講演情報
[14-O-P104-02]私たちはどう変わるか~介護力向上チームの立ち上げを経て~
*阪本 浩宣1、大塚 麻衣1 (1. 岐阜県 中津川ナーシングピア)
人手不足を理由に業務優先になっていた介護の在り方を見直す目的で、職員教育と業務改善を活動の柱とする介護力向上チームを発足した。チーム員が中心となり目前の課題であった技能実習生と介護補助の採用を具体化し業務環境を整備、グループに細分化した。それにより担当フロアの利用者との関わりが密接になり、主体的に問題抽出と解決に取り組むようになった。この取り組みは当施設介護の長年のマンネリ化改善の一歩となった。
介護施設における人材不足は、年々深刻化しており解決に至らない状況が続いている。そのような状況下であっても、施設利用者への介護の質の低下は絶対にあってはならない事はいうまでもない。しかしながら私たちは、目の前の作業的業務を毎日滞りなくすすめていくことばかりを考え、入所者の生活や療養を援助する視点を見失う傾向に陥っていた。
また受け身的に業務を与えられ、それをこなすことに精一杯になっていて、支援の中に介護士としての根拠に基づいた専門的知識を用いて主体的に行動することができなくなってしまっていた。
そのため介護職員全体が、作業中心の考え方から施設利用者中心の考え方へシフトチェンジすることにより、自分たちの介護の在り方を見直し、体質を改善していく必要があった。
【目的】
個々が自主的に職場をより良くする意識が持てるようになり、さらには自己啓発の意欲を高めて介護の質を向上させる。
【方法】
方法(1)介護力向上チームの発足
令和5年5月、有志を募り介護力向上チームを結成した。現在のメンバーは介護福祉士5名、看護師3名、事務長の9名で構成されている。チームにおける主な活動内容は、職員教育と業務改善への取り組みである。
方法(2)グループの細分化
当施設は本館2フロア、別棟1フロアの3つのフロアで構成されている。今回の活動を始める以前においては、介護職員は、全てのフロアをシフト制で担当していた。この場合、100人以上の施設入所者のADL、認知度、社会的背景、さらには日々変化する状況の把握は必須ではあるのだが、それは極めて困難なことであった。そこで、介護職員を3つのグループに分け、各フロアを担当するよう職員の配置変更を行った。
職員配置を三分割することにより、担当する利用者の絶対数が減るため、状態の把握を密にすることが可能となった。また、1グループの少人数化により、仲間意識や結束力を高める効果も期待された。
なお、今回のグループの細分化については,看護師からの賛同も得られたため、看護師も同様に3つのグループに分けて編成を行った。看護師は施設業務を行う上でリーダー的な役割を担う立場でもあり、同職がそれぞれのグループでリーダーシップを養う事が期待された。
方法(3)特定技能実習生採用による人材確保
当施設では令和6年1月より特定技能実習生の採用を開始した。技能実習生を迎えるにあたり、日常生活援助マニュアルや介護技術到達確認のチェックリストを作成し直した。これにより、自分たちの基本的な介護技術を再確認するとともに、指導担当の職員により指導内容の差異が生じないようにすることで、技能実習生の困惑を招かないようにした。
方法(4)介護補助職採用による業務分担
業務の中でも、利用者に直接的に関わる援助(移動・移乗、食事、排泄、入浴等)と,それ以外の業務を選別した。介護補助職を採用して、居室の清掃、ごみ収集、お茶汲み、食器洗い、食事の後片付け、台ふき、マスクの配布・回収等を担当する事とした。
【結果】
方法(1)によるプラスの変化:
・当施設が介護サービスの向上に向けて、動き出したことの決意表明を形としてあらわせた。
方法(1)によるマイナスの変化:
・向上チーム導入時、活動の成果がすぐには見られなかったことから、向上チームに対する不信感や不満があった。
方法(2)によるプラスの変化:
・担当フロアの利用者との関係が密接になり、特定の職員との関わりで利用者の安心感につながった。
・担当フロアの利用者とは日々関わるので、小さな変化にも気づきやすくなった。
・利用者の個別性を把握し対応しやすくなった。
・各グループのリーダーとサブリーダーを選出し、役割を与えられた者の責任感を生んだ。
・リーダーとサブリーダーを選出したメンバーが、それらを支え活動を盛り上げようという士気が向上した。
・月1回開催するグループミーティングの出席率が上がり、活動単位が少人数になったため発言しやすく討議の場が活性化した。
方法(2)によるマイナスの変化:
・活動単位の変化が職員全体の不安や不満につながったが、時間の経過と共に慣れていった。
・根本的な人手不足は解消されていないため、グループのメンバーのみで必要人数を確保することができず、他のグループからの応援を要し、完全なフロア制とはならなかった。
方法(3)によるプラスの変化:
・指導を担当する職員は、自身の支援方法が適切かの見直しや再確認、訂正することにつながった。
方法(3)によるマイナスの変化:
・指導を担当する職員の負担が増大した。
方法(4)によるプラスの変化:
・業務を整理し、入所者の身体介護を中心に、直接的に関わる時間を確保したり増やしたりできた。
方法(4)によるマイナスの変化:
・介護補助者同士の人間関係にひずみが生じた。
【考察】
業務内容変更に伴う利点と欠点が混在したものの、全体的には利点が上回り、成果はあったと考えられる。業務改善の部分では、業務の整理で介護士としての専門性を発揮しやすい環境に整備できたが、職員教育の部分では整備が不十分で、職員の負担が大きいままにある。教育・指導のすすめ方の検討が今後の課題である。
