講演情報
[14-O-A003-04]センサー機器解除への取り組みとその効果について
*玉置 万里子1、柳沢 誠1、伊藤 博隆1 (1. 神奈川県 帝京大学老人保健センター)
センサー機器の使用は事故防止に有用である反面、利用者にとっては行動を観察・抑制されているという心理的負担となりかねない。また職員にとっても事故発生リスクへの不安や多数のセンサー機器が同時稼働することによる業務負荷増加の一因となっている。そこで、センサー機器の必要性をより適切に評価するため、指標や手順を可視化したことで、職員の業務負荷の軽減に繋がったと考える。
【はじめに】
当施設では、転倒等の事故対策の一環として各種センサー機器を使用している。その種類や使用者の選定は、転倒アセスメントスコアや日々の生活状況、ヒヤリハット・インシデントの発生状況を元にカンファレンスを実施している。併せて、定期的なモニタリングと毎月の事故防止対策委員会にて継続の必要性を検討している。
センサー機器の使用は事故防止に有用である反面、利用者にとっては行動を観察・抑制されているという心理的負担となりかねないものであり、可能な限り一時的な使用に留めるのが望ましい。しかしながら、職員間に事故発生リスクへの強い不安があること、使用解除に向けてのタイミングや条件の評価軸が明確でないことから、センサー機器の使用が長期にわたる傾向にある。これにより多数のセンサー機器が同時稼働することに繋がり、職員の業務負荷増加の一因となっている。
そこで、センサー機器の必要性をより適切に評価し使用することで、職員の業務負荷の軽減を図る取り組みを実施したので、ここに報告する。
【目的】
1) センサーカンファレンス時の評価の手順を標準化する
2) センサー機器の適切な使用により、職員の業務負荷軽減を図る
【研究方法】
研究期間:R5年12月~R6年6月
1) 事前アンケートを実施し現状の確認と対策の検討
2) 策定したフローチャートを基に随時センサーカンファレンスを実施
3) 事後アンケートを実施し評価・考察
【倫理的配慮】
1) 本研究において使用したアンケートや改善策実施の過程には、個人が特定される情報は含まない。また得られた情報は本研究以外では使用しない。
2) 本研究への参加同意はアンケートの提出をもって得られるものと定義した。
3) 本研究は当施設のみを対象としたものであり、利益相反は存在しない。
【結果】
当施設介護・看護職員計38名に対して行った事前アンケートでは、センサー機器使用や種類が適切であるか、使用を継続すべきかどうか等を判断する際に苦慮したとの回答が8割以上を占めた。また8割近くの職員から、不必要なセンサー機器の使用が継続されていたと感じるとの回答があった。実際にADLが低下して自力での起き上がりが困難になっていた利用者へのセンサー機器使用が半年以上継続していた事例が1件あった。
以上を踏まえ、東邦看護学会の「センサー機器の選択基準のフローチャート導入に向けたプロセス評価」を参考に、「直近一定期間での事故歴」「ナースコールの認知」「床上動作の可否」等を指標とするフローチャートを作成し、転倒アセスメントスコアと併用する形でセンサーカンファレンス実施時に使用した。期間中(R6年3~6月)に実施したセンサーカンファレンス13件において、3件のケースが解除に至った。
フローチャート導入後のアンケートでは、9割近くの職員からカンファレンス時の評価が明確になったとの回答を得た。また不必要なセンサー機器の使用が減ったと感じるとの回答が6割を超えた。
【考察】
事故発生リスクの高い利用者が多く、フローチャート導入後のセンサーカンファレンスにおいてもセンサー機器使用継続と評価するケースが多数となった。しかしながら、評価基準を明確化したことにより3件のケースで使用解除することができた。そのうち2名は解除後事故の発生なく経過したが、1年以上の長期使用となっていたもう1名においては解除後に転落事故が1件発生した。センサー機器を解除したことで職員の訪室回数が減り夜間の睡眠や精神状態の安定が図れていた反面、使用することで未然に防げた可能性も考えられ、より多様なアセスメントの必要性を再確認したケースとなった。
事後アンケートでは肯定的意見が過半数を占めており、フローチャート導入は一定の評価を得たと考えられる。また、センサーカンファレンス時にフロアリーダーや事故防止対策委員に委ねることなく評価できたとの回答が約6割を占め、実際のカンファレンス結果から後日判断が変更になるケースも発生しなかった。このことからも、フローチャートという形で指標や手順を可視化したことで、「誰でも」「同じ評価基準で」カンファレンスを行えるようになり、業務負荷の軽減に繋がったと考える。
反面、カンファレンス時に自身の判断との乖離を感じたとの回答が約3割、不必要なセンサー機器の使用が減っていないと感じるとの回答も約4割あり、職員間での事故発生への不安感や判断への迷いが払拭できていない状況がうかがえる。実際のセンサー機器の長期使用(1年以上)の利用者数は5名(フローチャート導入前)から3名(同導入後)に減少しているが、今後も継続してカンファレンスを実施し必要性を見直していく必要がある。
【まとめ】
今回の取り組みを通じて、手順を可視化することでセンサー機器の適切な解除への働きかけとしての効果が期待でき、職員の業務負荷の軽減にも繋げることができることが確認できた。
