講演情報
[14-O-P102-02]「人がいない」を現場から変える職場づくり教育体制とマニュアル構築から3年経過し見えたこと
*平澤 清美1、平原 あい子2、木村 勝一3 (1. 新潟県 介護老人保健施設てらどまり、2. 介護老人保健施設てらどまり、3. 介護老人保健施設てらどまり)
介護福祉施設にありがちな看護職員の教育体制やマニュアルの不備と働く意味の欠如を自施設の看護職員も感じていた。そこで、教育計画マニュアルとケアマニュアルを作成し、看護職員として働く上での共通目標となる「看護職員のあるべき姿」を看護職員より意見集約し作成した。その結果、看護職員の働きやすい職場環境づくりに繋がると考えられるアンケート結果が得られたので報告する。
【はじめに】
介護老人保健施設の看護職員は、新卒職員が入職することが少なく教育体制やマニュアルの構築が不十分であった。これまでは、教育に関する伝達事項が口頭で伝達する項目が多く、新入職員や異動職員が働きやすい職場環境とは言い難い状況であった。また、看護職員として働く上での共通目標がなく、働くやり甲斐が不透明であることから看護職員が定着しない実情もあった。
そこで、働きやすい環境を整えるために規範やマニュアル作成、教育体制構築が必要と感じ取り組んできた。その実践内容と、運用開始して3年以上が経過した取り組みの評価を現職の看護職員へアンケートを実施したので、その結果について報告する。
【取り組みの目的】
看護職員が安心安全に働きやすい職場を構築する
【方法】
・「新人職員・異動職員指導用確認リスト」を作成し、新人と異動職員に対する教育とサポート体制作りを行う。
・看護職員として働く上での共通目標「看護職員のあるべき姿」を看護職員全員で考え文章化した。これにより、病院などで働く看護師との違いも意識して働いてもらうことで、自施設の看護職員としての役割意識の定着を図った。
・自施設で習得する必要のある看護技術をピックアップし、現場で使用する物品を用いての看護ケアマニュアルを看護職員全員で役割分担し作成した。
【実践】
(1)「新人職員・異動職員指導用確認リスト」2020年作成
新入職員と異動職員が看護職員として入職した際に、教育指導に関するマニュアルがなく、指導不足や指導方法の偏りがあった。マニュアルを制定することで、指導を行う看護職員も受ける看護職員も安心して統一した学びを得ることを目的として作成した。
(2)「看護職員のあるべき姿」2021年作成
職員の仕事に対する評価指標が曖昧で、仕事に対するモチベーションにも差があるため全看護職員に対して2021年にアンケートを実施した。アンケートでは、職員が理想とする自施設看護職員像のテーマで意見を提出し、テキストマイニングを用いて視覚化した後に、重要なキーワードを抽出して「看護職員のあるべき姿」を構築した。
(3)「看護ケアマニュアル」2021年作成
新入職員と異動職員への指導の際に、ケアの根拠となるマニュアルがない項目が看護ケアには多くあった。指導者側もマニュアルがないために自らの感覚や知識で独自の指導をするために、指導を受ける側は指導者毎に異なる指導を受けて混乱することがあった。また、既に働いている看護職員もベテランが多く、最新の根拠に準じた看護ケアを学ぶ機会として全職員で技術項目を振り分けてマニュアルを構築した。
上記3つを2020年から取り組みを開始し、3年以上継続してきたが取り組みを評価することがなかったので、職員アンケートを実施し評価修正を行うこととした。
【結果】
2024年6月現在で所属する17名の看護職員に取り組みに対する評価アンケートを回答いただき以下の結果を得た。
(1)使用してみての教育計画マニュアルが新人や異動職員の働きやすさを向上させているか?
(教育計画マニュアルを使用した事がある17名中10名)
とても向上させている50% まあまあ向上させている50%
あまり効果がなかった0% 全く効果はなかった0%
(2)看護職員のあるべき姿を意識して働いていますか?
