講演情報
[14-O-A002-03]歩行分析AIアプリを使用した取り組み
*辻 淳樹1、中谷 充志1、中村 貴信1、井村 龍麿1 (1. 奈良県 介護老人保健施設ウェルケア悠、2. 介護老人保健施設ウェルケア悠、3. 介護老人保健施設ウェルケア悠)
歩行分析AIアプリを使用し利用者の歩行状態に対する理解度を深める事によって運動の動機付けの一助となるかを調べる目的としてアンケート調査を行った。その結果、自身の歩行状態に対する理解が深まった、運動意欲の向上や満足度が得られたという結果が得られた。今回のアンケート調査の結果から歩行分析AIアプリを使用する事で利用者の運動を継続する為の動機付けの一助になる結果につながった為、ここに報告する。
【はじめに】
2025年には団塊の世代の方々が75歳以上の後期高齢者の枠組みに入っていき、高齢化が急速に進んでいくと言われている。高齢者の人口増加に伴い、要支援・要介護認定を受けた方が増え、保険料や急な状態悪化による入院などの「医療」や「介護保険による生活支援サービス」も必要になってくると予想される。
近年高齢化により、平均寿命が増加しているのに対して、健康寿命に関しては年数がほとんど変わらないと報告されている1)。健康寿命を延ばすために厚生労働省では、「3メッツ以上の身体活動を 15 メッツ・時/週以上 (歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日40分以上)行うことに加え、多要素な運動を週3日以上取り入れること」を推奨事項として挙げている2)。
しかし、2017年における我が国の65歳以上の 運動習慣者の割合は、男性で46.2%、女性で39.0%であると報告されている3)。これらの数値は健康日本21(第2次)の2022年に到達すべき目標に対して男性は11.8ポイント、女性では9.0ポイント下回っていると報告されている4)。
これらの報告から健康寿命を延ばす為に、自身の健康状態を把握し、運動を行うことに関心を持つことが運動習慣者を増やす為には重要であると考える。
当事業所の短時間通所リハビリでは運動習慣者の増加を目的に歩行分析アプリを導入した。歩行分析アプリの使用手順は簡易かつ歩行動作を分析し、数値化する為、運動を継続する為の動機付けの一助になると考えた。
【目的】
今回、歩行分析AIアプリを使用し利用者の歩行状態に対する理解度を深める事によって運動の動機付けの一助となるかを調べる目的としてアンケート調査を行った。
【方法】
株式会社エクサホームケアの「トルト歩行分析AI」を使用して歩行分析を行った。使用方法は、スマートフォンやiPadなどの機器を使用し、後方から5m歩行の動画を撮影したデータを基に、「速度」「リズム」「ふらつき」「左右差」の各4項目を5点ずつで採点し20点満点で表記される。
当事業所の短時間通所リハビリを利用されている利用者40名に対して、初回と2か月後に歩行分析AIアプリを使用して歩行動作の分析データを説明した。
初回の歩行動作の分析データの結果を参考に各利用者へ現在の歩行状態と自主トレーニングのメニューや歩行を行う際の注意点を説明し、2回目の歩行動作の分析までに意識して運動に取り組んで頂くよう説明した。
そして2回目の分析を行った後、利用者40名に対して歩行分析アプリに対するアンケート調査を行った。アンケートは独自に作成し、個人が特定されることのない無記名式であることを説明し、アンケートへの回答を求めた。
アンケートの質問項目は
1)歩行分析AIアプリを使用した評価・説明を受けてみて満足したか?
2)自身の歩行状態や課題の理解が高まったか?
3)今後も歩行分析AIアプリを使用した評価・説明を受けてみたいか?
4)歩行分析AIアプリを使用して点数化した結果の説明を受けた後、この1か月間日常生活に注意して生活する事ができたか?
5)この1か月間歩行分析の点数を上げる為に意識してトレーニングする事ができたか?
