講演情報

[14-O-P104-08]送迎業務における安全な作業の仕組みづくり基本作業動作の確立と運転員・添乗員の安全意識の向上

*大野 和好1、梅澤 敏1、浅野 秀樹1 (1. 新潟県 介護老人保健施設てらどまり)
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送迎業務は、事故を起こさず、常に安全な作業が求められる。しかしながら明確な手順書が存在していなかった。そこで、事故発生を食い止めるため、現状作業の問題点を洗い出し対策を立て、作業標準書を作成した。さらに定着に向け、動画・他者点検シートを用い展開した。その結果、運転員及び添乗員の動作が統一・継続され安全作業の精度向上に繋がり、取り組み以降事故は発生していない。作業の標準化と定着化の大切さを伝えたい。
【はじめに】
 ご利用者を送迎車にて運転員・添乗員2名でお迎えに伺い施設をご利用いただいている。
現状は平均10台の送迎車で送迎をしていて運転員と添乗員はご利用者の乗降をサポートし安心安全に施設からご自宅まで送迎車でお送りしている。
そのため、常に安全な作業ができることが重要であり、絶対に事故は起こさないように作業を行う人達の安全意識及び危険意識の精度向上に繋がる取り組みを行う必要がある。
現状の作業では一人一人の安全行動、安全意識に個人差があり一歩間違えればヒヤリハットの発生、労働災害の発生にもつながる可能性を秘めている。
3Kの一つ(キケン)について職員同士で話し合い活動を行うことにした。
労働災害及びヒヤリハットゼロの取り組みを行う必要がありこのレポートでは取り組んできた内容と結果について報告をする。

【取り組み方法】
 現状抱えている送迎時の問題点、危険要因を抽出し評価点方式にてランク付けを行い点数の高い問題点に対して改善を行っていくことにした。
実施改善を行っていく方法は下記方法を用い行った。
(1)問題点を抽出と評価点付け
 メンバーの抱えている問題点を上げ、頻度・危険度・重要度・責任度の4項目から評価点を付け問題点の抽出を行う。(R5年4月)内容は送迎前の始業点検や狭い小路・丁字路でのヒヤリ、送迎車の誘導作業、ご利用者乗降時の想定ヒヤリが挙げられ普段直面している内容が挙げられた。
(2)評価点の高い問題点の絞り込み
 抽出された内容の得点の高いものにターゲットを絞り活動を進めていった。(R5年5月)
(3)対策項目の内容分析(特性要因図作成)
 抽出された内容の分析は特性要因図を用い、人・環境・車・気候の観点から要因分析を行い問題点の絞り込みを行った。(R5年6月)
(4)対策立案
 特性要因図により分析された内容に沿って対策を立案していく。立案した対策に効果があるか、実施検証を繰り返し安全性の確認を行った。
今回は施設ご利用者、送迎時のバック乗り入れ作業手順となった。(R5年9月)
(5)作業標準書の作成
 実施検証を繰り返し効果と安全性が確認できたため、作業標準書の作成に取り掛かった。(R5年10月)
(6)作業の動作確認
 作業標準書作成後全体的な作業動作の確認を行い動作のわかり易さの有無、安全動作の有無を再検証し実施作業への導入を行う準備をした。
(7)関連部署と作業標準書のすり合わせ
 送迎を主に行っている通所リハビリテーション部署の職員と実施作業における動作確認・安全確任方法について打ち合わせを行った。
作業標準書に加え新たに動画を作成し安全確認のポイント、誘導動作のポイントを確認し合い実施に向け準備を行った。(R6年2月)
(8)実施
 各部署において動作のシミュレーションを行い作業標準書に基づき実行した。(R6年3月)

【結果】
 作業標準書の動作を各棟の職員と連携して行う中で、最初は従来の動作が出ることもあったが、経験を重ねることで消失した。しかし、添乗員の誘導動作が小さくわかり難いなど、見直しが必要な場面が見られた。さらなる改善のために、運転側と添乗側それぞれのチェックシートを作成・活用し、相手側の良い所、悪い所をチェックし、動作の修正を図った。(R6年4月)
その結果、各添乗員が作業標準書通りの動作が行えるようになり、誘導作業に安心感を覚えるようになった。現在は全職員の作業動作が統一され、同じアクションで一定の誘導動作になり、わかり易さも増し、より安全な作業となった。
送迎車誘導のアクシデントに関して、今回の取り組み開始の前年令和4年から令和6年7月まで集計したところ、令和4年は6件であったが令和5年では2件の発生に減少。取り組みを開始し、作業標準書が根づいた令和6年では発生はしていない。

【考察】
 問題点の洗い出しを行ったことで、メンバー全員が危険に対して常日頃から問題を抱えていることがより鮮明になった。
また、「統一された手順書が必要だ」、「わかり易さの観点から動作は動画の方が良い」などの意見を取り入れ、柔軟に取り組みを進めていけた。活動を進めていく過程において、技術の向上ではなく、誰でもが安全に行える作業の平準化が重要であると意識や考えが変化したことが、安全な作業ルールを定める基礎作りとなった。
安全に関しても職員は、多様な見方、考え方をしており、それらの整理・共有を行い、作業標準書作成に活かせた。送迎車誘導のアクシデント件数がゼロに抑えられているのは、チェックシートを作成し、チェックを重ねたことで、作業の風化を防ぎ、安全で確実な作業の継続ができていることが影響していると考える。
 今回作成の作業標準書と動画は、今後新人職員などへの教育ツールとして活用が期待できる。人手や時間不足の介護現場においても短時間で確実な作業の習得が可能になると考える。作業の標準化は安全面だけでなく、教育体制の整備、業務効率化の面からも進めていく必要性を感じている。
別紙図参照:送迎車誘導におけるアクシデント件数の推移と安全な作業の仕組みづくりの流れ

【今後の取り組み】
 今回は送迎車の誘導に関して取り組みを行ったが、送迎車による作業の中には、他の問題点も多く含まれている。現在、職員一人送迎に関する活動に着手している。
今後、更に洗い出しを行い安心安全と信頼向上をモットーに取り組んで行きたい。
そして、作業の標準化を行い統一した動作の確立、わかり易い動作を行って行き安定した安全作業が行える環境作りを今後も築き上げていきたい。