講演情報
[14-O-Q001-04]WORK is FUN!仕事は楽しくをフィッシュ哲学で再考する
*川口 航輝1、遠藤 悠樹1、青木 寿1 (1. 北海道 介護老人保健ガーデンハウスくりやま)
当DCはコロナの活動規制を機に経営実績が悪化した。多職種の検討会で問題点を出し、「楽しさ」に重点を置いて改善への取り組みを考えた。その取り組みが自部署目標や職場に与える影響をフィッシュ哲学を基に検証した。効果は途上だが、自分たちは一方的なサービスを行っていたと気づき、利用者の反応に積極的に注意を向け、全体的に活気が増えた。好循環を生み始めた一方で新たな課題も上がったため報告する。
【はじめに】
当通所リハビリテーション(以下DC)は、出来る限り居宅でその人らしい自立生活を維持できるようサポートすることで、地域全体の健康寿命延伸や自助生活の促進につなげるという役割がある。自部署の目標を”仕事は楽しく“と掲げて活動してきた。しかし、現状はコロナによる活動規制を機に活動縮小ムードが続き、コロナ規制緩和後も実利用者数は減少し、経営実績は悪化の一途をたどった。2024年2月に事務主導で経営改善検討の指示があり、通所関係の多職種管理者を招集した会議(以下「ナンバーワン会議」)を設置し改善に取り組んだ。効果は途上だが、利用者や職員の反応に手応えがあったので以下に報告する。
【目的】
経営改善のための取り組みが、自部署目標や職場に与える影響についてフィッシュ哲学を基に検証する。
【方法】
・利用者及び職員にアンケート(自作)を実施し、活動の楽しさを5段階評価し自由記載をまとめる。
・対象
職員21名(職員は介護職:11名、リハビリ職:3名、管理栄養士:2名、事務職:5名)
利用者90名
【結果】
2月~3月にかけ、ナンバーワン会議を3回開催した。メンバーはケア部長、事務、相談員、リハビリ、介護、当ケアプランセンタ―のケアマネジャー(以下「CM」)の管理職8名とし、検討概要は以下の通りである。
2月の会議概要
・CMより地域の顧客評価として、「利用中の待ち時間が多い」、「暇だ」という声があり、地域に選ばれない、求められないという感想をもっていると知った。
・営業方法を見直していない、利用者のニーズを気にしていない、外部発信できる強みがないという問題点を共有した。
・自分達はルーティーンワークを、漫然と繰り返し、利用=満足という職員中心の自己満足さで驕っていたと気づいた。
3月の会議概要
・勉強会の開催
当DCの現状と社会・地域に求められる役割、施設理念や目標を交えた今後の展望
・新年度リニューアルメニューの作成
コロナ禍前のメニューや他施設活動も参考に利用者の立場からの目線で、何をすると効果的で楽しいかを通所職員全員で検討
・周知・広報活動の強化
・イベント開催毎の利用者評価を確認する
・リハビリのポイントカード導入による自主トレ意欲の拡充推進
2024年4月から新メニューでDCサービスを開始した。日々のイベント開催時には、毎回利用者アンケートを行い、その結果と職員の意見から随時メニューの追加・修正を行った。職員は自発的に活動への意見を発言するようになり、活動中の利用者へ頻回に声掛けし、楽しさを直接確認するようになった。活動時間外にも利用者と雑談やゲームをする場面が増え、利用者からは楽しかったとの声を多く頂けるようになって、笑い声が増えた。更に来客者からも、「にぎやかだね~」、「盛り上がっているね」という声かけをいただく機会が増え、CMからは、「暇だ、待つ時間が多い」という利用者の声が聞かれなくなったという情報が入った。そこで、中間評価を兼ねて同年6月にアンケートを実施した。
1.活動は楽しいですか?
