講演情報

[14-O-A001-03]福祉用具を正しく使おう!身体の負担が少ない環境づくり

*滝田 紗也香1 (1. 愛知県 社会福祉法人サン・ビジョン デイケアセンターグレイスフル春日井)
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当法人では、ノーリフティングポリシーを推奨しており、介護現場において福祉用具の使用を行っている。また、約2ヶ月毎に開催されている福祉用具勉強会で使用方法をリハビリ職員が介護職員へ伝達・指導している。この福祉用具勉強会を活用し、通所事業所(以下、デイケア)における福祉用具使用方法の定着を図ることで、介護現場における介護技術向上と、安全な介助を行えるようにすることを目的に実施した取り組みを報告する。
● テーマの選定理由ノーリフティングポリシーとは、「“押す・引く・持ち上げる・ねじる・運ぶ”を過度な負担を伴う状態で絶対に人力で行わないこと」と定義されている。当法人では、ノーリフティングポリシーを推奨しており、介護現場において福祉用具の使用を行っている。また、約2ヶ月毎に開催されている福祉用具勉強会で使用方法をリハビリ職員が介護職員へ伝達・指導している。この福祉用具勉強会を活用し、通所事業所(以下、デイケア)における福祉用具使用方法の定着を図ることで、介護現場における介護技術向上と、安全な介助を行えるようにすることを目的にこのテーマを選定した。● 現状把握 一般社団法人全国ノーリフティング推進協会が挙げている2020年度実技セミナーの動画を元にチェックリストを作成した。それを用いて、デイケアにて使用頻度の高い4種類(移乗用リフト、スライディングボード、スライディングシート、横スライド移乗用具)のテスト(1回目)を実施。結果としては、職員間で点数のばらつきが大きくみられ、平均点も6割以下であった。現在の介護現場における福祉用具使用方法の理解度を把握し、3度の福祉用具勉強会を通して知識・技術が定着したかどうかを確認した。● 目標設定福祉用具使用方法の理解度をチェックリストの職員全体で6割以上(目標点)にすることを目標に設定した。● 要因解析 福祉用具使用方法が定着しない原因として、環境(使用頻度の低下、勉強会参加者が限定されるなど)、知識(使用方法の共有不足、勉強不足など)、職員(使用する職員の偏り、経験年数など)の3つの要因が挙げられる。● 対策の立案・実施 福祉用具勉強会にて、一般社団法人全国ノーリフティング推進協会の研修により、具体的なノーリフティングの理解・実技を習得した職員が、介護職員に対して基礎的な福祉用具の使用方法を伝達・指導した。上記の研修受講者を二か所に配置し、人数を分散することでアドバイスを聞きやすい環境を作った。基礎的な使用方法を一般社団法人全国ノーリフティング推進協会が挙げている2020年度実技セミナーの動画を視聴し、してから実践を行った。● 効果の確認 福祉用具勉強会を3度開催し、4種類の福祉用具使用方法及びランジ姿勢についての指導後にテスト(2回目)を実施。各合格者はリフトが11名から10名に減少。スライディングボードは6名から9名に増加。スライディングシートは4名から6名に増加。横スライドは4名から7名に増加。4種類のうち3種類で合格者が増加している。1回目と比較し、2回目のテストでは合格者が増え、職員間のばらつきも減少していた。● 歯止め(作業の標準化、定着のための管理) 福祉用具使用方法を定着させるためには、定期的に使用する必要があるため、引き続き福祉用具勉強会を行い、福祉用具を使用するきっかけを作っていく。また、定期的なテストを実施し、各職員が自己のレベルを把握できるようにする。● 反省・まとめ 福祉用具勉強会を通して、福祉用具使用方法の基礎を学ぶことで理解度を高めることができることがわかった。しかし、2~3ヶ月の間で知識を定着させることは困難であり、使用頻度が低下するにつれてより定着には時間を要する。また、福祉用具勉強会は業務後に行われているため、非常勤職員は参加できないことが多く、勉強会での内容が共有されていないとの声が上がっている。知識・技術のレベルが偏らないよう、習得している職員が使用方法を共有できる環境を作る必要があると考える。間違った使用方法での介助は事故に繋がるリスクが上昇する。継続的に使用方法を学び、習得することで質の高い介護の提供が可能となる。また、使用方法のみならず、マニュアルハンドリングの習得も行い、介護職員自身の負担軽減を図っていく必要がある。