講演情報

[14-O-A003-01]いつも心はアドバンス・ケア・プランニングACPについての取り組み

*三田 眞也1、森 妙子1、藤本 愛1 (1. 大阪府 社会医療法人きつこう会多根介護老人保健施設てんぽーざん)
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入所者の意志を尊重した入所中の生活、退所後に向けた支援がケアプランに反映されることを目的として、ケアプランに反映できるようACPに関する利用者・家族の思いを聞き取ることができることを目標に取り組みを行った。ACPは人生の最終という捉え方ではなく普段の何気ない生活の延長上に利用者の未来があると認識することができる結果となった。
【はじめに】
我が国の総人口は、令和5年10月1日現在、1億2435万人で65歳以上人口は、3623万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も29.1%となっている。今後も高齢化率は上昇を続け、平均寿命は延び、令和52年には男性85.89年、女性91.94年と見込まれている。(出典:内閣府第1章高齢化の状況 第1節1) 長寿社会において、一人ひとりの高齢者が最期まで本人らしく生きることができるよう支援することが重要である。すなわち人生の最終段階に至るまで一人ひとりを尊重しつつ医療・ケアの意志決定を支援するAdvance Care Planning(ACP)が医療・介護を支える専門職として求められている。
当施設は在宅復帰のため、在宅に戻られる段階で必要となる生活に準じたリハビリを行うことを目的としている。しかし入所者の平均年齢は88歳と超高齢であり人生の最終段階を想定しても支障ない年齢である。本人が最期まで尊厳をもって人生をまっとうすることができるよう支援することがACPの目標である。本人の意向に沿った、本人らしい人生の最終段階における医療・ケアの実現、すなわち入所者の意志を尊重した入所中の生活、退所後に向けたケアにおいて、本人の人生をより豊かにすること、少なくともより悪くしないことを目指すことがACPの活用と言える。 
今回、ACPを推進する中で「利用者や家族の思いを十分に把握できているのか、その人らしさが尊重されたケアが実現できているのか」という疑問に立ち返り、日々のケアでの利用者との関わりがACP推進の取り組みになるのではと考え実施した。この取り組みについて報告する。

【目的】
 入所者の意志を尊重した入所中の生活、退所後に向けた支援がケアプランに反映される
「目標」
 ケアプランに反映できるようACPに関する利用者・家族の思いを聞き取ることができる
【方法】
1.ACPに関するスタッフの認知、理解度調査
2.ACPに関する質問項目を統一したACPシートの作成と活用
3.個別ケア実施時間の活用により、情報収集力を高める業務改善と調整

【結果】
ACPに関するスタッフの認知、理解度調査では、アンケート形式で行った。その結果「自分の人生会議についてこれまで考えたことがありますか?」の質問に対する「はい」の回答が47%と低い結果であった。これはスタッフのACPについての理解が不足していると結論づけ、ACPに関する学習会を実施した。学習会実施後。スタッフのACPに関する認知や理解が深まり、ACP推進にあたる最初の1歩となった。
ACPシートの活用では質問項目を定めることで、スタッフの経験に左右されることなく、必要な内容が聴取できるようになった。
スタッフが施設の日課に追われ、ACPを聴取する時間がない問題については、もともと行っていた個別ケアの時間を活用することで、プランナーだけではなく非常勤や派遣を含む多くのスタッフがACPの聴取に関わることができるようになった。これによりACPに関する情報が増え、他部門を含むスタッフ間の情報共有にもつながった。また個別ケア実施中のACP聴取では人生の最終段階について考えるという重苦しいものではなく、その会話中の様子は日常の風景のような穏やかな時間さえ感じられた。利用者からは「リラックスして自分の希望や思いを正直に打ち明けられた」との声があり、互いの信頼関係の構築にもつながった。
これらの活動を通し、ACPは人生の最終段階という捉え方ではなく普段の何気ない生活の延長上に利用者の未来があると認識することができる結果となった。

【まとめ】
ACPに関する先行文献で、ACPの促進要因と障壁について下文のように記されていた。独居高齢者―訪問看護師間で行われるプロセスを分析したものでこの取り組みとは背景が異なるが、挙げられている要因について同様のことがいえるのではないかと考える。ACPを促進する要因としての【療養者から専門職として信頼される】【療養者の意向を明らかにする】【選択肢を提示する】【不安の原因を探り軽減するよう関わる】【迅速な支援と技術で意向を実現するタイミングを逃さない】(引用:アドバンス・ケア・プランニングの促進要因と障壁 ―独居高齢者―訪問看護師間のケアプロセスと具体的支援の分析を通してー)今回の結果を踏まえ、ACPを促進する構成要素を念頭に、利用者の意志実現に向け、ケアプランに意志決定が反映できるよう取り組みを深化していく。