講演情報

[14-O-A001-06]ボッチャで地域包括ケアシステムに一石を投じる活動

*千葉 柊人1、高橋 朋希1 (1. 宮城県 アルパイン川崎)
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当施設では、ゲーム性と競技性の高い「ボッチャ」を導入した。通所リハビリテーション(通リハ)利用者に、施設での過ごし方を聞き取り調査した結果、「楽しみながら身体を動かしたい」との希望があり、ボッチャに詳しい通リハ利用者と共に身体活動を高める運動を検討し開始した。ボッチャには役割があるため運営は自発性を促した。練習会や大会を企画し参加者の輪が広がり、地域での交流参加機会を支援した活動を報告する。
【目的】
通所リハを利用される様々な年代の方の誰もが、一緒にボッチャを楽しみながら身体活動性を上げる。職員は地区サロンや運動サークルに積極的に出向き、川崎町の高齢者福祉サービス及び高齢者の社会参加施策を支援する。川崎町唯一の老健の社会的使命を果たすため、活動等を通して高齢化と過疎化が進行している中で、地域包括ケアシステムの推進と共生社会の実現に向け、川崎町未来づくりを共創する。
【方法】
通リハ利用者に対して、利用時の過ごし方についてアンケート調査を実施する。運動種目の決定条件は川崎町内でも馴染みのある集団競技運動とする。通リハでの競技経験者を増やし、ここでの経験が馴染みの地域や、近隣地域へ出向いて社会参加できるようにする。職員は高齢者支援活動の場や住民交流の場に積極的に出向き、通リハ利用者と地域との繋役や、通リハを必要とする方の利用を勧め、川崎町の目指すまちづくりを啓発する。
【結果】
 職員による利用者への聞き取りアンケート結果は、川崎町内の高齢者福祉サービス事業や、地区サロンでの運動サークルにでも馴染みのある集団競技運動の「ボッチャ」をとした。ボッチャはゲーム性や競技性が高く、利用者の性別、年齢、障害の垣根を越えて利用者のだれもが簡単に参加できる娯楽性があり、身体の活動性を高め、普段とは異なる他者との交流の場を広げるツールとしても優れていた。利用者と職員を含む6名位にて運動内容を検討するために「運動リーダー会」を設置し、競技に詳しい利用者を主軸として、職員がサポートして運営できた。職員は地域住民の社会参加や活動の場を調査し、地域と通リハとの交流の繋役となった。
 【考察】
東京パラリンピックでも注目されたボッチャを、施設内ローカルルールを設け、簡易的競技へと変化させたことで介護度の影響を受けずに誰もが参加できるようになった。競技にはプレイヤ―・審判員・記録員等の人員が必要となるため、運動リーダーと複数名でボッチャ勉強会ならびに練習会を行い、楽しみながら身体を動かしたいという利用者ニーズを捉えた。導入当初、動作への不安から参加を拒む利用者の姿もあったが、利用者個人のレベルに合わせ、座位と立位の混合での参加などを促し安全面においても配慮した。ボッチャ開催時は周囲を巻き込む臨場感と参加者の充実感は、競技参加者の声や観衆から良い傾向にあることを知ることができた。また、介護度や身体機能面の状態に合わせたことでボッチャの輪が広がり、地域のサロンや運動サークル活動にも参加したいと願う利用者が出てきた。このことから地域との繋がりをつくるきっかけや通リハ経験の無い方がボッチャを通して通リハに興味・関心を持っていただける機会に繋がると考える。宮城県川崎町の人口は2024年に1万人(8024人)を切り、少子高齢化が進んでいる。2040年には6900人、2060年には5100人程度になると推計されている。2024年の高齢化率は42.1%。65歳から74歳の高齢者は減少し、75歳以上の高齢者が増加すると予想されている。川崎町の特徴として比較的健康な高齢者が多いが、介護重度化の防止とフレイル予防が川崎町の保健福祉施策課題でもある。川崎町の目指す姿の指標の高齢者の保健福祉計画・介護保険事業の計画の基本理念と施策は、(1)健康つくりの推進(2)高齢者が安心して暮らせるまちづくりの推進(3)地域生活を支援する取り組みの充実(4)地域支援事業の充実(5)介護給付・介護予防給付サービスの充実としている。日本の高齢者を取り巻く環境は、核家族化によって一人暮らしの高齢者が増加し、支える家族との関係性は変化し多様化が進んでいる。当町においても同様の傾向が散見し、これまでより地域コミュニティ内での交流が希薄化している。町民の一人ひとりが互いに助け合いながら、誰もが安心して生活できる地域包括ケアシステムの下で町民による福祉的な支え合い体制を実現するために、行政が法令に基づいて行うサービスだけではなく、多様な年代の人々が協力して支え合うことが必要である。老健と地域住民によって、健康づくりと介護予防を推進する活動は重要な取り組みになると考える。多様性の時代だからこそ、共生社会の中で、できる取り組み・やるべき取り組みを今後も開発していきたい。近い将来予測される老健の介護の担い手不足に対しては、町内の元気高齢者が気楽にボランティア活動などで交流できる場としての老健を目指したい。人材不足を解消するだけではなく川崎町唯一の老健として、町民の誰もが気軽に老健に立ち寄り、設備や職員を利用できるシステムを構築したい。人生100年時代と一億総活躍社会の実現のために、地域住民の健康と生活を支援する取り組みを充実させる活動を通して、地域包括ケアシステムの活性化に一石を投じていきたい。