講演情報

[14-O-P103-05]100の強みとニーズに沿った情報発信

*西山 泰之1 (1. 神奈川県 介護老人保健施設かまくら)
PDFダウンロードPDFダウンロード
強みの把握とニーズの把握、そして情報発信は、営業活動の基本的項目である。やっている、できていると思っていたが、改めて評価してみるとできていない部分が数多くあった。この3つの営業の基本項目について、新たにおこなった取り組みを分析し整理した。
【目的・背景】
老健かまくらの通所リハビリテーションは、定員40名で長時間型が10時から16時、短時間型が10時から11時30分と13時から14時30分でそれぞれ10名の計20名の定員で営業している。短時間デイケアは令和4年度の平均利用者数は6.1で稼働率30.5%であった。様々な営業活動を工夫した結果、令和5年3月の短時間デイケアの平均利用者数は13.6、稼働率68.0%となった。長時間デイケアも合わせた平均利用者数は令和5年3月で42.8、稼働率71.3%となり、前年同月比5.7、稼働率は9.5ポイントの増加となった。
稼働率向上の要因となった今年度の活動について分析し、将来的な稼働安定のための技術継承を研究の目的としている。
【強みの把握】
営業活動をするにあたり、自事業所の強みをアピールすることは重要である。当施設の強みとしては、リハビリテーションが充実している、送迎範囲が広い、食事がおいしいなどがある。しかし、見学者やケアマネジャーとコミュニケーションをとるうちに、当事業所では当然のように行っているサービスの中には、他事業所では行っていないものも数多くあった。その中には、車いす対応の車両がないので車いすになったら送迎できないというものだった。高齢者通所サービスでは車いす対応の車両を準備するのが当たり前と思っていたのだが、そういった小規模な事業所もあるようだ。しかしこれは、送迎範囲内であればどんな状態でも送迎するという当事業所にとっては大きな強みである。こうした強みを100個挙げた。
【ニーズの把握】
令和5年度の営業目標の一つが、短時間デイケアの稼働向上であった。そのために、利用者のニーズを把握することが急務であった。
長時間デイケアのニーズは、リハビリのあるデイサービスであった。利用者や家族の最優先事項は時間であり、それに加えてリハビリをしたいというものだった。しかし、短時間デイケアの最優先事項はリハビリ、2番目が時間であった。長時間デイケアはできるだけ長時間サービスを利用したい、短時間デイケアはできるだけ短時間で済ませたいと、時間に対するニーズはまったく逆だった。
また、見学対応や契約の中で違和感のある質問や意見があった。送迎があるのはうれしい。運動用の着替えは必要か。鍵付きのロッカールームはあるか。見学の翌日から利用したいといったものである。見学の際は氏名、電話番号、住所の情報しかなく、利用する場合にはADLや既往歴などの情報が不可欠であり、その情報をもとに判定し、ケアマネジャーも同席したサービス担当者会議と契約をするため、最初の見学から最短でも一週間程度の時間が必要となる。見学の翌日から利用するのはまず不可能である。しかし、ニーズの捉え方を変えると答えが見えてきた。短時間デイケアの利用者は、送迎付きのスポーツジムと思っているようなのだ。そう考えると前述の質問や意見にも納得がいく。
そこで当事業所では、介護、高齢者といった価値観を捨て、無料ドリンクサーバーの設置、プロテインの提供、無料wifiの設置など、自分たちがスポーツジムにあったらうれしいサービスを提供し始めた。
【情報発信】
どんなによいサービスを提供しても、それが伝わらなければ顧客獲得にはつながらない。利用者家族やケアマネジャーがサービスを評価できるように情報発信していくことが顧客獲得につながると考え、様々な情報発信の手段を講じた。
まずは配布物のデザインを変更し、フォントや文字サイズを見やすいものに変更した。また、持ってこなくてもよいものも記載した。タオルやシャンプー、飲み物なども用意があることを明記し、準備が少ないという当施設の強みをアピールした。
公式LINEを開設し、家族やケアマネジャーとのコミュニケーションに活用している。LINEでは、休みの連絡や新規利用の相談だけでなく、利用中のリハビリやレクリエーションの動画などを定期的に送信している。時間を問わず連絡できるため、特に就労している家族には好評である。
施設からの情報発信の手段として、インスタグラムなどのSNSを活用している事業所もあるが、当施設ではブログを活用している。週に1回程度の更新をして、レクリエーションの様子などを発信している。
公式サイトのリニューアルも行った。業者に依頼しなくても自分たちで修正更新ができるように変更し、よりタイムリーで詳細な情報発信できるようになった。日本一情報量の多い老健公式サイトを目指して、現在も更新し続けている。
介護事業所にとってクチコミによる影響はとても大きい。クチコミに関する研修や論文などを研究し、クチコミを拡散させるための手法を独自に開発した。クチコミとは雑談であり、聞いた人が面白いと感じて、次の人に話したいと思わせる工夫が肝心である。まずはインパクトのある短い文章で相手の興味を引き付け、具体的なエピソードを交えて話す。話すタイミングも重要で、サービス担当者会議の後などのリラックスした状況が望ましい。また、感情をのせて話すことも重要である。クチコミは、悪い評価のクチコミの方が拡散しやすい。それは、ポジティブな感情の話よりも、ネガティブな感情の話の方が面白く他人に話しやすいからである。それを逆手に取り、ネガティブな感情の良い評価のエピソードいくつか用意し、相手の様子や状況の応じて話すようにした。半年くらい経過したころから反応が返ってくるようになり、クチコミが順調に拡散せれていると実感した。
【まとめ】
稼働向上のための研修や本などでも、強みの把握、ニーズの把握、情報発信の3つは重要だとある。できていると思っていたが、実際に相談員として活動してみるとできていない部分が多くあった。稼働向上のため、この3つの基本を今後もしっかりとおこなっていきたい。