講演情報
[14-O-A002-05]フラワーコサージュ~視える化した意識改革~
*増永 章利1、澤西 良太1 (1. 静岡県 介護老人保健施設こみに)
「接遇を意識するきっかけを作りたい。部署内で接遇強化週間というのをやってみてはどうだろうか?」この職員から挙がった声をきっかけに、2023年度法人目標の一つに『チームこみにの力を最大化するために「接遇強化年間」とする』を掲げられた。
手作りのコサージュを全職員が身に付け、テーマに従い毎月接遇週間を実施した。接遇週間を重ねることで、施設内がどのように変化したか、職員の意識がどう変化していったかを報告する。
手作りのコサージュを全職員が身に付け、テーマに従い毎月接遇週間を実施した。接遇週間を重ねることで、施設内がどのように変化したか、職員の意識がどう変化していったかを報告する。
【はじめに】
高齢者施設において、接遇は半永久的に追及していかなければならないテーマであり、また当たり前の事を当たり前に行い、継続するという事は難しくもある。過去には法人内や各部署内で、接遇意識を高めるための目標を設けて取り組んできたが、施設全体で接遇強化を図る事が出来なかった。
そこで昨年度の法人目標の一つとして『チームこみにの力を最大化するために「接遇強化年間」とする』を掲げ、ご利用者に対する接遇、および職員同士での接遇強化により連携機能を高めることを意識していく事とした。
職員一人一人が接遇週間を強く意識せざるを得ないよう、コサージュを身に付け、施設長を含めた法人全体で適切な接遇に取り組んでいく過程において、法人理念である『寄り添う心と温かな手』を念頭に置いて、今回取り組んだ内容と結果をここに報告する。
【取り組み】
(1)接遇強化週間
接遇強化年間への取り組みの一つとして、毎月10~16日を接遇強化週間とし、接遇について定めたテーマに沿って、関わり方や態度、声掛けの仕方などを意識的に高めていくことを試みた。
この取り組みを行うこととなった経緯として、老健入所フロアの職員から「接遇を意識するきっかけを作りたい。部署内で接遇強化週間というのをやってみてはどうだろうか?」との声が上がった。この声をきっかけに、法人全体での取り組みとして開始する事となった。
なお、施設職員として接遇は普段から十分に留意すべきであるが、何をどのように取り組んだら良いか、またその意識をどのように継続していけば良いかという点が課題として挙げられた。
(2)花飾り・コサージュ
2023年9月から行った具体的な取り組み内容として、花飾りや花のコサージュを身に付け、接遇強化週間であることの可視化を行い、施設全体での取り組みとして認識しやすいよう、まず視覚的なアプローチに重点を置いた。
(3)テーマの設定と館内への掲示
4か月に1回のペースでテーマを変更し、館内の様々な場所に掲示し、視覚的にも意識・認識を高められるよう工夫を凝らした。テーマの変更についても、虐待防止委員会で議題として取り上げ、内容の難しいテーマではなく、当たり前の事が当たり前にできるようなテーマを定める事で日常勤務の中でも意識しやすくした。
4月~7月:「職員、利用者様、ご家族等に気持ちの良い挨拶をしよう」と「挨拶に+αの言葉かけをしよう」
8月~11月:「職員、利用者様、ご家族等に気持ちの良い挨拶をしよう」「感謝の言葉を増やそう」「1ケアありがとうの意識」「職員同士でも感謝の気持ちを忘れずに」
12月~3月:「マスクをしていても聞き取りやすい声で接しましょう」「目線を合わせて会話しよう」
(4)セルフチェック
毎月の接遇強化週間終了後には、全職員にセルフチェックの手軽なアンケートを行い、個人の接遇を振り返り、また取り組み内容の提案・修正などを回答してもらった。
施設長を含めた法人全体でコサージュを身に付けることとなったきっかけも、このアンケートの中で職員が提案してくれたものであった。
(5)その他の取り組み
