講演情報

[14-O-P101-01]186床 単独老健 業務可視化を経て超強化型老健へ

*石割 大貴1、菊地 薫1 (1. 静岡県 介護老人保健施設こみに)
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稼働率を維持しつつ在宅復帰率、ベッド回転率を高めるために取り組んだ4つの改革を紹介する。組織の改編。情報の可視化。効果的な営業。柔軟なベッドコントロールの4つである。結果的に稼働率98%、在宅復帰率50%以上、ベッド回転率5%以上を達成し、超強化型老健へ進化する事ができた。情報の可視化により多くの職員がベッドコントロール・在宅復帰を意識出来たことがこの結果に繋がったと考えられる。
【はじめに】
ベッド数186床の単独老健である介護老人保健施設こみには、2023年6月強化型老健を目指すため、在宅復帰率50%以上とベッド回転率10%以上を追い求めた結果、ベッド稼働率は10%低下し、過去最低の数値となってしまった。強化型を目指してなぜ稼働率が下がってしまったのか、その反省点を踏まえて2023年9月には強化型老健に、2024年6月現在、超強化型老健へと進化した経緯を相談員の視点から報告する。

【稼働率が下がる原因について】
これまで相談員は在宅復帰率を上げるため、入所されている方の中から在宅復帰が出来そうな方を探し、家族に無理を承知で家に帰せないかと相談をもちかけていた。
中には本人が家に帰りたいと言っているのならと在宅復帰へ繋がるケースもあったが、「家に帰るのは難しい」と断られてしまうケースや、「退所しなければならないなら特養へ行きます。」と結果的に在宅復帰に繋がらないケースも多かった。
それに加えて体調不良にて病院へ入院される方やお看取り対応の末ご逝去される方も毎月いるため、ベッド回転率や在宅復帰件数は増えたものの空きベッドが大量に出てしまうという状況に陥った。
新規入所の方も、長期間の入所を希望される方が多く、在宅復帰に繋がる入所相談が少ない事も課題の一つとなっていた。

【改革1支援相談課の改変】
入所されている方の中から在宅へ戻れる方を探していくのは限界があり、今後は在宅復帰予定のある方に入所して頂けるようにしていかなければ、継続的な在宅復帰率の維持は困難であると判断した。これまで入所相談を頂いていた病院や居宅へ、在宅復帰を予定している方を紹介して頂けるよう営業へ行く必要があると考えた。
当時支援相談課は4名の支援相談員が勤務しているものの、それぞれが受け持ちのフロアを担当しながら、入所相談、契約、入所中の家族連絡、退所に向けた対応等を行っており、営業に割ける時間は限られていた。
そこで、従来の支援相談業務を行う支援相談一課と、営業およびベッドコントロールを主に行う支援相談二課を作り、役割を明確にした。
支援相談二課には、ショートステイ、在宅復帰ケースを主に対応する職員1名、ICTに明るく、情報の可視化を行う職員1名、前職で営業職の経験のある職員1名の3名体制で臨む事とした。

【改革2情報の可視化】
支援相談二課として最初に取り組んだのは、情報の可視化である。
これまでは1週間の見開きの予定帳に入退所者を記入し、さらにエクセルで作成した週間予定表で1週間単位の入退所予定は共有していたものの、1週間以上先の予定や現在受けている入所相談の情報などは個々の相談員が把握しているだけであったため、退所して空いたベッドを効率よく使う事が出来ない状況にあった。
そこで、ホワイトボードに今後の入退所情報を書き出し、相談員全員でその情報を共有。また、月間予定表をエクセル1sheetで表記し、月々の各フロアの入所者数を明確にした。
その結果、常に数字を意識しながら、いつどこでベッドが空くのかが分かり、効率よくベッドコントロールを行う事が出来る様になった。

【改革3効果的な営業活動】
これまでの営業手段は、空床情報をFAXで流す他は、年始に病院、居宅への挨拶まわりのみであったが、営業を主に行う職員を配置したことにより、頻回に営業にまわれる様になった。
さらに、[毎月どこからどの程度紹介を頂けているのか]、[在宅復帰に繋がるケースを紹介してもらえた先はどこか]、など入所相談案件をエクセルにて管理する事により注力すべき営業先が明確になり、より効率的に営業にまわる事が出来る様になった。併せて老健での3カ月程(ミドルステイ)の入所のメリットが分かるよう、チラシや在宅復帰事例の紹介文書を作成し、説明にまわることにより、これまで『老健=長期入所する施設』というイメージを『ショートステイ、ミドルステイ、ロングステイ、看取りと幅広い活用が出来る施設』である事を周知する機会を増やせた。

【改革4柔軟なベッドコントロール】
改革1~3のおかげで毎月の入所相談件数は増え、在宅復帰に繋がる相談も増えたが、新たな課題、すなわちショート利用希望の問い合わせが急増した。
しかし、ショート専用ベッドは2床のみ、その2床もほぼ毎回同じご利用者がリピート利用していた為、新規での利用の相談があっても断ってしまう事が多かった。
そこで、ショート用のベッドを2床から5床へ増床して対応する事とした。
緊急の入所の際にはショート用ベッドを長期入所の方に使って頂いたり、入院して空いてしまったベッドについても、再入所されるまで空けて待っていたところをショート利用者に使って頂いたりと、情報の可視化をしたことにより数カ月先までのベッドコントロールが可能となり、状況に合わせて柔軟な対応をする事が出来る様になった。また嬉しい事に、ショートご利用者が未来のミドルステイ利用者に繋がるケースも見られるようになった。

【おわりに】
2024年6月時点で平均ベッド稼働率98%、在宅復帰率53%、ベッド回転率5.6%を達成した。今回は私たちの施設が超強化型にたどり着くまでの過程を支援相談員の視点から説明させて頂いたが、186床の単独老健である私たちの施設が超強化型にたどり着けた一番の要因は老健全体で超強化型を目指すために一丸となって取り組めたことに尽きる。
相談員の人数を増やし、営業を行い、新規利用者が増えたとしても、そこから在宅復帰へ導くのは、介護職、看護師、リハビリ職など現場の職員であり、多くの職員の協力なしに超強化型の達成はできなかった。これからもより一層質の高い在宅復帰を目指し、施設一丸となって取り組んでいきたい。