利用者様
4以上の評価が82名で91.1%だった。自由記載は毎日楽しいという声が聞かれた。
職員
4以上の評価が21名で100%だった。自由記載では直接の好評価が嬉しいと声が聞かれた。
2.DC職員間の意見
これまで自分達の役割を知らなかった、提供すれば効果があると思いこんでいた、業績は自然に回復すると思っていた、利用者の声に耳を傾けていなかった等があった。
【考察】
スティーブン1)はフィッシュ哲学で態度を選ぶ、遊ぶ、注意を向ける、人を楽しませるの4要素で組織は活性化し、従業員は明確なビジョンがあればフィッシュの実行に気付けると言っている。態度を選ぶことについては利用者様への声掛けや雑談、ゲームをする職員が増えた点を挙げる。遊ぶについては新しい活動を職員も楽しんでいた点を挙げる。注意を向けるについては問題点を洗い出し、理念、目標を共有した、利用者様の反応を直接確認するようになった点を挙げる。楽しませるについてはリニューアルの活動を考えた点を挙げる。以上4項目を行い職員は、会議や新活動とタイムリーな利用者の反応を通して、目標やサービス内容の評価を軽視してきたことで、徐々に地域ニーズとの乖離が生じていたと気づいた。職員中心の単調なサービスは一方的な活動の押しつけとなり、利用者ニーズに合わず、利用離れに繋がったことを改めて自覚した。自分達の役割を再確認、共有し、新活動に取り組んだことで、利用者のニーズに近づくことができた。
鎌田2)は従業員のプライドが喚起されると顧客満足度が向上するサイクルが生まれると言っている。利用者に注意を向ける機会が増え、直接うれしい反応が返ってくることで職業人としてのプライドが喚起され、職員の雰囲気の変化が利用者にも波及した。活動は今、双方向的なホスピタリティへと変化し始めている。今回の変化はフィッシュ哲学を支持でき、職員や利用者の楽しさに焦点を当てた結果、好循環が生まれたと実感した。
【おわりに】
スティーブンは変化後について、外力による変化は一時的で、本当の変化はビジョンに対して個人が主体性をもち行動を行うことが必要だと言っている。今回のきっかけは事務主導だったが、従業員の主体性を育成できるよう目標の共有とボトムアップな職場環境を継続していく。今後は利用者や顧客満足度調査を利用し、DCサービス活動の質向上に繋げたい。
【参考文献】
1)[スティーブン・C・ランディン, フィッシュ!(アップデート版), 2021年3月25日]
[スティーブン・C・ランディン, フィッシュ!おかわり, 2003年5月15日]
2)[鎌田洋,ディズニーを知ってディズニーを超える顧客満足入門, 2014年11月1日]
[花田光世, 自律的キャリア形成に関して, 2018年1月30日]
当通所リハビリテーション(以下DC)は、出来る限り居宅でその人らしい自立生活を維持できるようサポートすることで、地域全体の健康寿命延伸や自助生活の促進につなげるという役割がある。自部署の目標を”仕事は楽しく“と掲げて活動してきた。しかし、現状はコロナによる活動規制を機に活動縮小ムードが続き、コロナ規制緩和後も実利用者数は減少し、経営実績は悪化の一途をたどった。2024年2月に事務主導で経営改善検討の指示があり、通所関係の多職種管理者を招集した会議(以下「ナンバーワン会議」)を設置し改善に取り組んだ。効果は途上だが、利用者や職員の反応に手応えがあったので以下に報告する。
【目的】
経営改善のための取り組みが、自部署目標や職場に与える影響についてフィッシュ哲学を基に検証する。
【方法】
・利用者及び職員にアンケート(自作)を実施し、活動の楽しさを5段階評価し自由記載をまとめる。
・対象
職員21名(職員は介護職:11名、リハビリ職:3名、管理栄養士:2名、事務職:5名)
利用者90名
【結果】
2月~3月にかけ、ナンバーワン会議を3回開催した。メンバーはケア部長、事務、相談員、リハビリ、介護、当ケアプランセンタ―のケアマネジャー(以下「CM」)の管理職8名とし、検討概要は以下の通りである。
2月の会議概要
・CMより地域の顧客評価として、「利用中の待ち時間が多い」、「暇だ」という声があり、地域に選ばれない、求められないという感想をもっていると知った。