各フロアの役職者を対象としたリーダー研修、施設全体で行った接遇研修、虐待の芽チェックリストを行い、年間を通して施設職員が意識付けできるようにした。
【取り組みの詳細・結果】
≪一年間を通してのセルフチェックによる職員の声≫
・花飾りを身に付けることはご利用者に好評であり、職場の雰囲気も華やかになった
・花飾りを付けると接遇を意識しやすく、職員同士でも声を掛けやすくなった
・ご利用者やご家族も気付いてくれ、声を掛けてくれるようになった
・施設全体の挨拶が増えた
・ご利用者と目線を合わせて会話をする職員が増えた
・ありがとうの声が多く聞かれた
・些細な事でも感謝の気持ちを伝える事で気持ち良く仕事ができるようになる
・車椅子ご利用者と目線を合わせるため、腰を落として話をする職員が増えた
・ご利用者だけでなく、職員同士の声掛けも丁寧になった
≪ご家族への満足度調査≫
2024年4月~5月に掛けて、面会に来所されたご家族に向けた満足度調査アンケートを実施し、施設職員の接遇についてもお伺いした。その中でも、「いつも優しい声掛けをしてくれています」「優しい口調で話してくれるので、本人も安心感があると思います」「とても大きな、はっきりとした口調で気持ちが良いです」など、多くのご家族からも称賛の言葉を頂くことができた。
【まとめ】
この取り組みが始まったきっかけは施設職員から何気なく聞かれた声である。高い意識で働く職員がいるからこそ、今回のような建設的な意見が提案され、法人全体の取り組みへと発展した。様々な部署の職員が日頃感じている想いの中に「チームこみに」を更に良いものにするヒントが隠されている事を改めて強く感じた。
また、施設全体として接遇強化週間として期間を定め、短期集中的かつメリハリを付けて取り組む事で、意識の向上・継続、そして職員同士で注意し合うなど、声掛けし易い環境を作れた。更に接遇強化週間内では、ご利用者に声を掛ける職員が増えたように感じられた。パレートの法則や262の法則にあるように、目標を達成するためには中間層である6割の職員の意識を高めていく事で施設全体の底上げを図る事が大切であると言える。
昨年度に取り組んだこの内容は、今年度も継続して行う事が出来ている。ただ、この取り組みは一つの通過点に過ぎず、今後もより良い施設作りの為、「チームこみに」で接遇強化を継続できるよう、新たなチャレンジを続けていきたい。
高齢者施設において、接遇は半永久的に追及していかなければならないテーマであり、また当たり前の事を当たり前に行い、継続するという事は難しくもある。過去には法人内や各部署内で、接遇意識を高めるための目標を設けて取り組んできたが、施設全体で接遇強化を図る事が出来なかった。
そこで昨年度の法人目標の一つとして『チームこみにの力を最大化するために「接遇強化年間」とする』を掲げ、ご利用者に対する接遇、および職員同士での接遇強化により連携機能を高めることを意識していく事とした。
職員一人一人が接遇週間を強く意識せざるを得ないよう、コサージュを身に付け、施設長を含めた法人全体で適切な接遇に取り組んでいく過程において、法人理念である『寄り添う心と温かな手』を念頭に置いて、今回取り組んだ内容と結果をここに報告する。
【取り組み】
(1)接遇強化週間
接遇強化年間への取り組みの一つとして、毎月10~16日を接遇強化週間とし、接遇について定めたテーマに沿って、関わり方や態度、声掛けの仕方などを意識的に高めていくことを試みた。
この取り組みを行うこととなった経緯として、老健入所フロアの職員から「接遇を意識するきっかけを作りたい。部署内で接遇強化週間というのをやってみてはどうだろうか?」との声が上がった。この声をきっかけに、法人全体での取り組みとして開始する事となった。
なお、施設職員として接遇は普段から十分に留意すべきであるが、何をどのように取り組んだら良いか、またその意識をどのように継続していけば良いかという点が課題として挙げられた。
