講演情報
[14-O-P102-06]効果あり!多職種で整えたデジタル化で3000時間削減
*金田 ゆき1、大谷 和雅1、橋阪 清貴1、面谷 知一1、村井 大也1、鴻田 敦子1 (1. 大阪府 松下介護老人保健施設はーとぴあ)
限りある人材・時間を活かすため各部署で業務改善を推進していたが、取り組みを加速させる目的で、
施設の重点取り組みに『経営基盤強化のための業務改善』が明示され、デジタル化の強化を図る事となった。
ICT委員会が推進役となり「費用対効果を見込んだICT化」「ペーパーレス化の地道な推進・紙メモの文化・風土改善」について仕組みを整えた結果、2年間で約3000時間・約750万円のコスト削減に繋がった。
施設の重点取り組みに『経営基盤強化のための業務改善』が明示され、デジタル化の強化を図る事となった。
ICT委員会が推進役となり「費用対効果を見込んだICT化」「ペーパーレス化の地道な推進・紙メモの文化・風土改善」について仕組みを整えた結果、2年間で約3000時間・約750万円のコスト削減に繋がった。
【はじめに】
当施設は超強化型の老健で、入所定員100人に対し平均入所人数98.7人・ベッド 回転率20%前後通所リハビリ定員89人に対し平均利用人数70.4人・リハビリ会議は月80件前後実施している。
このように高稼働高回転の運用で、各部署とも業務・情報・取り扱い書類などの量も多く、負担が増えやすい環境にある。
老健の運営を継続するためには、サービスの質を保ちながら職員の負担軽減に努める事が必須であり、これまでも業務改善には取り組んでいたが、デジタル化についての取りまとめ先が無く、改革の進捗や効果などの情報発信も不十分で推進力が弱かった。
そこで、2022年度に施設の重点取組みとして『経営基盤強化のための業務改善』が明示され、デジタル機能を使った業務効率化を施設一丸となって加速させるために、多職種で構成されたICT委員会が推進役を担う事になった。
【取組み内容】
(1)ICT委員会の推進内容
・職場アンケートを実施し課題を抽出。100件近い項目が洗い出された
・課題に優先順位を付け、進捗をオープンにしながら対策に取り組んだ
・課題を解決するための情報収集と、知識を得るため展示会の視察や、ICT運用施設の見学、デジタル化講座を受講しスキルアップを図った
・デジタル化を進める中で、職員が取り残された感覚を持たないよう「パソコンよろず相談」窓口を開設し、フォローできる体制を整えた
(2)主なデジタル化の取組み
1.タブレット端末(iPad、iPhone)を用いたペーパーレス化の促進
・判定会議で用いる利用者情報を撮影しデータで情報共有
・回診しながら記録を入力
・ケアプランの内容を撮影し、確認資料印刷なしへ
・家屋状況や保険証類、お薬手帳など必要な情報を撮影しデータ化
・リハビリの様子を動画で撮影し、ご利用者やご家族への説明時に活用
・電子カタログ的な活用
2.申し送りや連絡を、手書きから電子化(Excel)へ
・同部署だけでなく他部署間の申送りもパソコンで確認できるようになった
・急がない連絡は電話ではなくデータにて伝えるルールにした
・電子化により、過去の申し送りも簡単に検索できるようになった
・申し送り内容を電子カルテにペースト入力でき、情報の二重入力(紙メモと電子カルテ入力)が不要となった
・個人情報の紛失リスクが軽減
3.グループウェアソフト(O365)を活用した運用
・職員全員が使用できるように環境を整備
・スケジュール機能を使い、会議室や社用車の予約をはじめ、職員の予定合わせも簡単になった
・職員への連絡事項を個人、部署、委員会など、必要な単位でメール送信
・アンケート機能を使い、アンケートもペーパーレス化。結果も自動集計
4.プロジェクターやモニター活用し会議資料をペーパーレス化
・プロジェクターやモニター、パソコンを会議室に常設
・議事録を投影しながら会議中に記録を入力し事後作業を無くした
・資料準備やファイリング、破棄時間を無くした
5.作成工程を含めた勤務表の見直し
・各職員が手書きした勤務希望表を担当者がパソコンに転記していた流れを、各職員が直接パソコンに入力する運用に変更
市販ソフトでは希望の機能が網羅できず、自分達でExcelを学び、望む機能を実装した表を開発し、勤務表の作成時間を短縮した