の5つの質問項目とした。またそれぞれの内容で自由記述にて回答を求めた。
【結果】
アンケート調査の結果、
質問項目1)の回答結果は「満足した」62.5%、「やや満足した」27.5%、「普通」7.5%、「やや不満」2.5%、「不満」0%となった。
質問項目2)の回答結果は「高まった」45%、「やや高まった」35%、「普通」17.5%、「あまり理解できなかった」2.5%、「理解できなかった」0%となった。
質問項目3)の回答結果は「是非受けてみたい」52.5%、「受けてみたい」45%、「どちらでもない」2.5%、「興味ない」0%となった。
質問項目4)の回答結果は「よくできた」5%、「できた」75%、「あまりできなかった」20%、「できなかった」0%となった。
質問項目5)の回答結果は「よくできた」7.5%、「できた」67.5%、「あまりできなかった」20%、「できなかった」5%となった。
また「日常生活を規則正しく送れるよう意識して過ごせるようなった」、「今後は常に意識して努力したいと思うようになった」などの回答が得られた。
【考察】
上記の結果が得られた理由として、歩行分析AIアプリを使用して評価を行うことによって、口頭のみでは伝わりにくい歩行動作を「速度」「リズム」「ふらつき」「左右差」の各4項目に分けて数値化して説明したことで利用者自身の歩行に対する理解が深まり、結果として運動の動機付けに繋がったのではないかと考えられる。また質問項目4)と質問項目5)の回答結果で「できた」との回答を多く得られた理由として、歩行分析アプリを使用してグラフや数値などで評価結果を視覚化し、フィードバックを強化したことで利用者の行動変容に繋がったと考えられる。
【参考文献】
1)厚生労働省:健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究2010
2)厚生労働省:健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023
3)厚生労働省:平成29年度国民健康・栄養調査
4)厚生労働省:健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料
2025年には団塊の世代の方々が75歳以上の後期高齢者の枠組みに入っていき、高齢化が急速に進んでいくと言われている。高齢者の人口増加に伴い、要支援・要介護認定を受けた方が増え、保険料や急な状態悪化による入院などの「医療」や「介護保険による生活支援サービス」も必要になってくると予想される。
近年高齢化により、平均寿命が増加しているのに対して、健康寿命に関しては年数がほとんど変わらないと報告されている1)。健康寿命を延ばすために厚生労働省では、「3メッツ以上の身体活動を 15 メッツ・時/週以上 (歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日40分以上)行うことに加え、多要素な運動を週3日以上取り入れること」を推奨事項として挙げている2)。
しかし、2017年における我が国の65歳以上の 運動習慣者の割合は、男性で46.2%、女性で39.0%であると報告されている3)。これらの数値は健康日本21(第2次)の2022年に到達すべき目標に対して男性は11.8ポイント、女性では9.0ポイント下回っていると報告されている4)。
これらの報告から健康寿命を延ばす為に、自身の健康状態を把握し、運動を行うことに関心を持つことが運動習慣者を増やす為には重要であると考える。
当事業所の短時間通所リハビリでは運動習慣者の増加を目的に歩行分析アプリを導入した。歩行分析アプリの使用手順は簡易かつ歩行動作を分析し、数値化する為、運動を継続する為の動機付けの一助になると考えた。
【目的】
今回、歩行分析AIアプリを使用し利用者の歩行状態に対する理解度を深める事によって運動の動機付けの一助となるかを調べる目的としてアンケート調査を行った。
【方法】
株式会社エクサホームケアの「トルト歩行分析AI」を使用して歩行分析を行った。使用方法は、スマートフォンやiPadなどの機器を使用し、後方から5m歩行の動画を撮影したデータを基に、「速度」「リズム」「ふらつき」「左右差」の各4項目を5点ずつで採点し20点満点で表記される。
当事業所の短時間通所リハビリを利用されている利用者40名に対して、初回と2か月後に歩行分析AIアプリを使用して歩行動作の分析データを説明した。
初回の歩行動作の分析データの結果を参考に各利用者へ現在の歩行状態と自主トレーニングのメニューや歩行を行う際の注意点を説明し、2回目の歩行動作の分析までに意識して運動に取り組んで頂くよう説明した。
そして2回目の分析を行った後、利用者40名に対して歩行分析アプリに対するアンケート調査を行った。アンケートは独自に作成し、個人が特定されることのない無記名式であることを説明し、アンケートへの回答を求めた。
アンケートの質問項目は
1)歩行分析AIアプリを使用した評価・説明を受けてみて満足したか?
2)自身の歩行状態や課題の理解が高まったか?
3)今後も歩行分析AIアプリを使用した評価・説明を受けてみたいか?
4)歩行分析AIアプリを使用して点数化した結果の説明を受けた後、この1か月間日常生活に注意して生活する事ができたか?
5)この1か月間歩行分析の点数を上げる為に意識してトレーニングする事ができたか?
の5つの質問項目とした。またそれぞれの内容で自由記述にて回答を求めた。
【結果】
アンケート調査の結果、
質問項目1)の回答結果は「満足した」62.5%、「やや満足した」27.5%、「普通」7.5%、「やや不満」2.5%、「不満」0%となった。
質問項目2)の回答結果は「高まった」45%、「やや高まった」35%、「普通」17.5%、「あまり理解できなかった」2.5%、「理解できなかった」0%となった。
質問項目3)の回答結果は「是非受けてみたい」52.5%、「受けてみたい」45%、「どちらでもない」2.5%、「興味ない」0%となった。
質問項目4)の回答結果は「よくできた」5%、「できた」75%、「あまりできなかった」20%、「できなかった」0%となった。
質問項目5)の回答結果は「よくできた」7.5%、「できた」67.5%、「あまりできなかった」20%、「できなかった」5%となった。
また「日常生活を規則正しく送れるよう意識して過ごせるようなった」、「今後は常に意識して努力したいと思うようになった」などの回答が得られた。
【考察】
上記の結果が得られた理由として、歩行分析AIアプリを使用して評価を行うことによって、口頭のみでは伝わりにくい歩行動作を「速度」「リズム」「ふらつき」「左右差」の各4項目に分けて数値化して説明したことで利用者自身の歩行に対する理解が深まり、結果として運動の動機付けに繋がったのではないかと考えられる。また質問項目4)と質問項目5)の回答結果で「できた」との回答を多く得られた理由として、歩行分析アプリを使用してグラフや数値などで評価結果を視覚化し、フィードバックを強化したことで利用者の行動変容に繋がったと考えられる。
【参考文献】
1)厚生労働省:健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究2010
2)厚生労働省:健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023
3)厚生労働省:平成29年度国民健康・栄養調査
4)厚生労働省:健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料