頻度で開催し、施設医師を中心とし、構成メンバーが運営。2019年12月以降は、コロナ感染予防のために開催を休止。2023年7月より再開。 
活動内容:ひまわりの会は認知症高齢者を介護する家族が自らの経験や思いを語り合う、情報・意見k交換の場の作り、介護する上での心構えを身に付ける、介護する家族の気分転換・休息支援のための場、アクティビティの提供。
(2)認知症ケアの対策 
・当施設の入所利用者・通所リハビリテーション利用者に対し、BPSDに対する認知症ケア対策及び、発症予防を図り、重症化予防を目的に実施。 
検討内容:非薬物療法の検討、認知症ケア検討:アクティビティ、運動、日常生活動作方法の検討)
服薬調整調整、在宅復帰支援。 
(3)職員の認知症に対する知識・技術の習得
・認知症ケア・リハビリの実践事例の検討。      
・当施設全体向けに年3回の勉強会を実施。   
勉強会内容:認知症の症状理解、認知症ケア・リハビリテーションの知識・技術、BPSD対策発症予防等。  
・職員への参加の促進  
研修内容:認知症介護基礎研修、認知症介護実践研修、認知症介護実践リーダー研修、キャラバンメイト、認知症ケア専門士、シナプソロジー研修、スクエアステップ研修
(4)地域住民への啓発活動
・認知症サポーター養成講座を2010年より実施。地域包括支援センターとの関わりから、市民センターや図書館、運送業や飲食店など多岐に講座を実施。 
・地域支援講習会(地域住民に向けた講座)を2ヶ月に1回の頻度で運営。近隣の団地の集会所にて介護老人保健施設の専門職としての知識を普及してきた。
年1回、当医師からの認知症について知識・理解の講習会も実施。
【考察及び今後の展望】
  近年、認知症を伴う独居生活高齢者の増大が懸念され、この10年間で認知症ケア対策チームにおいても、認知症対策に焦点を当てた様々な対策や取り組みを講じてきた。ひまわりの会においては、家族が介護する上での不安や悩みなどが聞かれ、介護負担やストレスを感じられていた様子があった。施設医師は、家族支援には気分転換や休息支援を実施していくことが大切である」と述べており、アクティビティの提供は家族にとっては気分転換が図れ、満足度は高く、重要な位置づけとなっていると考えられる。また遺族となった参加者がアドバイス側に立ち、介護してきた貴重な経験や価値観を話すことで、新規の参加者とのラポール形成や仲間づくりにつながっていると考えられる。
今後、認知症高齢者が地域で自分らしく暮らしていくためのサポート力が求められてくる。地域の既存資源を活用し、認知症の人の生きがいにつながるような支援、日常生活上の工夫等の助言できる人材を育成していく必要がある。そのために、認知症ケア・リハビリテーションの知識・技術の習得のための研修参加の促進や事例の積み重ねを継続していきたい。また地域住民への啓発活動である認知症サポーター養成講座や地域支援講習会の研修内容や方法を再考し、さらに地域住民の認知症の理解を深めていきたい。また地域包括支援センターなど行政との連携強化を図りながら、認知症の人の悩みやニーズを抽出し、介護老人保健施設としての在宅復帰支援・地域生活支援のサービスにつなげていきたい。