講演情報
[14-O-A004-02]通所リハビリテーションで働く職員に求められる役割介護士の意識改革を目指して
*海老原 ゆかり1、藤本 恭介1 (1. 兵庫県 介護老人保健施設ローランド)
昨今の介護報酬改定によりリハビリテーションマネジメントという言葉が浸透し、通所リハビリテーションで働く介護士の働き方や考え方が少しずつ変化してきている。当施設でも運営や取り組みが変化していく中で、介護士としてどのようにその変化に向き合っていったのか、今後の展望と課題と共に考察する。
【はじめに】
昨今の介護報酬改定によりリハビリテーションマネジメントという言葉が浸透し、通所リハビリテーションで働く介護士の働き方や考え方が少しずつ変化してきている。当施設でも運営や取り組みが変化していく中で、介護士としてどのようにその変化に向き合っていったのか、今後の展望と課題と共に考察する。
【目的】
以前の介護士の関わりとしては、漠然と介護業務にあたっていた場面が多く、利用者の活動・能力を十分に引き出せていなかった。また、新型コロナウイルス蔓延により外部からのボランティアが呼べず、職員不足もあり、利用者の集団活動が制限された。そのため、個別での関わりを増やし、活動量を向上させていく必要があった。利用者への活動量を増やすと同時に、職員へのリハビリテーションマネジメントの意識を強化するよう改革を図った。
【方法】
当施設では介護士が関わる全ての場面がリハビリテーションだと方針を掲げ、全職員がその意識を持ちケアにあたった。リハビリ職と協働して利用者のできることを把握し、できる限り利用者自身が行い、できないことを介助した。
今まで行っていたレクリエーションや集団体操に加えて、より個別性を意識した活動機会を作るため、それぞれにあった運動負荷量を設定し、1~3の運動を利用者ごとに実行した。
1.椅子座位にて行う膝関節伸展保持運動
各利用者に設定した負荷量で左右交互に10回10秒間保持 最大で10回3セット
2.歩行練習
利用者に合わせた歩行形態で40m 最大で3セット
3.スペースワンダーを用いたバランス練習
スペースワンダーを装着しスクワット10回、ランジ運動 左右10回、タンデム立位 左右10秒3セット
当施設ではこの3つの運動を総称してグリーン体操と呼び、介護士が実施することとした。
【結果】
開始当初は業務効率の問題や利用者からの不満の声もあったが、職員同士で意識を継続させるための声掛けを行い、利用者にもできることは自身で行ってもらうように促し続けた。その結果、介護士自身が動作を観察するようになり、利用者の能力を把握できたことで過介助が減った。なぜできないのかを考えようとする介護士が増え、疑問をリハビリ職へ相談する場面が増えた。職員の意識調査アンケートを実施したところ、取り組み前後で介護士がADLを把握しようとする意識が向上した。さらに、介護士もリハビリテーションに関わる職種だと意識がより強くなったという結果が得られた。
これらの介護士の変化から、今まで非協力的だった利用者が自らできる範囲で動作を行うようになった。さらに、周りの利用者も自分もしなければという気持ちを持つようになった。
【考察】
レクリエーションや集団体操に加えて運動機会の増加、できることは本人に行ってもらうという方向転換は、当初、介護士・利用者ともに戸惑いがあり、利用者からの不満の声が多く聞かれた。しかし、介護士自身がリハビリテーションマネジメントの考え方の下に動くことで、できる能力を把握し、現場で必要最小限の介護に留め、利用者の潜在能力を引き出すような関わりが少しずつ増えるようになった。さらに、介護士も動作を観察するという視点が増えて気軽に相談できるようになった。
鈴木らは「他職種間の関係性は常に上下関係が決まっているものではなく、場面によって専門職種の意見が尊重でき、相談することができ、他職種間の横並びの関係が構築されていく。それこそが他職種と良好な連携と協働を図り保持していくことができる要因であるといえる」1)と述べている。リハビリ職が利用者を評価した結果を介護士に伝達し実行するという関係から、介護士が自身で評価しようとすることで横並びの関係が出来上がったと考えられる。さらに、自然とコミュニケーションの機会が増えることでチーム力が向上し、小さな事でも相談・情報共有が日常的になった。利用者の能力や目標がチームの中で共有されたことで、利用者自身の活動する場面が増え、目標を意識して通所リハビリテーションを利用する方が増えたと考えた。
【まとめ】
介護士の意識改革を行ったことで、観察力が向上し、リハビリテーションマネジメントを通して介護士も利用者の状況に対してより関心を持つようになった。行っているサービスに対しての相談や情報交換の機会が増え、利用者の全体像をより把握できるようになり介護士自身がやりがいを感じるようになった。
今後の課題として、取り組み自体は継続できているが、個々の意識やスキルに差がある為、施設全体としてスキルアップすることが必要である。また、これらの取り組みによって自身で動ける方の活動量は増えているが、一方で、体力の無い方や介助量が多い方等、十分に参加できていない利用者もいる現状がある。それらの利用者も参加できるような取り組みを今後も検討していく必要がある。