日々意識して働いている17.6%
朝礼時など内容を確認するタイミングで思い出し意識している82.4%
あまり意識していない0% 全く意識していない0%
(3)看護職員のあるべき姿があることで、看護職員として働く意味ややりがいなどを再確認できていますか?
とても出来ている11.8% まあまあ出来ている76.5%
あまり出来ていない11.8% 全くできていない0%
(4)看護ケアマニュアルを活用して働いていますか?
とてもできている0% まあまあできている41.2%
あまりできていない52.9% 全くできていない5.9%
(5)看護ケアマニュアルがあることで看護職員の働きやすさを向上させているか?
とても向上させている29.4% まあまあ向上させていうる64.7%
あまり効果はなかった5.9% 全く効果なかった0%
【考察】
・「新人職員・異動職員指導用確認リスト」
使用することで働きやすさの向上がみられる結果であった。ケアや業務の指導を受け評価するだけでなく、定期的に面談も行われるため不安や疑問に関し相談や助言を上司や指導者から受けることができ、不安軽減や働きやすさの向上に繋がった。指導者側もマニュアルがあることで安心して指導が行えたと意見もあり双方に効果があったと考える。
・「看護職員のあるべき姿」
自施設の看護職員として働く理想像であり、看護の仕事全体を網羅する内容で作成された。アンケート結果では共通目標があることで仕事に責任感や緊張感をもって臨め、意識を高く保つのに役立っていると意見があった。毎週の看護朝礼で作成した全文を復唱し、定期的な振り返りを行うことで、文章の定着と看護職員の役割の意識づけに繋がったと考えられる。
・「看護ケアマニュアル」
各自の知識や技術の振り返りのために作成。自施設の看護職員は勤続10年以上のベテラン職員が半数を占め、新人のように看護ケアマニュアルを用いて振り返りを行う場面やきっかけが無いと意見が多かった。その半面で、看護ケアマニュアルがあることで看護職員の働きやすさには寄与していることも分かる結果であった。新人や異動職員以外も看護ケアマニュアルを使用する機会を作るための仕組みづくりが課題と判明した。
【まとめ】
看護職員が安心安全に働きやすい職場を整えるため教育計画とマニュアルを作成し、看護職員として働く上でのあるべき姿を文章化した。今回のアンケートでは、取り組み内容に効果を感じられるという結果となった。実施から3年が過ぎたので見直しや修正をしながら、現在の結果が維持できるよう職場の環境作りを継続的に取り組んでいきたい。
介護老人保健施設の看護職員は、新卒職員が入職することが少なく教育体制やマニュアルの構築が不十分であった。これまでは、教育に関する伝達事項が口頭で伝達する項目が多く、新入職員や異動職員が働きやすい職場環境とは言い難い状況であった。また、看護職員として働く上での共通目標がなく、働くやり甲斐が不透明であることから看護職員が定着しない実情もあった。
そこで、働きやすい環境を整えるために規範やマニュアル作成、教育体制構築が必要と感じ取り組んできた。その実践内容と、運用開始して3年以上が経過した取り組みの評価を現職の看護職員へアンケートを実施したので、その結果について報告する。
【取り組みの目的】
看護職員が安心安全に働きやすい職場を構築する
【方法】
・「新人職員・異動職員指導用確認リスト」を作成し、新人と異動職員に対する教育とサポート体制作りを行う。
・看護職員として働く上での共通目標「看護職員のあるべき姿」を看護職員全員で考え文章化した。これにより、病院などで働く看護師との違いも意識して働いてもらうことで、自施設の看護職員としての役割意識の定着を図った。
・自施設で習得する必要のある看護技術をピックアップし、現場で使用する物品を用いての看護ケアマニュアルを看護職員全員で役割分担し作成した。
【実践】
(1)「新人職員・異動職員指導用確認リスト」2020年作成
新入職員と異動職員が看護職員として入職した際に、教育指導に関するマニュアルがなく、指導不足や指導方法の偏りがあった。マニュアルを制定することで、指導を行う看護職員も受ける看護職員も安心して統一した学びを得ることを目的として作成した。