(2)花飾り・コサージュ
2023年9月から行った具体的な取り組み内容として、花飾りや花のコサージュを身に付け、接遇強化週間であることの可視化を行い、施設全体での取り組みとして認識しやすいよう、まず視覚的なアプローチに重点を置いた。
(3)テーマの設定と館内への掲示
4か月に1回のペースでテーマを変更し、館内の様々な場所に掲示し、視覚的にも意識・認識を高められるよう工夫を凝らした。テーマの変更についても、虐待防止委員会で議題として取り上げ、内容の難しいテーマではなく、当たり前の事が当たり前にできるようなテーマを定める事で日常勤務の中でも意識しやすくした。
4月~7月:「職員、利用者様、ご家族等に気持ちの良い挨拶をしよう」と「挨拶に+αの言葉かけをしよう」
8月~11月:「職員、利用者様、ご家族等に気持ちの良い挨拶をしよう」「感謝の言葉を増やそう」「1ケアありがとうの意識」「職員同士でも感謝の気持ちを忘れずに」
12月~3月:「マスクをしていても聞き取りやすい声で接しましょう」「目線を合わせて会話しよう」
(4)セルフチェック
毎月の接遇強化週間終了後には、全職員にセルフチェックの手軽なアンケートを行い、個人の接遇を振り返り、また取り組み内容の提案・修正などを回答してもらった。
施設長を含めた法人全体でコサージュを身に付けることとなったきっかけも、このアンケートの中で職員が提案してくれたものであった。
(5)その他の取り組み
各フロアの役職者を対象としたリーダー研修、施設全体で行った接遇研修、虐待の芽チェックリストを行い、年間を通して施設職員が意識付けできるようにした。
【取り組みの詳細・結果】
≪一年間を通してのセルフチェックによる職員の声≫
・花飾りを身に付けることはご利用者に好評であり、職場の雰囲気も華やかになった
・花飾りを付けると接遇を意識しやすく、職員同士でも声を掛けやすくなった
・ご利用者やご家族も気付いてくれ、声を掛けてくれるようになった
・施設全体の挨拶が増えた
・ご利用者と目線を合わせて会話をする職員が増えた
・ありがとうの声が多く聞かれた
・些細な事でも感謝の気持ちを伝える事で気持ち良く仕事ができるようになる
・車椅子ご利用者と目線を合わせるため、腰を落として話をする職員が増えた
・ご利用者だけでなく、職員同士の声掛けも丁寧になった
≪ご家族への満足度調査≫
2024年4月~5月に掛けて、面会に来所されたご家族に向けた満足度調査アンケートを実施し、施設職員の接遇についてもお伺いした。その中でも、「いつも優しい声掛けをしてくれています」「優しい口調で話してくれるので、本人も安心感があると思います」「とても大きな、はっきりとした口調で気持ちが良いです」など、多くのご家族からも称賛の言葉を頂くことができた。
【まとめ】
この取り組みが始まったきっかけは施設職員から何気なく聞かれた声である。高い意識で働く職員がいるからこそ、今回のような建設的な意見が提案され、法人全体の取り組みへと発展した。様々な部署の職員が日頃感じている想いの中に「チームこみに」を更に良いものにするヒントが隠されている事を改めて強く感じた。
また、施設全体として接遇強化週間として期間を定め、短期集中的かつメリハリを付けて取り組む事で、意識の向上・継続、そして職員同士で注意し合うなど、声掛けし易い環境を作れた。更に接遇強化週間内では、ご利用者に声を掛ける職員が増えたように感じられた。パレートの法則や262の法則にあるように、目標を達成するためには中間層である6割の職員の意識を高めていく事で施設全体の底上げを図る事が大切であると言える。
昨年度に取り組んだこの内容は、今年度も継続して行う事が出来ている。ただ、この取り組みは一つの通過点に過ぎず、今後もより良い施設作りの為、「チームこみに」で接遇強化を継続できるよう、新たなチャレンジを続けていきたい。