【参考文献】
1) 鈴木 亨、伊藤 かづ子(2017):介護老人保健施設における多職種連携と協働
日本クリニカルパス学会誌Vol.19 No.2
昨今の介護報酬改定によりリハビリテーションマネジメントという言葉が浸透し、通所リハビリテーションで働く介護士の働き方や考え方が少しずつ変化してきている。当施設でも運営や取り組みが変化していく中で、介護士としてどのようにその変化に向き合っていったのか、今後の展望と課題と共に考察する。
【目的】
以前の介護士の関わりとしては、漠然と介護業務にあたっていた場面が多く、利用者の活動・能力を十分に引き出せていなかった。また、新型コロナウイルス蔓延により外部からのボランティアが呼べず、職員不足もあり、利用者の集団活動が制限された。そのため、個別での関わりを増やし、活動量を向上させていく必要があった。利用者への活動量を増やすと同時に、職員へのリハビリテーションマネジメントの意識を強化するよう改革を図った。
【方法】
当施設では介護士が関わる全ての場面がリハビリテーションだと方針を掲げ、全職員がその意識を持ちケアにあたった。リハビリ職と協働して利用者のできることを把握し、できる限り利用者自身が行い、できないことを介助した。
今まで行っていたレクリエーションや集団体操に加えて、より個別性を意識した活動機会を作るため、それぞれにあった運動負荷量を設定し、1~3の運動を利用者ごとに実行した。
1.椅子座位にて行う膝関節伸展保持運動
各利用者に設定した負荷量で左右交互に10回10秒間保持 最大で10回3セット
2.歩行練習
利用者に合わせた歩行形態で40m 最大で3セット
3.スペースワンダーを用いたバランス練習
スペースワンダーを装着しスクワット10回、ランジ運動 左右10回、タンデム立位 左右10秒3セット
当施設ではこの3つの運動を総称してグリーン体操と呼び、介護士が実施することとした。
【結果】
開始当初は業務効率の問題や利用者からの不満の声もあったが、職員同士で意識を継続させるための声掛けを行い、利用者にもできることは自身で行ってもらうように促し続けた。その結果、介護士自身が動作を観察するようになり、利用者の能力を把握できたことで過介助が減った。なぜできないのかを考えようとする介護士が増え、疑問をリハビリ職へ相談する場面が増えた。職員の意識調査アンケートを実施したところ、取り組み前後で介護士がADLを把握しようとする意識が向上した。さらに、介護士もリハビリテーションに関わる職種だと意識がより強くなったという結果が得られた。
これらの介護士の変化から、今まで非協力的だった利用者が自らできる範囲で動作を行うようになった。さらに、周りの利用者も自分もしなければという気持ちを持つようになった。
【考察】
レクリエーションや集団体操に加えて運動機会の増加、できることは本人に行ってもらうという方向転換は、当初、介護士・利用者ともに戸惑いがあり、利用者からの不満の声が多く聞かれた。しかし、介護士自身がリハビリテーションマネジメントの考え方の下に動くことで、できる能力を把握し、現場で必要最小限の介護に留め、利用者の潜在能力を引き出すような関わりが少しずつ増えるようになった。さらに、介護士も動作を観察するという視点が増えて気軽に相談できるようになった。
鈴木らは「他職種間の関係性は常に上下関係が決まっているものではなく、場面によって専門職種の意見が尊重でき、相談することができ、他職種間の横並びの関係が構築されていく。それこそが他職種と良好な連携と協働を図り保持していくことができる要因であるといえる」1)と述べている。リハビリ職が利用者を評価した結果を介護士に伝達し実行するという関係から、介護士が自身で評価しようとすることで横並びの関係が出来上がったと考えられる。さらに、自然とコミュニケーションの機会が増えることでチーム力が向上し、小さな事でも相談・情報共有が日常的になった。利用者の能力や目標がチームの中で共有されたことで、利用者自身の活動する場面が増え、目標を意識して通所リハビリテーションを利用する方が増えたと考えた。
【まとめ】
介護士の意識改革を行ったことで、観察力が向上し、リハビリテーションマネジメントを通して介護士も利用者の状況に対してより関心を持つようになった。行っているサービスに対しての相談や情報交換の機会が増え、利用者の全体像をより把握できるようになり介護士自身がやりがいを感じるようになった。
今後の課題として、取り組み自体は継続できているが、個々の意識やスキルに差がある為、施設全体としてスキルアップすることが必要である。また、これらの取り組みによって自身で動ける方の活動量は増えているが、一方で、体力の無い方や介助量が多い方等、十分に参加できていない利用者もいる現状がある。それらの利用者も参加できるような取り組みを今後も検討していく必要がある。
【参考文献】
1) 鈴木 亨、伊藤 かづ子(2017):介護老人保健施設における多職種連携と協働
日本クリニカルパス学会誌Vol.19 No.2