講演情報
[14-O-D003-04]認知症利用者への環境づくりに関する職員の意識の変化
*寺坂 郁恵1 (1. 静岡県 御前崎市総合保健福祉センター 老人保健施設はまおか)
介護職員が認知症利用者の環境支援が行えるようになるための第一歩として、認知症高齢者への環境支援のための指針(PEAP)を理解し、ガイドラインに沿って評価することで、介護職員14名の認知症利用者の環境支援に関する意識の変化を調査した。調査結果よりPEAPの理解と取り組みの効果が関心を高める事に繋がり、意識の変化に繋がった。今後は事例数を増やし検討していく事で、更に介護職員の意識が今以上に向上する可能性がある。
I.はじめに
A市が運営するB施設には、約7割の利用者が認知症を患い施設生活を送っている。その利用者の中には、自室がわからずどこに行けばよいか徘徊する事象が散見していた。原因の1つとして、介護職員は認知症利用者が安心して安全に生活できる環境づくりが行えていないことが考えられた。
そこで介護職員に教育的学びの介入を行い、介護職員が認知症高齢者への環境支援のための指針(以下、PEAPとする)を理解し、活用することで、認知症利用者の生活の場である環境を整えることに関して意識が変化したかを明らかにすることを目的とした。
II.方法
1.対象者:常勤介護職員14名
2.期間:令和4年3月~令和5年3月
3.研究デザイン:調査研究
4.データ収集方法
1)介護職員にPEAPの勉強会を実施した。
気づきをキャプションシート(環境に対する気づきを言葉にしたもの)に記入し提出を依頼した。
キャプションシートを各次元で整理した。
4)整理した中から、優先順位を考え上位1つについてカンファレンスで話し合い、環境支援目標を設定し介護計画を立案した。
5)環境支援の実施、評価、修正、変更を行った。
6)環境づくりに関する11項目のアンケートを作成した。
7)事例検討実施後にアンケート調査を実施した。
8)回収したアンケートを集計し分析した。
5.データ分析方法
選択肢の部分はExcelにて単純集計で分析し、自由記述の部分はコード化、カテゴリー化したものを分析した。
III.倫理的配慮
市立御前崎総合病院院内倫理委員会の承諾(2022-6)を得て実施した。
IV.結果
介護職員に認知症利用者へPEAPを活用した環境づくりに関する介入を行い、抽出されたコードは112、サブカテゴリーは24、カテゴリーは11であった。カテゴリーは【 】、サブカテゴリーは< >、コードは『 』で表記する。ここでは、アンケート項目1、2、5、9、11について記載する。
アンケート項目1.環境支援指針の理解はできたかについて、<項目に沿って利用者の視点で考える><事例を経験し学びの機会を増やす>ことが【PEAPの理解を深める】に繋がった。2.環境づくりに関心を持って取り組めたかについて、<認知症利用者の行動や環境が気になる>ことで【利用者の行動や環境づくりに関心がもてる】ようになった。5.環境づくりの計画を利用者の視点で検討ができているかについて、<利用者のニーズの代弁><生活歴や日々の行動をもとに考える><利用者が安心して生活ができる環境を一緒に考える>ことで【利用者とともに安心に繋がる環境の検討】を行うことができた。9.環境づくりに対して関心が高まったかについて、<利用者の変化が関心に繋がる><視点や考え方の大切さを知る>ことが【PEAPの理解と取り組みの効果】に繋がった。11、今後も取り組んでいきたいかは、<利用者の残存機能を活かし安心安全な生活を送るための環境づくりを行う><時間の確保と更なる理解を深める>ことが【安心と安全に繋がる環境づくりを継続する】必要性が明らかとなった。
V.考察
ここでは、1.介護職員の認知症利用者の環境づくり支援への理解についてと、9.11.の認知症利用者の環境を整えることに関して介護職員の意識の変化について考察する。
児玉らは、PEAPは認知症利用者ができるだけ自立を維持して、その人らしい暮らし、それを支えるケアにとても重要な視点である1)と述べている。1.勉強会、事例検討を実施したことで『PEAPとは何かを理解し深めることができた』『何となくPEAPを理解できた』という意見があり、<項目に沿って利用者の視点で考える><事例を経験し学びの機会を増やす>ことが【PEAPの理解を深める】ことに繋がったと考える。
9.11について、キャプションシートを各次元で整理し、カンファレンスで話し合いを重ねたこと、認知症利用者が、今まで大切にしてきたものを確認しながら個々の暮らしを考えることで、『利用者を深く知るきっかけ』となり、援助方法がより具体的でわかりやすくなった。『環境を整えることで利用者に変化』が見られ、『認知症の人の視点に立った環境づくりはとても良い事だと思うし、楽しい』と感じられたのではないかと考える。そしてこの経験が、<視点や考え方の大切さを知る>きっかけとなり、【PEAPの理解と取り組みの効果】が関心へと繋がり、教育的介入が、介護職員の意識の変化に繋がった。
