講演情報
[14-O-D003-03]ヨウ素は認知症の不穏抑制効果があるミネラルは認知症の不穏抑制に有用 第3弾
*吉田 佳嗣1、扇田 貴司1、飛澤 たけし1、中村 里子1、尾谷 慶太1、吉田 和佳子1 (1. 奈良県 介護老人保健施設 大和三山)
以前よりミネラルの重要性を報告してきた。鉄、亜鉛、銅レベルの調整、昨年は少量リチウム投与が不穏治療の有用を報告した。今回甲状腺ホルモンの材料であるヨウ素(ミネラル)の有用性を報告する。老人は甲状腺機能低下が見られる人は少なくない。そこで不穏な人で甲状腺機能低下の指針である基礎体温が36.5度未満の人にヨウ化カリウムを投与した。約6―7割の人に効果がみられた。認知症治療にはヨウ素投与は有用である。
私は以前当学会でミネラルの重要性を報告してきた。現代は飽食の時代ににもかかわらずビタミン、ミネラルの微量栄養素が欠乏している人が多い。食の欧米化、加工食品を主にとる食の変化のためミネラル摂取の減少と添加物による体内ミネラル排泄によってミネラルが不足している。そのため老若男女問わず精神の不安定、体の不調を訴える人が多くなっている。人の生体内の化学反応は酵素が重要で、酵素の構造はミネラルを中心にまわりアミノ酸が取り巻く構造をしている。つまりミネラルが不足していれば酵素がうまく動かず、結局体も頭もうまく動かないのである。したがって亜鉛、銅の調整および低フェリチンの人には鉄の点滴が重要であること以前報告した。昨年は少量のリチウム投与は認知症の不穏に非常に効果であることを当学会で報告した。今回はミネラルでも甲状腺ホルモンの材料であるヨウ素に注目した。老人は甲状腺機能低下のため甲状腺ホルモンを飲んでいる人、FT4が正常でもTSHが高い人(一般に4.5まで正常とされているが、栄養学的には2.1-2以上の値は異常値と考えられている。ホルモン分泌が低下しているため上位の脳下垂体よりTSHをより多く分泌して甲状腺に刺激しホルモン分泌促進をする)栄養状態が悪いため活性型のFT3のみだけ低下しているlow T3 症候群、認知で不穏、幻覚症状が強く精神科で治療を受けてきた人が入所され甲状腺機能を調べると重症甲状腺機能低下症でありチラージンを入れるとかなり良くなったなど甲状腺に問題がある人は少なくない。一方甲状腺機能低下症では約半数以上の人にうつ症状がみられ、精神機能の低下により無気力、記憶力低下、集中力低下、抑うつ、疲労感、動作緩慢などの症状が表れ、うつ病や認知症と見分けがつかない場合が少なくない。欧米で売られている甲状腺ホルモンの材料であるヨウ素製剤のサプリの評価が非常に高く、精神に効き元気になったと報告されている。そこで欧米で売られている同量のヨウ化カリウム30mgを使用した。対象は認知症で不穏がある人に使用した。甲状腺機能低下を示す指針として基礎体温36.5度未満の人に用いた。基礎体温が36度もない人には積極的に使用した。最初は毎日30mg投与した。反応は6‐7割の人に効果が見られた。穏やかになる人が多くなり、元気になる人も少なくない。一方不穏が増悪する人一部あったがそのような人は中止した。約8割の人が0.1-0.2度の基礎体温が上昇した。精神以外にも皮膚に効くようで慢性湿疹が改善する人も見られた。当施設では亜鉛以外にも全員ビタミンD、ビタミンC、プロテイン15gを投与しているため皮膚のトラブルが少なくだんだんきれいになっていたが、ヨウ素を入れると、皮膚がしっとりして艶がでる人も現れた。2か月後に甲状腺機能をしらべたがホルモン異常はないもののTSHが約3-4割の人で上昇がみられた。そのためローディングとして最初の1ヵ月は週に2回、その後週に1回と投与を減らしている。減量すれば問題なさそうである。一般に日本人は欧米人違いヨウ素欠乏しているといないとされているが、食の欧米化により、以前より少なくなっている人が多い。外来でも低体温でコレステロールが高い人が少しヨウ素をいれると、体温が上がりコレステロールが低下する場合も多々ある。しかし以前より昆布を毎日たくさん食べると甲状腺機能が低下することがあるため、ヨウ化カリウムは週に1回投与を続けることが重要である。ミネラル投与が認知症の不穏に役立つ第三弾としてヨウ素の有効性を述べてきた。前回のリチウムと違い、使用する人は基礎体温が低い人に限られ、使用量も少なめで使用しなければならない。しかし様々な症状が取れ元気になり精神が安定するため非常に有用である。