6.ライフレンズ導入、インカムによる業務効率化
・費用対効果を検証し導入
・職員が活用しやすいように配慮した運用を検討しマニュアルを作成
・導入後も定期的なミーティングや必要時に業者と一緒に検討を行い、運用の軌道修正を図っている
(3)今後の課題と対策
・導入されるシステムが高度になると職員に拒否感がでる懸念
・新しい取り組みの定着化に時間がかかる
→モニタリングや社内教育、周知とフォローを継続して行う
・委員会のマンネリ化
→厚労省「介護分野における生産性向上ポータルサイト」の活用や、展示会・他施設見学などで新しい知識を補充
【結果】
・業務見直しとペーパーレス移行件数(2024.6現在)
課題:118件
→ペーパーレス化:54件
→現状維持:22件
→検討中:42件
・削減時間
2022年度1,542時間
2023年度1,614時間→計:3,156時間 削減
・削減コスト
2022年度385万円
2023年度360万円→計:745万円 削減
・月平均超勤時間→2022年度より169時間減少(職員105人程度)
・事業収支改善額→2022年度より約6,000万円改善
【考察】
・「経営目標を達成するために改革が必要」という事が職員に周知され、委員会のやる気も高まり、且つ現場の抵抗感も減りデジタル化を推進しやすい環境になった
・職員の勤務時間が削減(超勤時間の減少)されたにもかかわらず、事業収支を大幅に改善できたという事は、働き方が効率的になったと考えられる
・デジタル化に関する情報が「ICT委員会」で一元管理され、判断が早くできるようになった
・考えやすい項目から検討し始めた事で、ディスカッションも活発になりICT委員会もデジタル改革を楽しみながら推進できた
・「パソコンよろず相談」には、月4件程度の相談があり、個別フォローを行い不安解消に繋げた。また、職員の困り事がデジタル化のヒントになった
・新しいソフトやハードウェアの導入に加え、自施設のレベルに合わせたルール作りが大切である
【まとめ】
「理念なき経営は最悪、経営なき理念は最低」 これは、施設長が発信した施設方針のキャッチフレーズである。
デジタル化の改革は経営を支える大きな柱であり、施設全体で方針が広まった事により、新しい提案を気軽に相談できる風通しの良い職場へと進化できた。
2024年度の介護報酬改定では「生産性向上推進体制加算」が新設され、ご利用者の安全やケアの質を確保しながらも、テクノロジーを駆使し職員の負担軽減や勤務状況への配慮がはっきりと老健に求められた。
今後も、それらを鑑み、施設に合う運用をみんなで検討し「便利になった」「これからも良くなっていく」など職員自身が納得感を持ちながら明るく前向きにデジタル化が進められるよう邁進したい。
当施設は超強化型の老健で、入所定員100人に対し平均入所人数98.7人・ベッド 回転率20%前後通所リハビリ定員89人に対し平均利用人数70.4人・リハビリ会議は月80件前後実施している。
このように高稼働高回転の運用で、各部署とも業務・情報・取り扱い書類などの量も多く、負担が増えやすい環境にある。
老健の運営を継続するためには、サービスの質を保ちながら職員の負担軽減に努める事が必須であり、これまでも業務改善には取り組んでいたが、デジタル化についての取りまとめ先が無く、改革の進捗や効果などの情報発信も不十分で推進力が弱かった。
そこで、2022年度に施設の重点取組みとして『経営基盤強化のための業務改善』が明示され、デジタル機能を使った業務効率化を施設一丸となって加速させるために、多職種で構成されたICT委員会が推進役を担う事になった。
【取組み内容】
(1)ICT委員会の推進内容
・職場アンケートを実施し課題を抽出。100件近い項目が洗い出された
・課題に優先順位を付け、進捗をオープンにしながら対策に取り組んだ
・課題を解決するための情報収集と、知識を得るため展示会の視察や、ICT運用施設の見学、デジタル化講座を受講しスキルアップを図った
・デジタル化を進める中で、職員が取り残された感覚を持たないよう「パソコンよろず相談」窓口を開設し、フォローできる体制を整えた
(2)主なデジタル化の取組み
1.タブレット端末(iPad、iPhone)を用いたペーパーレス化の促進
・判定会議で用いる利用者情報を撮影しデータで情報共有
・回診しながら記録を入力
