講演情報
[14-O-A002-07]エビデンスに基づいた施設サービス提供への取り組み
*宇座 美里1、山崎 道子1 (1. 愛知県 介護老人保健施設リハビリス井の森)
身体面・認知面、QOLが低下したデイケア新規利用者様に、エビデンスに基づいたサービスを立案・実施し症状が改善したので報告する。5グループ(身体的ADL、日課的ADL、CADL、記憶理解、BPSD)71項目のADL評価を利用直後・3か月後で行い点数を比較した。その結果、5グル-プのうち4グル-プの点数が上がった。点数の改善がQOL向上に結びついたと考えられる。
【はじめに】当施設のケアプランは利用開始時に、身体的ADL・日課的ADL・CADL・記憶理解・BPSDの71項目のADL評価を行っている。開設以来蓄積したデータによるエビデンスに基づき、身体・認知症状の改善、低下予防を目的に作成している。 本症例はケアマネを中心とした他職種と連携し、認知症段階に合わせて、短期集中リハビリ、エビデンスに基づいたケアをデイケア週2回4ヶ月実施した。その結果、身体的ADL・日課的ADL・CADLの改善がみられたので報告する。【事例紹介】・80歳 女性 要介護4 認知症段階:反省的思考期( 寝たきり度:B2 認知症自立度: Ⅲa )現病歴:左側頭部脳腫瘍穿刺、真珠腫性中耳炎、腰椎圧迫骨折【利用開始時ADL評価】麻痺:体幹・下肢筋力の意低下あり。圧迫骨折による腰痛あり 。移動:車椅子 排泄・起き上がり・立ち上がり・更衣・入浴:全介助 座位:かなり後傾位で凭れ徐々に前方に滑り姿勢修正が必要な状態。活動状況:意欲低下あり。対人関係:他者との関わりがない。記憶理解:月日が低下。意思決定:危険認識の低下あり、表情が硬く意欲低下がありイルビーイングの状態がみられる。【方法】身体的ADL・日課的ADL・CADL・記憶理解・BPSDの71項目のADL評価を行いプラン立案。課題:①腰痛や筋力の低下により基本動作に介助が必要 ②腰痛により臥床が必要なことがあり、活動量の低下と他者との交流機会が少ない<短期目標>身体面:下肢・体幹筋力の向上 、 認知面:他者との交流機会の増加<長期目標>身体面:基本動作能力の向上 、 認知面:認知機能の低下予防<サービス内容> 身体面:日常生活動作場面での立ち上がり、立位保持場面での体幹強化サービスを行う。認知面:集団活動、レクリエーション、介助場面で認知機能障害に対するサービスを行う。<結果>プラン立案し、急ぎ過ぎず本人のペース(体調・痛み・恐怖心)に合わせた対応を(リハビリ+短期集中リハビリも含め)行ったところ、2ヶ月後には体幹・下肢筋力は向上し、身体的ADL合計点が18点→23点(寝返り・起き上がり・歩行・移乗・立ち上がり・片足立位保持ができない→一部介助)、日課的ADL合計点が20点→26点(食事・排尿・排便・整髪・上衣着脱・下衣着脱が 全介助→一部介助や見守り)、CADL合計点が35点→43点(対人関係・意思伝達・介護者の指示・表現:笑顔・悲しみ・怒り、コーピング)に改善した。腰痛は減少し、動作場面での恐怖心も減り、表情良くなり自身で行える動作場面も増え、本人様から他利用者様に話しかける場面が見られるようになった。リハビリ会議にて、「座位の姿勢が良くなり移乗も本人ができるようになっている。食事量や体重も増えてきている。週1回の利用予定でいたが、週2回にするべきと勧められ変更して本当に良かった。」と、ご家族様から褒めていただいた。<考察>本症例のようにADL改善するためには、サービス担当者会議等で必要な情報を交換し、デイケア利用時にいかにコミュニケーションを取るかにかかっている。日常業務をコミュニケーションツールとして考え、バリデーション技術・コーピング゙技術を用いた事により、介護者と利用者様との相互性が構築できはじめたと言える。利用者様と関わる時間は短く限られているが、少しずつウェルビーングの状態がみられ、ADL・CADLの改善に結びついたと考えられる。<終わりに>「ケアの最終目的はQOLを高めること」である。会話をはじめとした日常ケアによってコミュニケーションが保たれれば、意欲低下、不安・恐怖心などを和らげ悪循環から抜け出すことに繋がるものと考えられる。年齢と共に認知機能やADLは低下するが、職員は利用者様の不安軽減(身体的不安等)に努め、状況に応じてエビデンスに基づいたサービス提供するべきと考えている。今後もご本人様、ご家族様、ケアマネ、三者から信頼されるサービスを提供していきたい。 引用文献 高齢者障害者のための介護学 医療法人 聖生会リハビリス井の森出版編集委員会/編丸善出版