これまでの介護力向上チームの活動は、利用者目線に立った介護を目指す足がかりにすぎない。介護職は,今後も多職種の中で,最も日常的に入所者と接する一番の理解者であることを自負し、施設介護を作り上げるべきものと考える。
【まとめ】
今回私たちが行ったグループの細分化による体制の変更は、新たなリーダーとなり得る人物の選出で結果的に人材の底上げにつながり、今後の施設介護の変革の中心的存在となって活躍する事が期待された。また、そうした人材をモデルとし他のスタッフが、スキルアップに向けて自己啓発に努めていく環境が整備された。
また受け身的に業務を与えられ、それをこなすことに精一杯になっていて、支援の中に介護士としての根拠に基づいた専門的知識を用いて主体的に行動することができなくなってしまっていた。
そのため介護職員全体が、作業中心の考え方から施設利用者中心の考え方へシフトチェンジすることにより、自分たちの介護の在り方を見直し、体質を改善していく必要があった。
【目的】
個々が自主的に職場をより良くする意識が持てるようになり、さらには自己啓発の意欲を高めて介護の質を向上させる。
【方法】
方法(1)介護力向上チームの発足
令和5年5月、有志を募り介護力向上チームを結成した。現在のメンバーは介護福祉士5名、看護師3名、事務長の9名で構成されている。チームにおける主な活動内容は、職員教育と業務改善への取り組みである。
方法(2)グループの細分化
当施設は本館2フロア、別棟1フロアの3つのフロアで構成されている。今回の活動を始める以前においては、介護職員は、全てのフロアをシフト制で担当していた。この場合、100人以上の施設入所者のADL、認知度、社会的背景、さらには日々変化する状況の把握は必須ではあるのだが、それは極めて困難なことであった。そこで、介護職員を3つのグループに分け、各フロアを担当するよう職員の配置変更を行った。
職員配置を三分割することにより、担当する利用者の絶対数が減るため、状態の把握を密にすることが可能となった。また、1グループの少人数化により、仲間意識や結束力を高める効果も期待された。
なお、今回のグループの細分化については,看護師からの賛同も得られたため、看護師も同様に3つのグループに分けて編成を行った。看護師は施設業務を行う上でリーダー的な役割を担う立場でもあり、同職がそれぞれのグループでリーダーシップを養う事が期待された。
方法(3)特定技能実習生採用による人材確保
当施設では令和6年1月より特定技能実習生の採用を開始した。技能実習生を迎えるにあたり、日常生活援助マニュアルや介護技術到達確認のチェックリストを作成し直した。これにより、自分たちの基本的な介護技術を再確認するとともに、指導担当の職員により指導内容の差異が生じないようにすることで、技能実習生の困惑を招かないようにした。
方法(4)介護補助職採用による業務分担
業務の中でも、利用者に直接的に関わる援助(移動・移乗、食事、排泄、入浴等)と,それ以外の業務を選別した。介護補助職を採用して、居室の清掃、ごみ収集、お茶汲み、食器洗い、食事の後片付け、台ふき、マスクの配布・回収等を担当する事とした。
【結果】
方法(1)によるプラスの変化:
・当施設が介護サービスの向上に向けて、動き出したことの決意表明を形としてあらわせた。
方法(1)によるマイナスの変化:
・向上チーム導入時、活動の成果がすぐには見られなかったことから、向上チームに対する不信感や不満があった。
方法(2)によるプラスの変化:
・担当フロアの利用者との関係が密接になり、特定の職員との関わりで利用者の安心感につながった。
・担当フロアの利用者とは日々関わるので、小さな変化にも気づきやすくなった。
・利用者の個別性を把握し対応しやすくなった。
・各グループのリーダーとサブリーダーを選出し、役割を与えられた者の責任感を生んだ。
・リーダーとサブリーダーを選出したメンバーが、それらを支え活動を盛り上げようという士気が向上した。
・月1回開催するグループミーティングの出席率が上がり、活動単位が少人数になったため発言しやすく討議の場が活性化した。
方法(2)によるマイナスの変化:
・活動単位の変化が職員全体の不安や不満につながったが、時間の経過と共に慣れていった。
・根本的な人手不足は解消されていないため、グループのメンバーのみで必要人数を確保することができず、他のグループからの応援を要し、完全なフロア制とはならなかった。
方法(3)によるプラスの変化:
・指導を担当する職員は、自身の支援方法が適切かの見直しや再確認、訂正することにつながった。
方法(3)によるマイナスの変化:
・指導を担当する職員の負担が増大した。
方法(4)によるプラスの変化:
・業務を整理し、入所者の身体介護を中心に、直接的に関わる時間を確保したり増やしたりできた。
方法(4)によるマイナスの変化:
・介護補助者同士の人間関係にひずみが生じた。
【考察】
業務内容変更に伴う利点と欠点が混在したものの、全体的には利点が上回り、成果はあったと考えられる。業務改善の部分では、業務の整理で介護士としての専門性を発揮しやすい環境に整備できたが、職員教育の部分では整備が不十分で、職員の負担が大きいままにある。教育・指導のすすめ方の検討が今後の課題である。
これまでの介護力向上チームの活動は、利用者目線に立った介護を目指す足がかりにすぎない。介護職は,今後も多職種の中で,最も日常的に入所者と接する一番の理解者であることを自負し、施設介護を作り上げるべきものと考える。
【まとめ】
今回私たちが行ったグループの細分化による体制の変更は、新たなリーダーとなり得る人物の選出で結果的に人材の底上げにつながり、今後の施設介護の変革の中心的存在となって活躍する事が期待された。また、そうした人材をモデルとし他のスタッフが、スキルアップに向けて自己啓発に努めていく環境が整備された。