(2)「看護職員のあるべき姿」2021年作成
職員の仕事に対する評価指標が曖昧で、仕事に対するモチベーションにも差があるため全看護職員に対して2021年にアンケートを実施した。アンケートでは、職員が理想とする自施設看護職員像のテーマで意見を提出し、テキストマイニングを用いて視覚化した後に、重要なキーワードを抽出して「看護職員のあるべき姿」を構築した。
(3)「看護ケアマニュアル」2021年作成
新入職員と異動職員への指導の際に、ケアの根拠となるマニュアルがない項目が看護ケアには多くあった。指導者側もマニュアルがないために自らの感覚や知識で独自の指導をするために、指導を受ける側は指導者毎に異なる指導を受けて混乱することがあった。また、既に働いている看護職員もベテランが多く、最新の根拠に準じた看護ケアを学ぶ機会として全職員で技術項目を振り分けてマニュアルを構築した。
上記3つを2020年から取り組みを開始し、3年以上継続してきたが取り組みを評価することがなかったので、職員アンケートを実施し評価修正を行うこととした。
【結果】
2024年6月現在で所属する17名の看護職員に取り組みに対する評価アンケートを回答いただき以下の結果を得た。
(1)使用してみての教育計画マニュアルが新人や異動職員の働きやすさを向上させているか?
(教育計画マニュアルを使用した事がある17名中10名)
とても向上させている50% まあまあ向上させている50%
あまり効果がなかった0% 全く効果はなかった0%
(2)看護職員のあるべき姿を意識して働いていますか?
日々意識して働いている17.6%
朝礼時など内容を確認するタイミングで思い出し意識している82.4%
あまり意識していない0% 全く意識していない0%
(3)看護職員のあるべき姿があることで、看護職員として働く意味ややりがいなどを再確認できていますか?
とても出来ている11.8% まあまあ出来ている76.5%
あまり出来ていない11.8% 全くできていない0%
(4)看護ケアマニュアルを活用して働いていますか?
とてもできている0% まあまあできている41.2%
あまりできていない52.9% 全くできていない5.9%
(5)看護ケアマニュアルがあることで看護職員の働きやすさを向上させているか?
とても向上させている29.4% まあまあ向上させていうる64.7%
あまり効果はなかった5.9% 全く効果なかった0%
【考察】
・「新人職員・異動職員指導用確認リスト」
使用することで働きやすさの向上がみられる結果であった。ケアや業務の指導を受け評価するだけでなく、定期的に面談も行われるため不安や疑問に関し相談や助言を上司や指導者から受けることができ、不安軽減や働きやすさの向上に繋がった。指導者側もマニュアルがあることで安心して指導が行えたと意見もあり双方に効果があったと考える。
・「看護職員のあるべき姿」
自施設の看護職員として働く理想像であり、看護の仕事全体を網羅する内容で作成された。アンケート結果では共通目標があることで仕事に責任感や緊張感をもって臨め、意識を高く保つのに役立っていると意見があった。毎週の看護朝礼で作成した全文を復唱し、定期的な振り返りを行うことで、文章の定着と看護職員の役割の意識づけに繋がったと考えられる。
・「看護ケアマニュアル」
各自の知識や技術の振り返りのために作成。自施設の看護職員は勤続10年以上のベテラン職員が半数を占め、新人のように看護ケアマニュアルを用いて振り返りを行う場面やきっかけが無いと意見が多かった。その半面で、看護ケアマニュアルがあることで看護職員の働きやすさには寄与していることも分かる結果であった。新人や異動職員以外も看護ケアマニュアルを使用する機会を作るための仕組みづくりが課題と判明した。
【まとめ】
看護職員が安心安全に働きやすい職場を整えるため教育計画とマニュアルを作成し、看護職員として働く上でのあるべき姿を文章化した。今回のアンケートでは、取り組み内容に効果を感じられるという結果となった。実施から3年が過ぎたので見直しや修正をしながら、現在の結果が維持できるよう職場の環境作りを継続的に取り組んでいきたい。