講演情報

[14-O-Q001-03]選ばれるデイケアを目指して~相談員の役割~

*高橋 有美1、橋本 昌代1、長田 圭司1 (1. 兵庫県 介護老人保健施設なにわローランド)
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年々減少傾向にあったデイの実績を立て直す為、ハード面とソフト面の改善を行いました。結果として、契約率の上昇に結び付いた為、事例と共に取り組み内容について報告致します。
●施設概要
当施設は兵庫県尼崎市に位置し、平成15年6月に開設した96床の入所(超強化型)と定員60名のデイケアを有する施設です。同法人内には尼崎中央病院を母体とする関連介護施設が10箇所あり、また市内には当施設以外に、デイケアが11箇所、デイサービス(リハビリデイ含む)が88箇所あります。
●はじめに
当施設のデイケアの実績は年々減少傾向にありました。令和4年・5年の中止理由をみると、両年とも約7割が「入院・入所」でした。致し方無い理由が大半ではありましたが、中止者を上回る新規利用者様を獲得しなければ実績を上げることは出来ません。数ある介護サービスの中から当施設を選んで頂く為に、様々な取り組みを行いましたので報告します。
●令和4年・5年のお試しからの契約率
当施設では利用開始前に施設の雰囲気を知って頂く為、1日体験としてお試し利用を実施しています。このお試しの時に如何に利用者様のニーズに応えられるかが契約へのファーストステップとなります。
令和6年の取り組み結果と比較する為、対象期間を同期間に絞って過去の実績を振り返ると、令和4年・5年の1月~5月のお試し利用は両年ともに19件で、令和4年の契約は11件、契約率は57%でした。また令和5年の契約は9件で、契約率は47%でした。つまり、お試しに来て頂いたとしても約半数が契約に結び付いていない状態でした。
●取り組み1~環境整備~
デイケアとしての機能をより全面に打ち出す為、施設として環境整備を行いました。
1:お風呂場のリニューアル
利用者様に気持ちの良い入浴サービスをご提供出来る様、お風呂場のリニューアル工事を実施すると共に、新しい機械浴を設置しました。利用者様がご自宅においても入浴が出来る支援に繋がる様に、多様な浴槽を揃えています。また、リハビリ職員がご自宅の環境評価を行った上で、自立支援を尊重した入浴方法をご提案させて頂いています。
2:リハビリ機器の導入
デイケアはリハビリをする場所であるという概念の基、リハビリ機器の充実を図りました。
手足・体幹の筋力強化が出来る複合型マシーン、身体面と認知面の両方にアプローチすることが出来るコグニバイク、それらに移乗出来ない方や片麻痺の方が車いすに乗ったまま下肢筋力の強化が期待できるセラトレーナモビを導入しました。
3:模様替え
リニューアル工事や機器導入もさることながら、見栄えを考え、整理整頓の範疇で模様替えを実施しました。当施設のデイケアは1階にありますが、正面玄関から入った時に活気溢れる雰囲気が視覚情報として一番に飛び込んでくるようにする為、リハビリや活動風景がよく見える配置に変更しました。
●取り組み2~契約に繋がった事例~
全職種が輪となって全方向からご支援するというデイケアならではの体制に立ち返り、しっかりとニーズに応えていくべきであると考えました。
1:医療ニーズのある利用者様
医療ニーズの高い方の受入に際し、本来であれば相談員だけで訪問に行くところを、退院日に看護師、介護士、そして相談員で自宅訪問を行いました。ネックとなっていた医療面については既にサービスに入られている訪問看護の方と確認事項を行いました。また医療的な支援が多い為に単位数の問題でどうしてもヘルパーをつけることができないということも明らかになり、その点については介護士が送迎の調整を行い介入出来るようにしたことで、サービス開始に繋がりました。
2:栄養改善を必要とする利用者様
2年前まで山歩きが趣味だったこの方は、令和5年12月に右変形性股関節症で入院され、退院後は足が痩せて歩行が不安定でした。病院で栄養補助食品を食べておられたという情報を聞き、病院と当施設の管理栄養士が連携し、栄養改善のご支援をさせて頂くことで、契約に繋がりました。
3:送り出しの不安のある利用者様
とりあえずデイケアへ行けるような環境なのかが分からないので自宅の評価を行って頂きたいという依頼に対し、理学療法士と共に自宅訪問を実施しました。いくつかあるマンションの出入り口を確認し、介護士が付き添えば安全に移動できると評価したルートからご支援させていただくことを提案し、契約に繋がりました。
●取り組み3~ケアマネジャーへのPR活動の活性化~
新規のご利用者様のほとんどは、ケアマネジャーからのご紹介です。その為、お試し利用はそこからのお問い合わせがなければ何も始まりません。そこで、ケアマネジャーへのPR活動を活性化させました。具体的な活動としては、毎月2回居宅事業所への訪問、毎月3回のデイ内覧会の開催です。毎月最低5か所は市内の事業所へ挨拶回りを行い、また内覧会では利用者様に提供している昼食やおやつを召し上がって頂いたり、リハビリ機器をお試し頂いたりと実際に利用者様が行っているプログラムを組んでご体験頂いております。とにかく知って頂く、来て頂く、見て頂く、触れて食べて感じて頂くことをモットーに、外部への情報発信を続けています。
●まとめ
ハード面とソフト面を整えながら、1つ1つのニーズに対して丁寧に応えていくことを基本に取り組んできた結果が、数字として表れてきています。事実、令和6年1月~5月までのお試し利用は18件で契約は17件、契約率は94%と昨年の2倍になりました。これは施設全体でニーズに即したサービス提供を意識し、他職種協働で一丸となって利用者様がその人らしく生活できることを常に心掛けた結果だと考えています。また、相談員としては、これらの活動の中心というよりは、情報の共有と整理の要であることを意識しながら取り組んできました。今後も利用者様目線でのアップデートを念頭に置いたサービスを続け、選ばれるデイケアを目指していきたいと思っています。