VI.おわりに
本研究から、認知症利用者への環境づくりの必要性の理解に繋がり、職員の意識に一定の変化がみられた。
VII.引用文献
1)可児桂子 PEAPにもとづく認知症ケアのための施設環境づくり実践マニュアル
2010年8月 中央法規出版
A市が運営するB施設には、約7割の利用者が認知症を患い施設生活を送っている。その利用者の中には、自室がわからずどこに行けばよいか徘徊する事象が散見していた。原因の1つとして、介護職員は認知症利用者が安心して安全に生活できる環境づくりが行えていないことが考えられた。
そこで介護職員に教育的学びの介入を行い、介護職員が認知症高齢者への環境支援のための指針(以下、PEAPとする)を理解し、活用することで、認知症利用者の生活の場である環境を整えることに関して意識が変化したかを明らかにすることを目的とした。
II.方法
1.対象者:常勤介護職員14名
2.期間:令和4年3月~令和5年3月
3.研究デザイン:調査研究
4.データ収集方法
1)介護職員にPEAPの勉強会を実施した。
気づきをキャプションシート(環境に対する気づきを言葉にしたもの)に記入し提出を依頼した。
キャプションシートを各次元で整理した。
4)整理した中から、優先順位を考え上位1つについてカンファレンスで話し合い、環境支援目標を設定し介護計画を立案した。
5)環境支援の実施、評価、修正、変更を行った。
6)環境づくりに関する11項目のアンケートを作成した。
7)事例検討実施後にアンケート調査を実施した。
8)回収したアンケートを集計し分析した。
5.データ分析方法
選択肢の部分はExcelにて単純集計で分析し、自由記述の部分はコード化、カテゴリー化したものを分析した。
III.倫理的配慮
市立御前崎総合病院院内倫理委員会の承諾(2022-6)を得て実施した。
IV.結果
介護職員に認知症利用者へPEAPを活用した環境づくりに関する介入を行い、抽出されたコードは112、サブカテゴリーは24、カテゴリーは11であった。カテゴリーは【 】、サブカテゴリーは< >、コードは『 』で表記する。ここでは、アンケート項目1、2、5、9、11について記載する。
アンケート項目1.環境支援指針の理解はできたかについて、<項目に沿って利用者の視点で考える><事例を経験し学びの機会を増やす>ことが【PEAPの理解を深める】に繋がった。2.環境づくりに関心を持って取り組めたかについて、<認知症利用者の行動や環境が気になる>ことで【利用者の行動や環境づくりに関心がもてる】ようになった。5.環境づくりの計画を利用者の視点で検討ができているかについて、<利用者のニーズの代弁><生活歴や日々の行動をもとに考える><利用者が安心して生活ができる環境を一緒に考える>ことで【利用者とともに安心に繋がる環境の検討】を行うことができた。9.環境づくりに対して関心が高まったかについて、<利用者の変化が関心に繋がる><視点や考え方の大切さを知る>ことが【PEAPの理解と取り組みの効果】に繋がった。11、今後も取り組んでいきたいかは、<利用者の残存機能を活かし安心安全な生活を送るための環境づくりを行う><時間の確保と更なる理解を深める>ことが【安心と安全に繋がる環境づくりを継続する】必要性が明らかとなった。
V.考察
ここでは、1.介護職員の認知症利用者の環境づくり支援への理解についてと、9.11.の認知症利用者の環境を整えることに関して介護職員の意識の変化について考察する。
児玉らは、PEAPは認知症利用者ができるだけ自立を維持して、その人らしい暮らし、それを支えるケアにとても重要な視点である1)と述べている。1.勉強会、事例検討を実施したことで『PEAPとは何かを理解し深めることができた』『何となくPEAPを理解できた』という意見があり、<項目に沿って利用者の視点で考える><事例を経験し学びの機会を増やす>ことが【PEAPの理解を深める】ことに繋がったと考える。
9.11について、キャプションシートを各次元で整理し、カンファレンスで話し合いを重ねたこと、認知症利用者が、今まで大切にしてきたものを確認しながら個々の暮らしを考えることで、『利用者を深く知るきっかけ』となり、援助方法がより具体的でわかりやすくなった。『環境を整えることで利用者に変化』が見られ、『認知症の人の視点に立った環境づくりはとても良い事だと思うし、楽しい』と感じられたのではないかと考える。そしてこの経験が、<視点や考え方の大切さを知る>きっかけとなり、【PEAPの理解と取り組みの効果】が関心へと繋がり、教育的介入が、介護職員の意識の変化に繋がった。
VI.おわりに
本研究から、認知症利用者への環境づくりの必要性の理解に繋がり、職員の意識に一定の変化がみられた。
VII.引用文献
1)可児桂子 PEAPにもとづく認知症ケアのための施設環境づくり実践マニュアル
2010年8月 中央法規出版