・ケアプランの内容を撮影し、確認資料印刷なしへ
・家屋状況や保険証類、お薬手帳など必要な情報を撮影しデータ化
・リハビリの様子を動画で撮影し、ご利用者やご家族への説明時に活用
・電子カタログ的な活用
2.申し送りや連絡を、手書きから電子化(Excel)へ
・同部署だけでなく他部署間の申送りもパソコンで確認できるようになった
・急がない連絡は電話ではなくデータにて伝えるルールにした
・電子化により、過去の申し送りも簡単に検索できるようになった
・申し送り内容を電子カルテにペースト入力でき、情報の二重入力(紙メモと電子カルテ入力)が不要となった
・個人情報の紛失リスクが軽減
3.グループウェアソフト(O365)を活用した運用
・職員全員が使用できるように環境を整備
・スケジュール機能を使い、会議室や社用車の予約をはじめ、職員の予定合わせも簡単になった
・職員への連絡事項を個人、部署、委員会など、必要な単位でメール送信
・アンケート機能を使い、アンケートもペーパーレス化。結果も自動集計
4.プロジェクターやモニター活用し会議資料をペーパーレス化
・プロジェクターやモニター、パソコンを会議室に常設
・議事録を投影しながら会議中に記録を入力し事後作業を無くした
・資料準備やファイリング、破棄時間を無くした
5.作成工程を含めた勤務表の見直し
・各職員が手書きした勤務希望表を担当者がパソコンに転記していた流れを、各職員が直接パソコンに入力する運用に変更
市販ソフトでは希望の機能が網羅できず、自分達でExcelを学び、望む機能を実装した表を開発し、勤務表の作成時間を短縮した
6.ライフレンズ導入、インカムによる業務効率化
・費用対効果を検証し導入
・職員が活用しやすいように配慮した運用を検討しマニュアルを作成
・導入後も定期的なミーティングや必要時に業者と一緒に検討を行い、運用の軌道修正を図っている
(3)今後の課題と対策
・導入されるシステムが高度になると職員に拒否感がでる懸念
・新しい取り組みの定着化に時間がかかる
→モニタリングや社内教育、周知とフォローを継続して行う
・委員会のマンネリ化
→厚労省「介護分野における生産性向上ポータルサイト」の活用や、展示会・他施設見学などで新しい知識を補充
【結果】
・業務見直しとペーパーレス移行件数(2024.6現在)
課題:118件
→ペーパーレス化:54件
→現状維持:22件
→検討中:42件
・削減時間
2022年度1,542時間
2023年度1,614時間→計:3,156時間 削減
・削減コスト
2022年度385万円
2023年度360万円→計:745万円 削減
・月平均超勤時間→2022年度より169時間減少(職員105人程度)
・事業収支改善額→2022年度より約6,000万円改善
【考察】
・「経営目標を達成するために改革が必要」という事が職員に周知され、委員会のやる気も高まり、且つ現場の抵抗感も減りデジタル化を推進しやすい環境になった
・職員の勤務時間が削減(超勤時間の減少)されたにもかかわらず、事業収支を大幅に改善できたという事は、働き方が効率的になったと考えられる
・デジタル化に関する情報が「ICT委員会」で一元管理され、判断が早くできるようになった
・考えやすい項目から検討し始めた事で、ディスカッションも活発になりICT委員会もデジタル改革を楽しみながら推進できた
・「パソコンよろず相談」には、月4件程度の相談があり、個別フォローを行い不安解消に繋げた。また、職員の困り事がデジタル化のヒントになった
・新しいソフトやハードウェアの導入に加え、自施設のレベルに合わせたルール作りが大切である
【まとめ】
「理念なき経営は最悪、経営なき理念は最低」 これは、施設長が発信した施設方針のキャッチフレーズである。
デジタル化の改革は経営を支える大きな柱であり、施設全体で方針が広まった事により、新しい提案を気軽に相談できる風通しの良い職場へと進化できた。
2024年度の介護報酬改定では「生産性向上推進体制加算」が新設され、ご利用者の安全やケアの質を確保しながらも、テクノロジーを駆使し職員の負担軽減や勤務状況への配慮がはっきりと老健に求められた。
今後も、それらを鑑み、施設に合う運用をみんなで検討し「便利になった」「これからも良くなっていく」など職員自身が納得感を持ちながら明るく前向きにデジタル化が進められるよう邁進したい。