今後は、個別性に応じたセンサー機器の使用/解除を行う指標として、使用統計に基づいてフローチャートの見直し・改善を継続していく必要がある。また、利用者の心理的負担の軽減について、効果の検証が必要である。
当施設では、転倒等の事故対策の一環として各種センサー機器を使用している。その種類や使用者の選定は、転倒アセスメントスコアや日々の生活状況、ヒヤリハット・インシデントの発生状況を元にカンファレンスを実施している。併せて、定期的なモニタリングと毎月の事故防止対策委員会にて継続の必要性を検討している。
センサー機器の使用は事故防止に有用である反面、利用者にとっては行動を観察・抑制されているという心理的負担となりかねないものであり、可能な限り一時的な使用に留めるのが望ましい。しかしながら、職員間に事故発生リスクへの強い不安があること、使用解除に向けてのタイミングや条件の評価軸が明確でないことから、センサー機器の使用が長期にわたる傾向にある。これにより多数のセンサー機器が同時稼働することに繋がり、職員の業務負荷増加の一因となっている。
そこで、センサー機器の必要性をより適切に評価し使用することで、職員の業務負荷の軽減を図る取り組みを実施したので、ここに報告する。
【目的】
1) センサーカンファレンス時の評価の手順を標準化する
2) センサー機器の適切な使用により、職員の業務負荷軽減を図る
【研究方法】
研究期間:R5年12月~R6年6月
1) 事前アンケートを実施し現状の確認と対策の検討
2) 策定したフローチャートを基に随時センサーカンファレンスを実施
3) 事後アンケートを実施し評価・考察
【倫理的配慮】
1) 本研究において使用したアンケートや改善策実施の過程には、個人が特定される情報は含まない。また得られた情報は本研究以外では使用しない。
2) 本研究への参加同意はアンケートの提出をもって得られるものと定義した。
3) 本研究は当施設のみを対象としたものであり、利益相反は存在しない。
【結果】
当施設介護・看護職員計38名に対して行った事前アンケートでは、センサー機器使用や種類が適切であるか、使用を継続すべきかどうか等を判断する際に苦慮したとの回答が8割以上を占めた。また8割近くの職員から、不必要なセンサー機器の使用が継続されていたと感じるとの回答があった。実際にADLが低下して自力での起き上がりが困難になっていた利用者へのセンサー機器使用が半年以上継続していた事例が1件あった。
以上を踏まえ、東邦看護学会の「センサー機器の選択基準のフローチャート導入に向けたプロセス評価」を参考に、「直近一定期間での事故歴」「ナースコールの認知」「床上動作の可否」等を指標とするフローチャートを作成し、転倒アセスメントスコアと併用する形でセンサーカンファレンス実施時に使用した。期間中(R6年3~6月)に実施したセンサーカンファレンス13件において、3件のケースが解除に至った。
フローチャート導入後のアンケートでは、9割近くの職員からカンファレンス時の評価が明確になったとの回答を得た。また不必要なセンサー機器の使用が減ったと感じるとの回答が6割を超えた。
【考察】
事故発生リスクの高い利用者が多く、フローチャート導入後のセンサーカンファレンスにおいてもセンサー機器使用継続と評価するケースが多数となった。しかしながら、評価基準を明確化したことにより3件のケースで使用解除することができた。そのうち2名は解除後事故の発生なく経過したが、1年以上の長期使用となっていたもう1名においては解除後に転落事故が1件発生した。センサー機器を解除したことで職員の訪室回数が減り夜間の睡眠や精神状態の安定が図れていた反面、使用することで未然に防げた可能性も考えられ、より多様なアセスメントの必要性を再確認したケースとなった。
事後アンケートでは肯定的意見が過半数を占めており、フローチャート導入は一定の評価を得たと考えられる。また、センサーカンファレンス時にフロアリーダーや事故防止対策委員に委ねることなく評価できたとの回答が約6割を占め、実際のカンファレンス結果から後日判断が変更になるケースも発生しなかった。このことからも、フローチャートという形で指標や手順を可視化したことで、「誰でも」「同じ評価基準で」カンファレンスを行えるようになり、業務負荷の軽減に繋がったと考える。
反面、カンファレンス時に自身の判断との乖離を感じたとの回答が約3割、不必要なセンサー機器の使用が減っていないと感じるとの回答も約4割あり、職員間での事故発生への不安感や判断への迷いが払拭できていない状況がうかがえる。実際のセンサー機器の長期使用(1年以上)の利用者数は5名(フローチャート導入前)から3名(同導入後)に減少しているが、今後も継続してカンファレンスを実施し必要性を見直していく必要がある。
【まとめ】
今回の取り組みを通じて、手順を可視化することでセンサー機器の適切な解除への働きかけとしての効果が期待でき、職員の業務負荷の軽減にも繋げることができることが確認できた。
今後は、個別性に応じたセンサー機器の使用/解除を行う指標として、使用統計に基づいてフローチャートの見直し・改善を継続していく必要がある。また、利用者の心理的負担の軽減について、効果の検証が必要である。