講演情報

[14-O-A003-07]個別性のあるケアプラン作成への取り組み

*宇野 晃弘1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設あいかわ)
PDFダウンロードPDFダウンロード
利用者・家族の意向を踏まえた、具体的で且つ個別性のあるケアプラン作成を目的に取り組みを行ったため報告する。1)ケアプランの表現方法の見直し、2)事例集の見直し、3)好きなことや趣味等の聞き取り を行い、併せてサービス内容の実践が行えているか確認をした。その結果、ほぼ全ての利用者のケアプランが具体的で且つ個別性のあるケアプランとなった。一方で、医療依存度の高い利用者ケアプラン作成に課題が残る。
【目的】
令和4年度介護支援専門員更新研修に参加した職員より、
1)「長期目標・短期目標に『日常生活動作の維持・向上』、サービス内容に『自分で出来ることを行ってもらいます』と記載があるが、これでは、利用者が具体的に何に取り組んだら良いか分からないので、具体的に記載してほしい」
2)「目標やサービス内容に個別性が反映されているか確認して欲しい」
との指導を受けたと報告があった。
 そこで、当施設の全利用者60名のケアプランを調査したところ、「日常生活動作の維持・向上」及び「自分で出来ることを行ってもらいます」という記載が、全体の約7割にあたる43名のケアプランで記載されていた。このことを受け、『利用者・家族の意向を踏まえた、具体的で且つ個別性のあるケアプランを目指そう』と取り組みを行い、成果が得られたので報告する。
【方法】
1)研修で指導を受けた内容について、「日常生活動作の維持・向上」は、「歩行能力が向上できる」のように、利用者個々の日常生活動作の能力に合わせた具体的な目標で記載するよう変更した。また、「自分で出来ることを行ってもらいます」は、「可能な範囲で自己にて洗身を行って頂きます」のように、継続して出来てほしいことや自分で出来るようになるため支援する内容を具体的に記載するよう変更した。
2)新しく事例集を購入し、これを参考に、1)の内容や必要なニーズを新たに加えた上で、『施設事例集』の見直しを実施した。
3)個別性のあるケアプランを作成する為、受け持ち担当職員にて、好きなことや趣味、出来るようになりたいこと等を聞き取りし、ケアプランに反映した。なお、聞き取りが困難な利用者は、家族への聞きとりや、インテークの段階で相談員が調査した書類を活用した。
4)多職種が連携して利用者を支えることが重要なため、リハビリ職員及び管理栄養士に、それぞれの立場から意見を求めた。
5)上記を行った上で、サービス内容に記載されている内容が実践できているか確認を行った。
(1)趣味等の実践
 A様は塗り絵やカラオケ、B様は数独が趣味であることが上記の聞き取りで分かった。それを受けて、A様は「塗り絵やカラオケを行える時間を提供します」、B様は「本人が好きな数独等に取り組めるよう配慮します」をサービス内容とした。その後、受け持ち担当者を中心に余暇時間に趣味が行えるよう取り組みを行った結果、「趣味が行えるよう配慮してくれて嬉しい」との言葉が聞かれた。
(2)軽作業や役割の実施
 C様・D様からは「何かお手伝いがしたい」という意見が聞かれた。そこで、「家にいた頃どんな家事をしていましたか?」と尋ねたり、家族からの情報を参考にした結果、C様は、タオルたたみや口腔ケア時に使用する桶をタオルで拭くお手伝いを、D様は、食事の際使用するエプロンを干すことをサービス内容とした。それぞれ真剣に役割を行なっており、「誰かの為に手伝えて嬉しい」という声が聞かれた。
(3)在宅復帰に向けての個別ケアの実践
 E様は、在宅復帰に向けて、「インシュリンが自己にて注射できるようになりたい」との希望があった。その為、「血糖測定と指示のインシュリンを自己にて行えるよう援助します」をサービス内容とした。在宅復帰までの間、看護師見守りの元、自己にてインシュリン注射が出来るように支援を行った。在宅復帰後は、併設のディケア職員より、昼食時自己にてインシュリン注射を行っているとの報告があった。
(4)体調に合わせた個別ケアの実践
 介護支援専門員の更新研修において、「体調の変化や病気に伴い、配慮及び注意すべきことも個別ケアには重要」との指導があった為、併せて取り組むこととした。
 F様は、胃を摘出していることや、血圧が低い時があり、食事やリハビリテーション時に個別的な配慮や注意が必要であった。その為、「血圧が低い場合や体調が安定しない時は、居室での食事摂取やストレッチャー浴での対応を行います」「リハビリテーション実施前に必ず血圧測定を行い、看護師に実施の有無を確認します」をサービス内容とした。配慮内容をサービス内容として具体的に記載することで、職員全体で情報共有を行うことが出来た。
【結果】
 上記の実践後、当施設の全利用者60名のケアプランについて再度調査した。
 「自分で出来ることを行ってもらいます」は、全利用者において、継続して出来てほしいことや自分で出来るようになる為支援する内容が具体的に記載されていた。「日常生活動作の維持・向上」は、2名の利用者を除き、利用者個々の日常生活動作の能力に合わせた具体的な目標で記載されていた。記載できていなかった2名の利用者は、医療依存度が高く、日常生活動作全般において全介助の状態であり、目標の設定が難しく変更することが出来なかった。
【考察】
 現在も、受け持ち担当職員にて、好きなことや趣味、やりたいこと等の聞き取りを行い、可能な限り個別性のあるケアプランの作成が実施出来ている。
 しかし、医療依存度が高い利用者や日常生活動作が全介助の利用者、重度認知症の方が増加しており、個別性を反映させたケアプランの作成が難しくなっている。今後、多職種に意見を求めることや、医療依存度の高い利用者のケアプラン作成方法について、ケアマネージャーを中心に指導を行う必要があると考える。また、研修の際に講師の方より、「施設の職員も地域ケア会議等に参加してほしい」との意見があり、施設のケアプランについて、今後、地域を巻き込んで検討していくことも必要になってくると考えられる。