・営業方法を見直していない、利用者のニーズを気にしていない、外部発信できる強みがないという問題点を共有した。
・自分達はルーティーンワークを、漫然と繰り返し、利用=満足という職員中心の自己満足さで驕っていたと気づいた。
3月の会議概要
・勉強会の開催
当DCの現状と社会・地域に求められる役割、施設理念や目標を交えた今後の展望
・新年度リニューアルメニューの作成
コロナ禍前のメニューや他施設活動も参考に利用者の立場からの目線で、何をすると効果的で楽しいかを通所職員全員で検討
・周知・広報活動の強化
・イベント開催毎の利用者評価を確認する
・リハビリのポイントカード導入による自主トレ意欲の拡充推進
2024年4月から新メニューでDCサービスを開始した。日々のイベント開催時には、毎回利用者アンケートを行い、その結果と職員の意見から随時メニューの追加・修正を行った。職員は自発的に活動への意見を発言するようになり、活動中の利用者へ頻回に声掛けし、楽しさを直接確認するようになった。活動時間外にも利用者と雑談やゲームをする場面が増え、利用者からは楽しかったとの声を多く頂けるようになって、笑い声が増えた。更に来客者からも、「にぎやかだね~」、「盛り上がっているね」という声かけをいただく機会が増え、CMからは、「暇だ、待つ時間が多い」という利用者の声が聞かれなくなったという情報が入った。そこで、中間評価を兼ねて同年6月にアンケートを実施した。
1.活動は楽しいですか?
利用者様
4以上の評価が82名で91.1%だった。自由記載は毎日楽しいという声が聞かれた。
職員
4以上の評価が21名で100%だった。自由記載では直接の好評価が嬉しいと声が聞かれた。
2.DC職員間の意見
これまで自分達の役割を知らなかった、提供すれば効果があると思いこんでいた、業績は自然に回復すると思っていた、利用者の声に耳を傾けていなかった等があった。
【考察】
スティーブン1)はフィッシュ哲学で態度を選ぶ、遊ぶ、注意を向ける、人を楽しませるの4要素で組織は活性化し、従業員は明確なビジョンがあればフィッシュの実行に気付けると言っている。態度を選ぶことについては利用者様への声掛けや雑談、ゲームをする職員が増えた点を挙げる。遊ぶについては新しい活動を職員も楽しんでいた点を挙げる。注意を向けるについては問題点を洗い出し、理念、目標を共有した、利用者様の反応を直接確認するようになった点を挙げる。楽しませるについてはリニューアルの活動を考えた点を挙げる。以上4項目を行い職員は、会議や新活動とタイムリーな利用者の反応を通して、目標やサービス内容の評価を軽視してきたことで、徐々に地域ニーズとの乖離が生じていたと気づいた。職員中心の単調なサービスは一方的な活動の押しつけとなり、利用者ニーズに合わず、利用離れに繋がったことを改めて自覚した。自分達の役割を再確認、共有し、新活動に取り組んだことで、利用者のニーズに近づくことができた。
鎌田2)は従業員のプライドが喚起されると顧客満足度が向上するサイクルが生まれると言っている。利用者に注意を向ける機会が増え、直接うれしい反応が返ってくることで職業人としてのプライドが喚起され、職員の雰囲気の変化が利用者にも波及した。活動は今、双方向的なホスピタリティへと変化し始めている。今回の変化はフィッシュ哲学を支持でき、職員や利用者の楽しさに焦点を当てた結果、好循環が生まれたと実感した。
【おわりに】
スティーブンは変化後について、外力による変化は一時的で、本当の変化はビジョンに対して個人が主体性をもち行動を行うことが必要だと言っている。今回のきっかけは事務主導だったが、従業員の主体性を育成できるよう目標の共有とボトムアップな職場環境を継続していく。今後は利用者や顧客満足度調査を利用し、DCサービス活動の質向上に繋げたい。
【参考文献】
1)[スティーブン・C・ランディン, フィッシュ!(アップデート版), 2021年3月25日]
[スティーブン・C・ランディン, フィッシュ!おかわり, 2003年5月15日]
2)[鎌田洋,ディズニーを知ってディズニーを超える顧客満足入門, 2014年11月1日]
[花田光世, 自律的キャリア形成に関して, 2018年1月30日]