講演情報

[14-O-D004-02]個別ケアによるADL/QOLアップを目指して

*宮原 由美1 (1. 福岡県 介護老人保健施設サンファミリー)
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認知症専門棟におけるフロア目標に沿って、身体機能・認知機能に応じた個別ケア(オムツ外し・生活リハ・ホッと館個浴)を実施した。統一したチームケアの徹底、アンケート等のデータ取りや記録の充実を図り情報共有する中で、ゲスト様の表情の変化・ADL機能向上・新たな残存機能の早期発見へと繋がった。またスタッフのアセスメント力が向上し意識改革が出来たので報告する。
<はじめに>
認知症専門棟(以下ホッと館と述べる)におけるフロア目標に沿って、身体機能・認知機能に応じた個別ケア(オムツ外し・生活リハ・ホッと館個浴)を実施した。統一したチームケアの徹底、アンケート等のデータ取りや記録の充実を図り情報共有する中で、ゲスト様の表情の変化・ADL機能の向上・新たな現有機能の早期発見へと繋がった。また、スタッフのアセスメント力が向上し意識改革が出来たので報告する。
<方法>
(1)オムツ外し 2事例(E様・M様/紙パンツから布パンツへ)
(2)生活リハ(毎日生活リハの時間を設け、担当スタッフが実施・記録)
(3)ホッと館個浴(ゲスト様のADL/QOL、在宅復帰を視野に入れ、対象ゲスト様を決め実施)
<内容>
(1)E様:以前は紙パンツ使用でトイレ対応。パーキンソン病・小脳出血による膝折れにより立位悪く、腰痛による苦痛表情、感情の変動も激しく悲観的発言や時には暴言も聞かれていた。そこで、フロアで話し合い、日中の排泄を自室でのPトイレに変更。すると失禁回数の減少がみられ、一日の失禁データを取り検証した結果、失禁がほとんどみられない事が分かり、布パンツへの変更が成功した。更に車椅子の自力駆動も増え、苦痛表情がなくなり、笑顔が見られるようになった。また、スタッフ二人対応から一人対応になり負担軽減にも繋がった。
M様:紙パンツと尿取りパットを使用されていたが、破かれ、ベッド周囲に破かれたものが散乱したり、トイレの便器内に捨てられる行為が多く見られた。時折失禁はあるが失禁回数は少ない。布パンツへ変更し、尿汚染した布パンツは洗濯板を使用して洗う、干す作業を行なって頂く。その後、失禁回数が減り、失禁時は自らスタッフへ報告されたり、洗濯したことで新たに食器洗いや神棚のお世話をされるようになり、日常の活性に繋がった。
(2)生活リハ時間(14~15時)毎日担当スタッフ3名が対象ゲスト様をケアプランに基づき個別に生活リハを実施・記録。その結果、関わりも増え、ADLが向上したゲスト様、意欲的になられたゲスト様、表情が豊かになり、帰宅欲求等の不穏が減少する等、ゲスト様の日常活性に至った。
(3)在宅復帰やゲスト様のADLの向上及び維持を目的とし、3名の対象ゲスト様を挙げて担当スタッフによる個別入浴を実施。個浴を行なう事でゲスト様の自然な笑顔を引き出す事が出来、昔話や喜びの声等対話する中で、ゲスト様の在宅での情報収集へと繋がり、在宅での入浴を意識した介助ができるようになった。また、入浴の順番や段取りを工夫し、スタッフ二人対応から一人対応が可能になり、記録も含め情報共有する事でスタッフのスキルアップへと繋がった。
<結果>
3つの項目を取り組んでから、10ヶ月後にアンケートを実施。その結果をもとにしたスタッフの気づき。
(1)オムツ外し E様普通のパンツが穿けて気持ち良いのではないか。M様自尊心が高まり、パンツを洗濯出来、脳の活性と機能維持が出来た。関わりが増え、要介護者はオムツという固定概念が覆された。
(2)生活リハ 一人一人を見る事が出来る為、日々の表情や身体機能の変化に気づけ迅速に次の段階へ繋げる事が出来た。個別で対応する事でスタッフの観察・記録に残す意識が向上し、ケアの統一に繋がった。
(3)ホッと館個浴 個別に対応する事で身体の観察が出来、会話での新たな発見へと繋がり、リラックスされている表情を感じる事が出来た。最初は二人対応で実施していたが、一人での対応が出来、準備・入浴の順番・段取り等考えて動けるようになった。記録も含め情報共有する事でスタッフのスキルアップへと繋がった。
<考察>
個々の現有機能に合わせた対応をフロアスタッフ全員で常に情報共有しながら、統一したチームケアを行っていく中で、ゲスト様には密なかかわりが増え、新たな現有機能への早期発見、日常の身体や脳の活性化へと繋がった。スタッフはチームケアの実施やアンケート等の「とりあえずやってみよう!」という意識改革ができ、記録に対する重要性の習得やアセスメント力が向上した。
<今後の課題>
今回実施した取り組みも含め、ケアプランに基づいたケアを継続しスピード感を持ってチャレンジする。新たな問題に対して迅速に取り組める体制作り。ゲストの不安や要望等精神面に対する気づきへの早期発見や追求を自然に出来る。特定のゲスト様に限らず、全体を見る力を養う。
以上の事が出来る様に取り組んでいく。