講演情報

[14-O-Q001-02]超強化型のその先へ

*及川 輝道1、清野 宏和1、品堀 喜久子1、高橋 篤1 (1. 宮城県 介護老人保健施設アルカディアウエル)
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地域性もあり看取り中心の施設の経営危機に独自の発想と職員の意識改革体質改善により3年間で加算型から超強化型に変え維持するための施策を報告する。施設方針を180度転換したことによって、御利用者家族から介護の見通しがついたとの評判に繋がった。また地域の医療機関等との連携も必要不可欠ではあるが、好循環の維持は職員の意識改革からと考えられる。
【はじめに】
開設して28年を迎える当施設は人口12000人程度の高齢化エリアで、施設は「終の棲家」と認識している家族が多く施設もそれを受入れてきた。平成27年には在宅復帰強化型への移行にこぎつけたが御利用者御家族からの評価を受けることが出来ず、その他の要因もあり強化型の維持はできなかった。
【目的】
超強化型に引き上げるとともに、職員全体の介護技術を上げ、質の高い介護を提供することが目的である。
【方法】
超強化型への取り組みと稼働率の向上
経営企画会議で3年を目標に超強化型施設を目指すことを目標とし、在宅復帰推進委員会を設置。委員会の中で加算型から超強化型へ移行するにあたり足かせになっている物を抽出した。1.職員の既存の意識2.多職種連携不足3.家族へのアプローチ不足4.地域協力機関との連携不足
1.職員の既存の意識
「全職員の在宅復帰に関しての知識、意識の統一不足、老健の役割の忘却、ずっと入所出来ると思っている家族に対しての理解は得られない」という意見が上がった。
そこで全体研修会を開催。全職員に対しアンケートを取り現状の職員の意識の見える化を図った。現在の入退所の方法、在宅復帰の方法について確認。1日の入退所の流れ、月の退所者数に関して根拠をもとに説明し意識改革を図る。各部署にて研修会を開催し在宅復帰に対しての自部署のケア方法の検討、高稼働率に上げて行く為の講習を行い職員の理解を求めた。
2.多職種連携不足
1日の入退所者数について各部署と話合いを行ったが意見が分かれ「入退所者が多いと残業時間が増える。薬の調整、ベッド移動、清掃が大変」等の意見が多く聞かれ衝突した。入所される御利用者のレベルに合わせ、職員の出勤数などの調整を週に1度各部署が集まり、受け入れの人数に対して確認と評価、調整の会議を実施し情報の共有化を図り、ベッド移動などは全体で協力して行った。
3.家族へのアプローチ不足
御家族に対し施設ケアマネ、支援相談員を中心に面談を実施。施設の意向を伝え在宅での生活に対しての考え介護力の確認を行った。面談時は自宅での生活を考えていない御家族が大多数を占めていたため、外出や外泊を提案し実行して頂き、改めて自宅での生活が可能か検討した。面談後、超長期入所の方、在宅復帰可能な方、支援内容次第では在宅での生活が可能と思われる方に分けた。在宅復帰に不安が垣間見られた御家族に対しては在宅サービス利用の説明、在宅に戻られた後も再入所、短期入所などの支援は継続していく事を説明し不安を解消。在宅生活が可能な方には退所前訪問を実施。希望サービスを確認しサービス事業所との調整を行い、担当される居宅ケアマネへ情報提供、サービスの確保などを代行し切り替え易くした。サービス事業所にも協力を得て細かく説明をして頂き御家族内容次第で在宅復帰が可能な方には退所前訪問を実施。住居環境家族の介護力を確認し施設内でのケア内容を関連職種で検討し自宅に近い環境作りを行い在宅生活に移行出来るよう見直しをした。御家族に来設して頂き本人の状態を確認して頂く事や介護指導を行い御家族の理解、不安を軽減した事で在宅復帰者が増加した。御本人の希望、御家族に合わせた対応を実現する為、入所相談の段階で施設の方針として在宅生活が可能な条件を確認し入所時のケアプラン作成のニーズとケア内容を決定。3週間目で検討会を開き目標の確認をし、実施内容の評価を各部署で検討。その後、御家族と面談し方針の確認。リハビリ後の本人の状態、生活の様子などから必要なサービスを利用した在宅生活の提案、他施設への移行の提案を行い御家族の介護力に合わせた在宅復帰を目指した。
4.地域協力機関との連携不足
「地域のケアマネ、病院からも理解されないのでは」と厳しい意見が上がった。
足しげく営業に通い、柔軟な受入れ体制の確保。入所受入れまでの期間を短縮できるように診断書作成の依頼と実態調査を並行して行った。また、短期入所の利用に関しても簡素化し利用しやすい工夫をした。
【結語】
以上4点を解決することにより、1日の入退所者数が増え、多くの方々が利用できるようになった。令和5年4月より超強化型施設へ移行。稼働率96%、在宅復帰率60%を達成できた。協力病院、各サービス事業所の協力もあり、御家族への支援を手厚くすることができた。御家族からも「本人が家で過ごせる時間を作れた事で施設入所させていた罪悪感が軽減した」「親類関係とも合わせられるので御家族間の仲も良くなった」「在宅復帰に関して細かな説明や手の届かない所まで手伝ってくれるから良かった」「再入所も可能なので一安心」等の感想を頂いた。初めは衝突していた職員も在宅に戻られた方から、お礼を言われる事が多くなり他部署との理解や協力体制が出来た事、自分自身の評価が上がった事で職員全体のモチベーションが高まり、自発的な発言が増え活気あふれる施設となった。